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暁の星とともに  作者: karon
リンツァー編
36/210

家族会議

昨日更新しなかったにもかかわらずずいぶんたくさんの方に来ていただき有難うございます。初日から読んでくださった皆様に感謝。新しく来てくださった方にも感謝です。

 再び、馬車に詰め込まれ、旅の日々が始まる。

 ミリエルが手近に置く荷物は、アマンダが用意した旅行鞄一つだが、ミリエル・アレクト・リンツァーとして持っていく荷物は、ミリエルつきの女官たちが、総動員してまとめていた。

 いつの間に作ったんだと呆れるほど大量にある、ドレス類。うちの年収何年分だと問いただしたくなる宝飾品。それに付随する靴やら帽子やらその他諸々それだけで結構な広さの部屋が埋まってしまうほどだ。

 そして、ベアトリーチェセレクトの教養のための書籍類。

 そして、身の回りに必要なものとして、化粧道具に化粧品。入浴に必要な物、そしてシーツまでわざわざ長持二つ分用意されている。

 ミリエルはもはや見たくもないと、一切を無視していた。

 これから内戦真っ盛りの国に行くというのに、絹のドレスがなんの役に立つと言うのか、そんなものを積む余裕があるのなら、食料や、医薬品を余分に積むべきだろう。

 そんなミリエルの常識は、しきたりと言う言葉に叩き落された。

 仮にも王族の女性が他国に向かうためには、それくらいのお支度がどうしても必要だと言い張ったのだ。

 そういうわけで、パタパタと忙しそうに駆けずり回る女官たちを見守りつつ頭痛をこらえながらお茶とお菓子をいただくのが、最近のミリエルの日課だ。

 ただ、これで、他国に行ってしまうからと言う温情で、ダニーロとアマンダとの面会が許されたのが救いだった。

 ダニーロは、不名誉除隊処分は、元々お前の罪ではないのだからと、いざと言うときは、いつでもサフラン商工会に頼ることができる、黒獅子アルマン直筆の証書を手渡してくれた。

 アマンダは、すっかりお姫様な格好をしているミリエルを抱きしめて、何度もごめんね、ごめんねと繰り返していた。

 二人がいる間、パーシヴァルとパーシモン親子は近寄ってこない。アマンダとパーシヴァルは親子なのだし、それなりに積もる話もあるのではと問うと、それはパーシモンの館でさんざんしたからいいと、そう言って、もう少しアマンダに甘えておけと促された。

 パーシモンは、近寄ってこようとするとアマンダに睨まれて後ずさってしまう。

 勝手に国王の養女にされたり、縁談をまとめられたり、それを食い止められなかったのがよっぽど腹に据えかねているようだ。

 しかしミリエルが見てもパーシモンの弱腰では、食い止められたはずがないと思う。

「そういえば兄さん、兄さんもサヴォワに行くそうだけど、準備はいいの?」

 その言葉にアマンダが目を剥いた。

「パーシヴァル、本気かい、あんたはミリエルと違うんだよ、いざという時山ん中に逃げ込んで1月もつような子じゃないんだ」

 ああ、やっぱり、兄さんのほうがか弱いと家族は認識している。ミリエルは心中で涙した。

「アマンダ、パーシヴァルは意外と言い出したら聞かない子なんだ」

「何いってんだい、安全なグランデによこすのもさんざん渋ったあんたが危険なサヴォワ行を何で止めなかったんだ」

「だって、いざとなったらミリエルが守ってくれるだろう」

 パーシモンの言葉にそのままミリエルは轟沈した。

 どこの世界に、いざという時兄を守れと妹に言う親がいるんだろう。

「まあ、確かにそれはそうだけど」

 納得しないでお母さん。そんなミリエルの心の叫びを無視して、両親は話を煮詰める。

「まあ、パーシヴァルも、いざというときはミリエルの暴走を身体を張って食い止める覚悟があるんだろうし」

 おじいちゃん、サヴォワよりあたしのほうが危険だと。

 家族から散々な言いようにミリエルは、床にしゃがみこんで落ち込んだ。

「ミリエル、その絨毯高いんだからむしっちゃだめだよ」

 パーシヴァルの的外れな忠告に、ちょっぴり殺意を覚えた。

「兄さん、レオナルドさんから、兄さんがサヴォワに入るのは無茶だって言われたんだけど」

 嫌味のつもりでそう言ったが、パーシヴァルは動じなかった。

「レオナルドはね典型的な王子様なんだ、王子様の道理でしか動けない。僕は母方の薫陶を受けて、それ以外の視点から動ける。だから行くんだ、もう王子様の視点ではどうしようもない状態になっているだろうからね」

 意外に真面目な顔つきをしているパーシヴァルにミリエルは戸惑った。

「サフラン商工会幹部の孫、下手な名門貴族より、出るところによっては使える肩書きなんだよね」

 そう言ってダニーロを見る。

「もしかして、おじいちゃん、いろいろと便宜を図ってたの」

「まあ、孫のことだし、いろいろと、できることはしたよ」

 意外なつながりに、ミリエルは少々驚いた。

 そして、レオナルドの心配はどうやら杞憂に終わりそうだとなんとなく思った。



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