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暁の星とともに  作者: karon
リンツァー編
29/210

最後の真相


 薄暗い地下牢の中、ミリエルは唇を噛み締めて、蹲っていた。

 どの道、利用は止めないといっていた。だとすれば、今地下牢に入れていても、いずれ出されてお嫁入りだ。

 政略結婚なんて冗談じゃない。

 こうなれば、罪のない花婿に拳の餌食になってもらおうか。

 ミリエルがそんなことを考え始めたとき、聞きなれた声で名前を呼ばれた。

「ミリエルや」

 そこにダニーロがいた。

「おじいちゃん、どうして王宮に」

 パーシモンの話では、ダニーロもアマンダも王宮に入れないはずだ。

「お前を説得するためだよ」

 愕然としてミリエルは、ダニーロを見る。しかしダニーロはいつもと変わらぬ飄々とした顔でミリエルに笑いかけた。

「お前は、初代黒獅子の名を知っているか?」

「知らないわけないでしょ、アルカンジェルよ」

「そのアルカンジェルがお前の先祖だ」

 ミリエルは目を剥く。

「アルカンジェルは、かつて絶大な権力を握っていた。彼はいずれ王朝をのっとるのではとさえ言われていた。結局そうはならなかった。だから今わしは雑貨屋をやっているんだ」

 意外な先祖の過去にミリエルは鉄格子に向けて身を乗り出した。

「だが、王室は今でも疑っている。アルカンジェルの末裔が、何か事を起こすのではないかと、実際、わしの子供の頃祖父から聞いた話では、相当のことがあったらしい。だから苗字を変え、軍から離れて商人になり。そして疑いも大分薄れた頃、アマンダがリンツァーの王族との間に子供を作った」

 ミリエルは黙って聞いている。

「そのうえ悪いことに、その王族の母親は、サン・シモン王室の血を受けていた。それもよりによって玉座簒奪の陰謀に加担し、しかし証拠不十分で裁けず、婚姻という形で本国から追放された女だった」

 ミリエルはダニーロが何を言いたいかうすうす気が付いた。

「もう、すべてはサン・シモン王室にばれてしまった。もしサフラン商会特殊部隊に戻れば、お前は確実に殺される」

 ミリエルは何も言えなかった。今まで何も知らなかったということがよくわかったから。

「重なりすぎたって言うこと?」

「そう、アルマンがお前を手放すことに同意せざるを得ないくらい」

 沈黙が重かった。

「それで私にお嫁に行けって?」

 ミリエルは泣きそうになっていた。

「そう、リンツァーの王族出身のお妃様となればサン・シモン上層部も手出しできまい」

「おじいちゃん、サヴォワは内戦中よ、命の保証がないのはどっちも同じじゃない」

「どっちが生き残れる確率が高いかじゃな」

「あたしが、サン・シモンに戻るより、サヴォワに行ったほうが生き延びられそうなんだ」

 ダニーロは重々しく頷いた。


 パーシモンとパーシヴァル。そしてアマンダと国王が一つ部屋に顔を付き合わせていた。

「アマンダ、どうしてミリエルにあんな凶器を渡したりしたんだ」

「あの時、あたしがどんな思いで生きていたか、わかってないわけ」

 針の視線でにらまれて、パーシモンは思わず壁際まで逃げる。

「僕も、あの子は手近な場所に凶器がないと生きていけない子だなって思ってたから」

 凶器を差し入れた親子はまったく反省の色がない。

「パーシモン、お前」

 頭痛をこらえるように国王はこめかみを押さえた。その言外に、お前はどういう趣味をしているんだとか、せっかく母親から逃れようとしたのに、同じような女を選んでどうするとか飲み込んだ言葉は売るほどあった。

「多分お義父さんが何とか説得してくれるでしょう」

「あれで説得されないはずないよ、事情を聞いたときは僕も顎が外れるかと思った」

 パーシヴァルも同意する。

「いずれそういう風に持ち込む気だったんだ。おじいちゃんは」

 確かにどっかの王族のお妃になってしまえば、サン・シモンは手が出せない。しかし別の理由で命を狙われる可能性も高い。

「だから、母上、レオナルドなら、そういうのきちんと面倒見てくれますから」

 内乱状態さえ落ち着けば、文句なしの嫁入り先だとパーシヴァルは断言する。

「これから知恵を絞って、内乱を落ち着かせて見せます」

 パーシヴァルはそう断言した。


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