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暁の星とともに  作者: karon
リンツァー編
25/210

真相の一部。

 もうすぐ王子の登場でしょうか。

 

 ミリエルは、そのまま離宮で教師達の教育を受けることになった。

 それはいろいろと多岐にわたった。礼法は真っ先に叩き込まれ、次いでダンスや音楽。これは元々ミリエルがリュートや竪琴を弾けたので途中で免除になった。

 淑女のたしなみとして刺繍や絵画。

 歴史や政治、法律など、王族の娘が諳んじていなければならないことすべて。

 そして息抜きになるようにと、パーシヴァルは少女が好みそうなものをもって訪ねてくる。パーシヴァルはそれ以外にアマンダの手紙や手作りのお菓子も持ってきてくれる。

 この兄の気遣いには感謝していた。

 

その日、新しい教科書がミリエルの前におかれた。

「先生、これはサヴォワの歴史書じゃないですか」

 本のタイトルを見て、ミリエルはそう問いただす。

 本当なら、今日は大陸史のはずだ。

「左様でございます。陛下におかれましてはいずれ嫁ぐ国でありますので、カリキュラムにはさむようにと」

 言われた言葉が、脳に染み渡るのに、しばらく時間がかかった。

 誰が嫁ぐって?

 それから高速回転でサヴォワの情報を脳みそから検索する。

 サフラン商工会幹部を祖父に持つミリエルは、近隣諸国の経済状態なら空で思い出すことができるのだ。

 確か、サヴォワ王国は、内乱ど真ん中。そのためサヴォワ特産品は天井知らずの高騰を続けているはず。

 連想はすぐに動いた。

 内乱で荒れ狂った国にか弱いお姫様を送り込むわけには行かないと判断したわけだ、それで私、今までほったらかしておいたけど、一応王族だっけという私を選んだと。

 手に持ったペンが細かく砕けていく。

「あたし、切れていいよね」

 ミリエルは高らかに宣言した。

 もちろんミリエルだってわかっている。か弱いお姫様に軍事演習を叩き込むよりもすでに傭兵として訓練を受けたミリエルにお姫様教育をしたほうが効率がいいということくらい。

 しかし、感情が納得するかどうかの問題だった。

 今まで受けてきた仕打ちが走馬灯のようにミリエルの脳裏をよぎる。

 わけもわからず護送車に詰め込まれたあの日、そして、いきなりお姫様だからと、窮屈なお姫様教育に明け暮れている今日までの日々。

「うん、切れて悪いはずないわ」

 ミリエルはそのまま椅子から立ち上がると勉強していた書斎から出て行く。

「どこに行かれるのですかミリエル様」

 突然立ち上がったミリエルを教師が止めようとする。しかしミリエルはそれをするりとかわした。

「ええ、ちょっと陛下のもとで詳しいお話を聞きに」

 ミリエルはにっこりと笑って続く言葉は飲み込んだ。

 事の次第によっては頭蓋骨割るかもしれませんけどと。



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