とらわれて、
一応座る場所にはたぶん藁を詰めた麻袋が置いてあり、ごわつくが冷たい石の床に直接座るよりはだいぶましだった。
手枷を嵌められていたが、その手枷は自分の手で支えていなければあっさりと外れるものだった。
外れないように気をつけろと言われた。
パーシヴァルは壁のほうを向いて座っている。
壁のほうを向けば手枷を外してもばれないからだ。
レオナルドも同じようにしている。
「体裁だけと言ったが、誰に対しての体裁だろうか」
レオナルドがそう聞く。
あの祖父の考えることなどわかるものかと思う。
しかしここにパーシヴァルが軟禁されているのをあの母親がきけば激怒するだろうか、それとも受け流すだろうか。
後者の気がしてならない。
そう思いつつ、パーシヴァルは周囲をうかがう。
先ほどまでは大変騒がしかった。
その上、何となく祖父と親しく話し合ったため共犯扱いされてつるし上げられそうになったのだ。
レオナルドがかばってくれなかったら確実につるし上げられていた。
「ここはどこか、わかるか」
「うん、たまにしか来なかったからね、こんな場所があるって知らなかったよ」
そう言って周囲をうかがう。
どこかごつごつとした壁だ。
床も一枚板の石造りのように思える。
まるで岩をくりぬいたような場所で、パーシヴァルは軽く首をかしげる。
明らかにサン・シモンの建築様式に合っていない。
「体裁をどうしてつけなければならないのか、それが問題なんだ」
誰かに脅されているにしても、脅された瞬間に相手を抹殺しかねないのがあの祖父だ。
いかにも好々爺の顔に騙されてはいけない。サフラン商会の参報の名はだてではないのだ。
「お爺ちゃん、何してくれてんの」
ふいに聞きなれた声がした。
か細い繊細な声でぞんざいにしゃべるあの声の持ち主は。
「ミリエル」
振り返れば扉ののぞき窓から誰かがのぞいているのがわかる。イヤさっきの声からすればのぞいているのが誰かなど考えるまでもない。
「ミリエル」
レオナルドが驚愕もあらわに呟く。
「まさか、君も拉致されたのか?」
そう思うのも無理はないが、ミリエルは笑って否定する。
「ここまで来る道順を知ってるからよ」
そう言って気遣わしげに聞いた。
「ちゃんと食べてる?」
「そんなに悪い食事でもなかったよ」
肉と野菜の煮込みとパン。腹が膨れれば何でもいい。
「ここは一体どこなんだ?」
ミリエルはしばらく口を開かなかった。
「お兄ちゃんだけに話すわ、こっちまで来て」
騒ぎを聞きつけたのか、ほかの旅愁も何事かと扉を見ている。
パーシヴァルが扉の前まで行く。手枷はそのまま手に持っている。
「サン・シモンの地下通路の中の一室よ」
聞かされた情報にパーシヴァルはしばらく口を閉じられなかった。
レオナルドが、そんな友人の姿を思いっきり胡乱な眼で見ていた。
とらわれの王様がお妃に救助されるって、本来逆ですね。