特殊部隊入団 2
彼は、そのままサフラン商会特殊部隊に同行した。
どの道新人研修の下見だったし時間に余裕もあった。
猪は、そのまま男達が縄でくくって運ぶことになった。
しばらく行くと、拓けた場所に出てそこには小さな小屋と、男女取り混ぜた二十人ほどの人間が待っていた。
小屋の中は最低限の生活設備が整っているように見えた。
猪は、女達が裏の、水場に引きずっていく。
「そういえば、おめでとう、お嬢ちゃん」
彼はそう呼んでみた。
未熟な少年をからかった言葉だが、子供は無表情にそれを受け流した。
今まで何人もの若手の新任兵士にこれをやったが、これを受け流したものは誰もいない。それをこんな子供が少々の不機嫌になる程度とは。
思わず彼は息を呑んだ。
水場に向かった女達とは別の女が子供の手を引く。
「いつまでそんな格好してるの、着替えな」
そのまま小屋の中に子供を引きずっていく。
猪は、一部はそのまま料理され、本日の祝いのメインディッシュになるらしい。炙り肉を作る芳ばしい匂いがしてきた。
そして、食欲をそそる串焼きが彼の目の前に来たとき、再び子供が彼の前に現れた。
肩までの髪は頭の両脇に大きなリボンでツインテールに結ばれて、着ているものは、エメラルドグリーンのワンピース。
綺麗に泥を落とした顔は、以外に繊細で、愛くるしかった。
それはお嬢ちゃんといわれる生き物だった。
先ほどの呼びかけに無反応だったのも当然だ。お嬢ちゃんをお嬢ちゃんと呼んでリアクションが得られるわけがない。
ちょっと不満げだったのはお嬢ちゃんではなくお嬢さんと呼んでほしかったからだろう。
「それでは、本日、特殊部隊入団規定を史上最年少で終了したミリエルの歓迎式を行う」
どうやらお嬢ちゃんはミリエルというらしい。
平民としては、おそらく最高に着飾っているらしい、鮮やかな染物のワンピースは木綿でもそれなりに値が張る。
おそらくミリエルが持っている中でもおとっときのやつだろう。
髪は柔らかな銀に近い金髪で、クリーム色にも見える。肌もミルクのように白い。
黙って立っていれば人形のように愛らしい少女なのだが、その手は、大猪に惨劇をもたらす凶器だ。