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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン 未来編
187/210

影の………王太子

 庭園に出ると先ほどのシファ伯爵夫人が背の高い黒髪の男性と寄り添って歩いていた。おそらくあれがシファ伯爵だろう。

 ざっと音を立てて、背後の女官達が姿勢を正すのが分かる。

 レオナルドと、どっかで見たような貴公子が歩いてきた。

「ミリエル、久しぶりだな」

 誰だっけ。とミリエルは首をかしげる。

 慌てて横に立ったレオナルドが耳元で囁く。

「リンツァーの王太子」

 いたっけ、というのがミリエルの感想だった。

 そう言えば国王に顔が似ている。リンツァーを出る時見送りの中にいたような気がしたが。

「お久しぶりです、王太子殿下」

「従兄弟ではないか、名前で呼んでくれ」

 存在すら忘れていたミリエルに彼の名前が出てくるはずもなく。無言で張り付けた笑みを浮かべている。

「ああ、どうか妹を責めないでくださいませ、クラウザー殿下」

 妙にナルシスティックにポーズを決めたのはミリエルの兄、パーシヴァルだ。

 ミリエルによく似た顔と似ても似つかない繊細なしぐさ。

 男が小指を立てるなと思う。つくづく自分と兄は性別を入れ間違っていると思う。

「そう言えばさっき話していた貴婦人、見慣れない人だったね」

「大分離れたところの方でしてよ、おそらくサン・シモンの交易網の広さを証明するために呼ばれたのでしょう」

 ミリエルの分析に二人も頷く。

「そうすると、海運業のあるサヴォワに機会があるということか」

 サン・シモンの陸運とサヴォワの海運。うまく手を組むことができれば、ミリエルはその場合役に立ちそうな顔を思い浮かべる。

 すべて商人だ。そこにかかわる貴族に関しては全く見当もつかない。なんとか実家に戻り祖父に話を聞けないだろうか。

 ミリエルがそう思案していると。耳に飛び込んできたのは聞き慣れているようで聞き慣れない言葉の奔流だった。

 ミリエルが振り返る。二人の女性が何事か話しあっていた。その言葉はこの周辺諸国の公用語ではない。このあたりの公用語を離せないらしい女性二人は周りから遠巻きにされていた。

 一人はすらりと背の高い栗色の髪をした女性で、もう一人は小柄でずいぶんと幼く見える灰色の髪の女性だ。

 物珍しげに周囲を見回している。着ている物もミリエルの着ている。パニエで膨らませたボンブスカートとは違いすとんとした襞の美しいものだ。

 ミリエルは目を閉じて二人の会話に耳を澄ませてみた。

 そして確信する。

『どっから来たんだ?』

 ミリエルが話しかけてきたので二人の女性がきょとんとした顔でミリエルを見返した。

『通訳の人と離れてしまって、言葉がわかりますか』

 背の高いほうが訪ねてきた。

 ミリエルの話した言葉は古サン・シモン語だった。そして彼女達が話した言葉はそれによく似た言葉だった。


…にはお好きな言葉を当てはめてください。パニエはスカートの裏張り、クジラを絶滅させかけたあれと思えば間違いないです。ボンブスカートはマリーアントワネットがきているやつ。基本ミリエルの着ているのはあの時代のガウンドレスみたいなもんです。

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