貴婦人の集い
貴婦人達が、それぞれ集っている。瀟洒な広間にテーブルに菓子や花など飾られて、ちょっとしたサロンになっている。
しかしお姫様歴わずかな王妃であるミリエルにはもともと知り合いなどいない。
もし、サン・シモンでミリエルを知っている貴婦人などには死んでも顔を合わせたくない。
ミリエルが騎士団人を次々と血祭りにあげていった武勇伝など、こんなところで語られたら、下手すれば国際問題ものだ。
サヴォワにいたころなら、相手が挨拶してくるのを待てばよかったが。
手持無沙汰をもてあそんでいると。
「これはこれは妃殿下」
ミリエルより数歳年長の貴婦人がミリエルに挨拶してきた。
ミリエルも一礼すると目を眇めて相手を観察する。
着ているドレス、エナメル細工の飾りがついている。
エナメル細工が盛んな国は確か。
ミリエルは商家育ちの習慣で、相手の品物を確かめる。それにその対応はあながち間違っていはいない。
こういう場所に出てくる王族は大概その国の特産品なぜいたく品を大量に持ち込むのだ。
ミリエル自身も、サヴォワの真珠養殖産業アピールのため真珠の首飾りを身につけている。
真珠はサヴォワの数少ないダメージを回避できた産業なのだ。
まあ、海の中なのでほぼ放置状態だという考え方もできるが。
エナメルは確かサヴォワのリンツァーの反対側のお隣の国、隣のボビンレースの細かいのは斜め向かいと、ミリエルはあたりをつける。
「これはサヴォワ王妃様、ご機嫌麗しく」
そう言いながら、相手の目が笑っていない。
「本当にご運のよろしいこと」
そう言えば、あっちとリンツァーどちらの姫を王妃にするかもめていたらしいと話を聞いたことがある。
「本当に運のよろしい方」
ミリエルが貴賤結婚で生まれたことを言っているのだろうか。ミリエルは張り付いた笑みを浮かべて次に何を言ってくるか待ち構えた。
「わたくし、陛下には幼少のころより親しくして、将来はと両親に言われていたのですよ」
それがぽしゃった理由もわかる。サヴォワ内乱だ。いつ死ぬかわからない相手に嫁がせるわけにもいかなかったのだろう。
ミリエルは相手の言い分を鼻で笑う。
そもそもミリエルも、サヴォワに嫁ぐことになったと言われた時、自分に死ねと言われたのかという気になった。おそらく目の前の彼女も内乱状態のサヴォワに近づこうとも思わなかった。
内乱が終わって、王妃になったミリエルに嫉妬する無様な女。ミリエルはそう判断した。
「運が良かったことは確かですわね、何度か命を狙われましたがこうして生きておりますし」
ミリエルはにっこりと笑う。
「本当にあのころは大変でしたわ、私の侍女なども私と間違われてさらわれかけるわ、王宮も荒れ放題でまともに使える部屋がなくて」
どうせこんな状態に耐えられないだろうとミリエルが嫌味を返す。
それぞれが満面の笑顔で殺伐とした空気を醸し出している時、空気を読んだのか読まなかったのかは謎だが、そんな中に割り込んでいった勇気と無謀を履き違えた人物がいた。
「これは妃殿下に姫君がた。こちらに遠来よりの客人を紹介しましょう」
確かサン・シモンの大臣だ。こちらはかつてサン・シモンにいたころの記憶でミリエルは判断する。
恰幅の言いお腹をのけぞらせて、華奢な貴婦人を紹介してきた。
ミリエルより先に、そばに控えていたマルガリータが、ひきつった声を上げた。