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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
18/210

首都グランデの作戦 10

これで本当に最後です。次回からは新章に入ります。

 華奢な身体つき。可憐で清楚な美貌。少々若すぎる感もないではないが、大変な美少女に見えた。

 ボンネットのはしからこぼれる淡い金髪。薄闇の中に引き立つ白い肌。

 その場で心は決まった。この少女を人質にしてこの場を脱出。そして唯一の戦利品であるこの少女を売り飛ばす。

 これだけの器量良しなら十分元は取れる。

 そこまで考えたところで少女が動いた。眉間に硬いものが当たる。

 指先だけの力で放たれた鉄礫と気付いたときには少女はすばやく後ろに下がる。

 そして、再び鎖の音が聞こえた。

 それは先ほどの男が持っていたのとはまた違う武器だった。

 鎖は細いが、先端に付いた鉄球は一回り以上大きい。

 横殴りに、鉄球になぎ倒されて、初めて、少女が敵だと理解した。

 子供の頭ほどある鉄球に叩きつけられたのだ。腕の骨が折れていた。

「手足の骨ですんでいるうちに降参してくれる?」

 少女が微笑む。残酷に。

「それとも頭蓋骨を割られる?」

 その笑顔はなまじ美しいからこそ一層怖ろしい。

 それでも、相手が小柄な少女だと、向かって行った仲間が今度はまともに胸を打たれる。血反吐を吐いて倒れた。

再び向かって行った相手もなすすべもなく倒されるのを見て再び逃走を図る。

 ミリエルはそれを黙って見送っていた。最後の一人が窓の向こうに消えるのを確認して別の小石大のものを壁に叩きつけた。

 パンパンパン

 乾いた破裂音が響く。火薬を丸くまとめて火打石の粉をまぶしたものだ。

 ミリエルが倒した数人は、しばらく動けそうにない。

 合図の音を聞きつけたウオーレスとマルセルが駆けつけて来た。

「そちらは制圧したの」

「もちろん」

 二人とも服に点々と細かい血痕が飛んでいる。マルセルは、両手に鈎爪の付いた手甲を嵌めていた。

 それからも点々と血の雫が垂れている。

「三人逃亡を図ったわ」

 ミリエルの言葉に、二人はくすくすと笑う。

「洗濯が大変ね」

 血痕を指差して言うと二人はまた笑う。

「大丈夫、慣れてるから」


 命からがら飛び出した三人はいつの間にか野次馬があたりをたむろし始めたのを見て狼狽した。

「どうする」

「こうなったら奴らの中に紛れよう」

 そう言って適度にバラけて、徐々に集まりつつある野次馬の中に入ろうとした。

 しかし、不意に取り囲まれて、その全員から殴打を受けた。

 地面に倒れながら仲間のほうを見ればその仲間も同様の目にあっている。

 野次馬達は手際よく縄を掛け彼らを拘束していく。

「隊長殿、拘束完了いたしました」

 職人風の、前掛け姿の青年がやってきた女に、代わった敬礼をして見せた。

 野次馬達は無秩序なようでそれでも一本と追った秩序を感じさせる動きで、拘束した男達をひとまとめにする。

「特殊部隊を振り切った割に他愛がなかったわね」

 女が呟く。

「全部しとめたらこちらに悪いと残しておいてくれたんじゃないですか」

 傍らに立つ若い男が言った。

「まあ、我々機動隊としても無駄足にならなくてよかったわ」

 アマンダはそう言って傍らの男に命じる。

「ちょっとひとっ走りして警備兵を呼んできて」


 カティン邸で血祭りに上げた男達、ならびに、特殊部隊の手を振り切って結局機動隊に拘束された男達は、そのまま警備兵に引き渡された。

 後日報奨金が出たが、情報処理から動員された機動隊ならびに特殊部隊全員で分けた結果、一人当たり小銭しか入らないことがわかった。

 それから一月後、ミリエルは、特殊部隊第一隊小隊長に任命された。

 特殊部隊入隊から新記録のスピード出世だった。


 これでサン・シモン編は終了です。

 鎮魂慰霊祭は、庶民がやるお祭りというか儀式です。

 貴族は王宮で神官の指揮のもと別の儀式をしているという設定です。

 地区番号が若い順に待ちの外側に位置しているのは、元々軍人だったけど今は商人な人が住んでいるからです。

 戦乱の時代は、軍人で周りを覆う壁が今より厚かったということで。

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