惨劇
窓から飛び出してきたのは、ミリエルよりすぐりの精鋭達。そして、ミリエルが侵入してきた路地からも、わらわらとサフラン商店街の子供達が突入してきた。
地の利はもともとサフラン商店街にあった。
最初からこの場所におびき寄せるため、ミリエルはこのあたりを歩いていたのだし。確実に追いかけさせるため。家にきた少年達にトラップで危害を加えた。
すべてはミリエルの作戦通り。
罠の口が閉じられたことを悟った少年達は呆然とあたりを見回す。
袋小路に獲物を追いつめたはずだった。
しかし実際は、餌に釣られて袋小路に追い詰められたのは自分達だ。
「では、始めようか」
ミリエルが重々しく宣言する。
それに応じて鬨の声が上がった。
サフラン商店街の子供達は、敵味方入り乱れてという陣形を取らなかった。
主力戦力は礫だったからだ。
礫打ちは、サフラン商店街の子供達が最初に覚える武器攻撃だ。
命中精度と破壊力を徹底的に鍛えられる。
おびき寄せて殲滅。その形ならその最大の武器を活用できる。
少年達はなすすべもなく。打倒されていく。
ミリエルは至近距離に来た者だけをたたきのめしながら戦況を確かめていた。
相手の士気は崩し、味方の士気は良好。このままいけばサフラン商店街の圧勝で終わるだろう。
戦意喪失した者達はその場にうずくまり、ガタガタとおびえている。
ミリエルはいきなり体当たりを食らった。
小柄なミリエルは、何の小細工もせず、たた一気に体をぶつけてくるような攻撃を食らうとひとたまりもない。
ましてやそう言う単純な攻撃が意外に避けにくいものなのだ。
それはぼろ布で数々の傷跡を抑えている少年だった。
少年の手には、割れたガラス瓶が握られていた
脇腹のあたり、ミリエルのブラウスが赤く染まる。
ミリエルは無造作に、少年のあごを打ち抜いた。
さっきはいきなりだったので痛みは感じない。しかし、自覚すれば、じくじくとうずいた。
それでもミリエルは眉一つ動かさずそこに立っていた。
例の傷エピソードでした