よってらっしゃい見てらっしゃい
その日から三日間、子供達は決して単独行動を取らず、外で遊ぶこともせずに、学校を終えるとすぐに帰宅し、決して家から出ない生活を送った。
ミリエルの言い分、相手を焦らして冷静な判断力を奪うためだ。
そして四日目、ミリエルとその手下、ネズミと呼ばれる少年は最初はこっそりと、それから狙い定めた場所で、は普通に歩き始めた。
「来るぞ」
ミリエルが呟く。
ミリエルは顔を動かさず、視線だけで周囲をうかがう。
ちらほらと薄汚れた少年少女がミリエル達の様子をうかがっている。
「例の場所までいけそう?」
ネズミは距離を測る。
自分とミリエルの俊足ならおそらくいける。そう判断して頷いて見せた。
二人は視線の方向と距離を測る。
「行くぞ」
目当ての場所まで、二人は一気にスピードを上げた。
二人は、適当に背後をうかがい、追い詰められた子供を装った。
罵声が二人の背中をたたく。
久しぶりの獲物、そう感じているのだろう。
「効きすぎたんじゃないですか?」
ミリエルの砂利ガラスの破片コンボの罠をネズミは指摘した。
あそこまで過激な罠を作るのはミリエルくらいのものだ。
すでにこっそり後をつけるという状況は一変し、十数名の少年少女が二人の後を怒涛のごとく追っている。
ミリエルの視界の端にぼろ布を顔に巻きつけた少年が映る。それに血がにじんでいた。
こいつが被害者かな。
そんなことを思いながら、目当ての路地に走りこむ。
その背後を一直線に少年少女たちが追いかけて突っ込んでいく。
路地を進んでいくと開けた場所に出る。
周りは建物の壁だけ。その場所からはほかに出ることはできない。来た道を戻るだけだ。
ミリエルとネズミはゆっくりと奥へと進んでいく。
袋のネズミ、そう判断した少年たちは足をゆるめ、じわじわと二人を取り囲んでいく。
ミリエルはきょろきょろと落ち着きなく周囲を見回す。ネズミはカタカタとわざとらしく肩を震わせた。
小柄な少年少女の二人組。多勢に無勢。勝敗はわかりきっていた。
ミリエルとネズミはできるだけおびえた表情を作った。
壁際に追いつめられた。だれもがそう思ったその時、ミリエルの背後の窓がいきなり開いた。