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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン過去編
173/210

作戦会議

 浮浪児たちの一団はサン・シモンの首都グランデを荒らしつくした。

 道行く買い物帰りの主婦が食材を奪われ、うっかり小銭をもった子供はその小銭を巻き上げられる。

 そのため人通りは閑散としており、焦点は商売あがったりだ。その上さらに追い打ちをかけるように、店先から品物を盗まれる。

 それがさらに商店を追いつめる。

 もはや一刻の猶予も許されない。

 ミリエルは、ほかの地区の子供達の戦果を聞き出してくるよう手下達に命じた。

 その結果は、士気に大きな差があるということだろうと結論付けられた。

 守ってくれる大人のいない子供達。頼れるものはおのれの身と定めた強さだろうと。

 そして実戦経験。毎日のように、食料を漁り、そのたびに小競り合いを続ければ当然その技術も磨かれる。

 ミリエルの配下達は、当然、商店街の店主の子供達だ。その点で士気の差は同じだろう。

 基礎的な戦闘訓練も受けているが、そうした修練は技の単調さにつながる。

「では、こちらは戦略で、補おう」

 それがミリエルの出した結論だった。

「どうなさいますか?」

 配下のネズミと呼ばれる少年が、ミリエルにお伺いを立てる。

「まずは初戦を行う。そのうえで相手の出方をうかがう」

 ミリエル配下はその言葉にただ頷いた。

 まずは戦わねばどうにもならない。

 ミリエルの言葉は正しい。無論被害は最小限に抑える。相手の情報を探るためのものだからだ。

「さて、どこから手をつけたものかしらね」

 丸で何やら家事をいいてけられた子供のような顔をしてミリエルは桜色の唇に人差し指を押し付ける。

「適当な店がおそらく襲撃されるはずです、おそらく食料品店」

 一人の少女がそう提案した。親戚の燻製肉店が襲撃され、店の備品は壊され商品は強奪されの大損害とわざわざ来て愚痴っていたのを聞いていたのだという。

 ミリエルは適当な食料品店を脳内の御近所見取り図でピックアップする。

「襲われるとしたら、まずパンのクララおばさんの店、そしてチーズの牧場の恵み、それと果物も売っている野菜の産地直接、あたりと考えていいわね」

 それに異論のあるものはいないとみてミリエルは、周囲の子供達に言った。

「まず、五六人のグループで行動すること、決して単独行動はとるな、それと最低一人は呼子を装備しておくこと」

 緊急連絡用の笛は備品として、すでに借りうけている。

「襲撃に居合わせた場合、とにかく呼子で人を集める努力をする。そのうえで、数に有利でない場合はその場で逃げろ」

 ミリエルは簡潔にそう命じた。

 ここは序盤戦だ慎重に行くことにする。

 命令がいきわたったことを確認すると、ミリエルは最初の作戦会議を終えた。

 

 翌日早速だった。ミリエル達は学校に集団で登下校が通達されていた。

 ミリエルの配下達に命じたこともあり、それは都合がよかった。ミリエルの予測を裏切って襲撃を受けていたのは、店舗ではなく、普通の家だった。

 襲撃を受けた理由は明白だった。手作りのクッキーの香ばしい香りが辺りに漂っていた。

 ミリエルは早速呼子を吹いた。



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