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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
165/210

戴冠式 当日 3


 朗々と歌い上げられる聖歌をレオナルドとミリエル以外は直立不動で聴いている。

 ミリエルは聖歌って国によって違うんだなと場違いな感想を思い浮かべていた。

 聖歌は国の神話が元になっている場合が多いので、大概国によって違う。

 聖歌の斉唱が終わると一礼して神官たちがレオナルドの前に立った。

 レオナルドが立ち、さまざまな儀式とお清めの後、マントと、王冠がかぶせられる。

 そして賓客たちの何人かが、証人として書類に署名していく。

 先日会った、リンツァーの大臣と、パーシヴァルも署名していた。

 最低三国の国家要人の署名が必要なのだと先日教えてもらったばかりだ。

 そして一度解散、レオナルドはミリエルの手をとってその場を退場する。


 控えの間で、二人は小休止を取った。

「疲れたか?」

 ミリエルは少しだけ目を潤ませて訴えた。

「おなかすいた」

 悲痛な訴えに、レオナルドは目を瞬かせる。

「事情があって最低限しか食事をしていないんです」

 マルガリータが目をそらしつつ補足した。

 ミリエルの衣装を見て大体の状況を察したのか、レオナルドも目をそらしつつ、頷く。

「これから舞踏会だし、その衣装は着替えるんだろう。なら少しだけ食べさせてやれば」

 別の衣装を交換する間のわずかな時間にジャムつきのパンとお茶というささやかな食事をミリエルは貴婦人にあるまじきスピードで片付けた。

「どれだけ絶食していたんだろう」

 物心ついたころから見慣れていた正装が、どれほど過酷なのかようやく理解できたレオナルドだった。

「そういえば、あの後何事もなかったの」

 ミリエルが、結い上げた髪を下ろしてもらいながら尋ねる

「まあ、何もな」

 レオナルドはあいまいに言葉を濁す。

「ああ、そうだ、ミリエル、武装はしているか」

「当然ですよ」

 スカートのしたから硬質な音が聞こえる。どうやらスカートの中に吊っているらしい。

 丸く膨らんだスカートは武器を仕込む余地がたっぷりとあるらしい。

 そして思う。あれだけの重量をものともしないなら、マントの一つや二つ、女官の手を借りなくとも歩けるんじゃないだろうかと。


 ミリエルはエメラルドグリーンのドレスに着替えていた。

 装身具もエメラルドに切り替えられていた。どれほどの量の宝飾品を自分は持っているのだろうとミリエルは疑問に思う。

 そして、今度確かめようと思いついた。

 状況しだいでは売り払うか、あるいは、デザインだけを切り替えて、新しく買うのを控えるか。たぶん経費削減の一環にはなる。

 そしてミリエルは、着替えたドレスの下にも凶器を用意していた。

 女官たちは渋い顔をしたが、わざわざレオナルドが武器を持っているか確認してきたのだ。おそらくこのままでは終わらないだろう。

 マルガリータもドレスの下に剣を常備している。

 こういう風にスカートを利用するようになるとは思わなかった。

 それがマルガリータの偽らざる心境だった。

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