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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
164/210

戴冠式 当日 2


 絢爛たる王宮の大広間、そこは今各国の賓客たちの交流の場になっていた。笑いさざめく声が途切れた。

 大広間の一番大きな扉が開き、白を基調とした壮麗な衣装を着たうら若き貴婦人が現れる。

 ミリエルが大広間に進み出ると自然に人の波が開きミリエルの前に道ができた。

 左右前後に女官たちを引き連れミリエルは静々と進み大広間の一番奥にある、王太子が座る玉座の下でにある椅子に座った。

 これから先、この椅子の上ですべてを見届けなければならない。

 そのため、生理現象を最小に保つためミリエルは朝から最低限の食事しかとっていない。

 おそらく夜が更けるまでその渇望が癒されることはない。

 そうした絶望的な状況でもミリエルは穏やかな笑みを浮かべていた。

 もはや張り付いた仮面と化した笑みでも周囲はだまされてくれた。

 不意に、見慣れた顔がミリエルの前を横切った。

 かつて、グランデの武術大会で大腿骨をへし折った記憶がある。

 恨みがましい目で、ミリエルを見ていた。ミリエルは、張り付いた笑みがこわばる。

 傍で見ているほど楽なことじゃないんだけどな。そんな愚痴をこぼしながら、傍らのマルガリータに飲み物を頼んだ。

「飲み物は最低限といわれなかったか?」

 ミリエルの耳元に顔を寄せて小さな声でささやく。

「持ってるだけよ、手持ち無沙汰なの、あんまりこれをひねくり回して変な誤解されても困るし」

 白い白鳥の羽毛をあしらった。扇をミリエルは手元でさす。

 かつて扇言葉の講義を受けたことがあるので。扇の持ち方で、妙に色っぽい意味にとられることがあるということは知っていた。

 これから嫁に行く娘がそんな誤解を受けるわけにはいかない。

 ミリエルの主張は一応貴族令嬢として育っていたマルガリータに通じた。

 ほんのささやかな杯がミリエルのところに来た。

「飲んだとしてもその量なら問題ない」

 ミリエルは無言で頷いた。

 この場でミリエルは単なる露ばらいだ。

 ついに真打が現れた。

 高らかに管楽器の音が鳴り響いた。

 先ほどミリエルが入ってきた扉が再び開き、レオナルドが現れた。

 衣装は、漆黒に、銀の刺繍が入りミリエルと一対に見えるものだ。

 ミリエルのすぐそばの上座にレオナルドの椅子がすえられている。

 ミリエルは杯をマルガリータに渡し、立ち上がると、ミリエルの前を通るレオナルドに深々と礼をした。

 レオナルドが引き連れてきた騎士は、ミリエルとレオナルドの周囲に並び、まずレオナルドが座り、それを確認してミリエルも座る。

 事前に教えられた儀式の手順どおりに動く。

 ミリエルは、小さくこれからの手順を呟いた。

 レオナルドの更に上座に神官が立っていた。下座から、別の神官が王冠を手に現れた。

 本来なら、ミリエルも王妃の戴冠をするはずだったが、婚礼が後なので、ミリエルは傍観するだけだ。

 厳かな管弦楽が流れ始めた。

 それにあわせ、神官たちの一同が、聖歌を歌いながら、緋色のマントを掲げて現れる。

 その後ろに聖水を掲げた神官の一同が続く。

 これからレオナルドが座る椅子が玉座になる。

 固唾を呑んで一同はレオナルドに見入った。



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