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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
150/210

目的地

 男は、コンスタンシアのことは知っていたが、ウォーレスのことはどうやらわからないようだ。

 周囲の騎士は、ウォーレスの事は聞いていなかったので怪訝そうにミリエルとマルセルを見ている。

 マルガリータが空気をごまかすように咳払いすると、その男を先頭において歩かせることにした。

 もう一人の犠牲者は、すべてを諦めきった顔で、並んで歩き出す。

 その様子に、マルガリータは、どうやらその男もミリエルを狙っていたのだと気づく。

 おそらく、それだけが状況を打破できる最後のチャンスだと思っていたのだろう。

 気の毒なことだ。

 少しずつ周囲の状況が変わっていく。洞穴のあちこち壁を掘って部屋のようにした場所もちらほらと見える。

 そして再び、壁がまっすぐになった。

「どうやら、地下貯蔵庫どうしをつなげるトンネルを掘ったようだな」

 レオナルドが壁をなでながら呟いた。

「王城ってやっぱり広すぎ、こういう空間を含めたらちょっとした町くらいの広さがあるんじゃない?」

 ミリエルは愚痴る。

 さまざまな国の政治機関を内包しているとはいえここが個人の家というのはやはり何か間違っていると、庶民感覚の色濃く残るミリエルの偽らざる心境だった。

「でも、実際想定されているより、今ここにいる人間の数は少ないんだよね」

 マルガリータが怪訝そうにミリエルに聞いた。

「こういう場所って食料庫のはずだよ、それがこんなにがらがらで、それで食料が足りないって言う話は聞かないし」

「違う、ここはいざというときの食料や備品を置いておく場所だ。ここが空だということは、ほぼ横流しされたということだ」

 レオナルドはため息をついた。

「ここは、王城の住まいするものだけでなく、周辺の街に配る分の食料も備蓄されていたんだ」

 ミリエルは慰める言葉も思いつかずそのまま黙った。

 明かりの漏れる扉が見えてきた。

「首謀者はあちらにいる」

 レオナルドは小声で断言した。

「言い切れるの?」

 レオナルドは小さく頷いた。ミリエル拉致の語情報をあえて流し、部下に逐一監視させていたのだ。案内役の男もその過程で捕らえた。確実に相手はその場所にいる。


コンスタンシアは、必死で顔を下に向け続けている。その様子に苛立ったのか、強引に顔を上げさせろと命じた。

 コンスタンシアをここまで引っ張ってきた男の一人が、コンスタンシアの紙をつかんで強引に顔を上げさせようとする。

 コンスタンシアは、頭皮の激痛にもめげず必死で顔を下げ続けた。

 そのとき扉が開いて、コンスタンシアの紙をつかんでいた手が緩んだ。

 コンスタンシアはその勢いのままに床に顔をぶつけた。

 打ち付けた額を押さえながらもコンスタンシアは顔を下げたままだった。

 だから気づかなかった、待ち焦がれた助けが来たのに。


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