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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
147/210

地下に秘められたもの

 レオナルドは、一人の男を先導させて、歩いていく。

 男は、中年に差し掛かった年頃、そして、顔は晴れ上がり、袖からのぞく腕も紫色に腫れ上がっていた。

 かなり手荒い尋問を受けたようだ。

 ミリエルとマルガリータとマルセルは周辺の護衛騎士に紛れて、歩いている。

 マルセルは居心地の悪そうに、騎士団の制服の間で顔をしかめていた。

 ミリエルは侍従の制服のままではモーニングスターを隠し持つことができないので、やむを得ず、袖に仕込んだ短剣と上着の裏にくくりつけたガラス玉だけで武装している。

 これだけ騎士がいれば武装しなくてもとマルガリータに言われたが、今までの習慣は帰られない。

 屈強な騎士たちの間で、ミリエルの小柄で華奢な姿は妙に悪目立ちしていたが男はそれに気付くだけの余裕がないようだった。

 酷く怯えてきょろきょろと辺りを見回している。

 数人の騎士が男を小突き回して先に進ませる。

 地下の小麦などを貯蔵する倉庫に向かっているようだった。

 廊下に、馬でも使わねば到底回せないような巨大な石臼が転がっている。

 こんな狭い場所に馬を連れ込めるはずもなく。どうやって回すんだろうと怪訝そうにそれを見ているミリエルにレオナルドが囁いた。

「あれは元々城の地下に走っている地下水路に取り付けてあったものだ。結構急な流れがあってそれに水車をつけて、歯車で回していた」

「それを取り外すってことは、結構大掛かりなことじゃない……ですか」

 ミリエルが小声で答えた。

「そうだな、それにその地下水は、白の主要な飲料を含めた生活用水だった、はずだ、どんな間抜けもそこに手を加えたはずがないのだが」

 レオナルドの眉がしかめられる。

 ミリエルは、調理場にあった井戸を思い出していた。おそらくその地下水脈の真上に走っていたのだろうとあたりをつける。

 そういえば、井戸は王宮のあちこちにあった。

「ということは井戸同士が繋がっているということ?ですか」

 ミリエルが慌てて言い添える言葉に少しレオナルドは苦笑した。

「だからといって、井戸同士で行き来など不可能だ、水路は完全に水没している。井戸を伝って出入りするには魚同然に泳げねばな」

 粉を挽く水車のある急流から、井戸に伝う水路には巨大な貯水池がありそこで流れが緩められると説明された。急流のまま井戸に桶を下ろせば、うっかり流れに巻き込まれて転落しかねないからそれを防ぐための処置だ。

 ふと見れば、壁の一角をなにやら男がいじっている。

 自然なひび割れに見えたその場所から壁が開いた。

「ずいぶんと凝った仕掛けだな」

 レオナルドが呟く。周辺にいた騎士が一人、男のそばに立ち、まず安全確認のため一番先に入るつもりらしい。

「ミリエルは私の傍に」

 レオナルドの小声の呼びかけにミリエルは小さく頷いた。

 先導の騎士から順番に中に入っていく。レオナルドとミリエルたちは、中間あたりの位置にいた。

 前後を騎士に守られる形で、全員はいるのかと思ったが、二人居残りをしている。

「我々が出てこない場合はマーズ将軍に伝える手はずになっている」

 その言葉にミリエルは無言で頷いた。


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