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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
140/210

レオナルドの作戦

「どうする?」

 質問は唐突だった。

 レオナルドはパーシヴァルの顔を見返す。

「コンスタンシア嬢には気の毒だが、このまま逝ってもらう、それとも何とか救い出す?」

「質問の意味がわからないが」

 首をかしげるレオナルドにかまわず、パーシヴァルは立て板に水でまくし立てた。

「もうじきリンツァーの使者がやってくる。そうすれば、ミリエルが応対せざるをえない。そうすれば、コンスタンシア嬢をさらった奴らも否応なし人違いに気付く。そうなればコンスタンシア嬢はおしまい、さっさと息の根を止めて死人に口なしだ」

 パーシヴァルはそう言って笑う。

「このままだと確実にそうなるよね」

「そうしない為に色々と調べさせているんだが」

 レオナルドはそう言って、部下からの報告書を指差す。

「そう、でもタイムリミットまでそう長くないよ」

「仕方あるまい、ぎりぎりまで粘るさ」

「ずいぶん優しいね、政治的に何の意味もない男爵令嬢相手に」

「意味ならある、彼女を見殺しにしたら、ミリエルが根に持つ」

 パーシヴァルは笑みを消した。

「ミリエルのため?」

「それと自分のためだ、あまり益のない人間だとて、早々死なせたくはないさ、何しろこの国は死人を出しすぎた」

 どこか、感情の死んでしまった、ガラスのような視線に、パーシヴァルは息を呑む。

「まあいい、それほど時間を書けるつもりはない。さっさとふるい落とすさ、パーシヴァル、お前はそこでさも沈痛そうな顔で、俯いていろ、すべてこちらでやる」

 レオナルドがそう言ったとき、配下の一人が先触れに立った。

「殿下、おいでになりました」

「通せ、それから人払いを」

 それから一分もしないうち、一人の老人がレオナルドの前に立っていた。

「殿下、お呼びとは?」

 レオナルドが重々しく答える。

「ミリエルが連れ去られた」

 息を呑む音だけが室内に響く。

「このことを知っているのは、私を除けばそこにいるパーシヴァル。そしてミリエルの二人の女官たちだけだ」

 老人の身体がかしいだ。倒れる寸前で何とか持ち直し。レオナルドに向き直る。

「レジナルド侯爵、相談できるのは貴方だけだ、どうか力を貸していただきたい」

 レオナルドの呻くような声音に、老人は、その手を握り締めた。

「殿下、この老骨に鞭打って、何とか妃殿下をお助けいたします」

「だが、ことがことだ、できる限りこのことは内密に」

 滂沱の涙を流さんばかりに、老人は何度も頷く。

 そして老人が出て行った後、また一人、今度は壮年の男性。

 そして、相手の名前だけを変えてまったく同じやり取りを繰り返した。

 ようやく六人目を終えたとき、パーシヴァルは頭痛をこらえるようにこめかみをもんだ。

「どう収拾をつけるの?」

「だから秘密裏にといったのさ、それぞれ自分の判断で動くだろう、あの連中の中にいることは確かだ。その動きを探ればいい、動くための大義名分はくれてやったしな」

「内、何人かは本当に何も知らないんだよねえ」

 パーシヴァルの頭痛はいや増したようだった。


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