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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
136/210

待機の時

 レオナルドの私室に、パーシヴァルと二人きりになると、パーシヴァルはその表情を改めた。

「何でミリエルが邪魔なのか知らないけれど、仕掛けてくるなら、そろそろ置いてきた女官たちがこちらに移ってくるその前だね」

 女官たちが戻ってくれば、ミリエルの周辺に人が常にたむろすることになり、ミリエルに危害を加えることはより難しくなる。

 パーシヴァルの指摘に、レオナルドも頷く。

「それに、今回のことは完全に、失敗だったな」

 レオナルドは嘯く。レオナルドが何を言っているか、パーシヴァルにも見当がついた。

 数は限られているのだ。ミリエルの私室に、刺客を送り込めるだけの城内で権限を持つものは。

「悲しいことに、故国を追われた俺に、様々な便宜を図ってくれたものばかりだったよ」

 ちっとも悲しそうな顔を見せずに、レオナルドは呟く。

「さすがに全員じゃないだろう。その中の一人か二人、こういうことは大勢で企むもんじゃないからねえ」

 パーシヴァルがまぜっかえす。

「にしても、何でミリエルが邪魔なんだろうね」

 ミリエルはかなり特殊な特技を持っているが、その事実は理解していないだろう。

 知っていれば相応の準備をしてくるはずだ。しかし、それを極秘に行うのは不可能に近いのも事実。

 暗殺するために、一部隊用意するのは少々大掛かりだ。

 確実を期すためにはそれが一番なのだが。それをやれば誰がやったか一発で特定できる。

「お気の毒様というべきか、まあ、そのための人事なんだろうけど」

 ミリエルに白羽の矢が立ったのは、文字通りその戦闘能力なのだが、普通そんなことで妃を選ぶとは考えない。

「やはりリンツァーの家臣がサヴォワの政治に介入すると考えているのだろう」

 ミリエルの年齢は十五歳。その出生の詳細くらいは掴んでいるはずだ。ミリエルに政治家としてのスキルはまったくない。

「ミリエルも経済問題なら、商家育ちだし、それなりに強いんだけどね」

「だとすれば私も舐められたものだ。たとえ借りを作ったとしても、唯々諾々とリンツァーの言いなりになると思われているということだからな」

 レオナルドはいらだたしげに机に拳を叩きつけた。

「物に当たるのは感心しない」

 パーシヴァルはそう言うと、小さく呟く。

「別に国のためを思って、そうしてるわけじゃないでしょう。自分のライバルを減らしたいだけだよ」

 サヴォワにリンツァーの介入を許せば、それが自分の権力基盤を揺るがすと考えている人間がいる。そしてそんな人間の身分が低いわけがなく。

「うかつにつつけないのがもどかしいな」

「結局またミリエルに仕掛けてくるのを待つしかないんだけど」

 パーシヴァルはそこで口ごもる。ミリエルが今回のことで珍しく痛手を受けていたことを思い出したからだ。

「次からは慣れるって健気に笑っていたけど」

 レオナルドは顔を覆った。

「慣れられても困るんだが」

 王妃が刺客をさくさく返り討ちにするのが日常になってはそれはそれで困る。


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