押し寄せる混乱
昨日書き上げました。でも気に食わなくて書き直しました。で遅くなりました。
コンスタンシアは、いまだ起き上がれないでいた。
あの死体は、奇麗に頚動脈を切断されていた。そのため、飛び散った血の量も半端ではなく、絨毯は血でずくずくに濡れていた。
思い出すと吐き気がこみ上げてくる。
マルガリータはそんな状況にまったく動じず後始末をして、コンスタンシアの介抱もしてくれた。
枕元に置かれた具沢山スープ。ミリエルが用意したものだ。自分がしたことのせいで、コンスタンシアが倒れたことに責任を感じたのか、こまごまとした世話を焼いてくれる。
本当は逆なのに。
コンスタンシアは、溜息をつく。
ミリエルに仕えるためにきたはずなのに、ついて早々倒れてしまった。
このまま役立たずで終わるんだろうか。
コンスタンシアは、暗い先行きに溜息をついた。
パーシヴァルとレオナルド、そして、マーズ将軍とその他サヴォワ家臣団は、その場で頭を付き合わせ、王城の王太子妃に当てられた部屋と、その周辺の見取り図と、当時駐在していた警備兵の配置図を検分していた。
「まあ、結構厳重だよねえ」
パーシヴァルが呟く。
ミリエルの使っていた部屋は、王城の奥まった場所にあり、奥へ奥へと向かう扉には必ず警備兵がついていた。
ミリエルが下級女官の格好で歩き回っていたときには、首から許可証を吊り下げていた。
許可証を確認しなければ、何人たりとも奥に進ませない。
だからこそマルガリータも、ミリエルを一人で留守番させた状態で、マーズ将軍に定期報告に向かったのだ。
「犯人の人相に合うものを通した記憶のある人間もいないんだね」
パーシヴァルが確認する。パーシヴァルも一応遺体の顔は検分済みだ、あんな見るからに怪しい人間を黙って通すわけはない。
「それにしてもタイミング的にまずいよね」
パーシヴァルが言っているのは、もうじきリンツァーから、特使がやってくることだ。
この騒ぎが特使の耳に入れば色々と五月蝿いことになるだろう。
「色々と突っ込まれるだろうねえ」
ミリエルは、リンツァーからやってきた花嫁、粗略な扱いは許さないとミリエルの待遇について色々といってくるのは見えている。
そのミリエルを暗殺しようとする勢力が王城内にあるなどと知られたら、更に何を言われるかわからない。
「早急に解決しなきゃだね」
パーシヴァルののほほんとした口調に、レオナルドは少しだけ殺意を覚えた。
「その日に入ったんじゃなければ、実は、壁の裏にでも潜伏していたのかな」
パーシヴァルがそう呟く。
「壁の裏?」
「王城なんて、よく隠し部屋とかあるよね」
レオナルドはパーシヴァルの提案を受け入れることにした。
王城には様々な君主が君臨していた。そして、一代に一回は土木工事が行われている。その際に、隠し部屋か隠し通路が作られていない確信はなかった。
「明日、しらみつぶしに調べさせる」
そしてレオナルドはあえて言わなかった。ミリエルが言った、二人の女官が同時にいないときに襲撃された、つまり、レオナルドの傍にいる内通者のことを。
今うかつに口に出せば、疑心暗鬼で内部崩壊しかねない。
マーズ将軍も頷いている。信じられる人間はかくも少ない。