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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
130/210

コンスタンシアの帰還

 コンスタンシアは馬車を乗り継いで、ようやく王城に辿り着いた。

 乗り継いでという状況は決して大仰ではない。まず別荘地から手近な街まで行くと、今までついてきた人間と入れ替わって別の人間が馬車を手配し、別の街まで行くとまた別の人間が用意した別の馬車でということを繰り返し、うんざりを通り越した道中だった。

 そして、首都までの道中は、壊滅状態の街を、周囲を警戒しながら進む、強行軍。疲れ果てて感動する余地すらなかった。

 これから、ここに暮らすことになる。

 まったく役立たずだったとはいえ、囮任務を全うし、罪の償いは終わったと宣言された。

 どうやら父は秘密裏に消され、ミリエル偽者事件は表ざたにはされなかった。

 家は兄が相続したが、兄は真相を知っている。そして、コンスタンシアがまず口を割ったために、父が処分されたと、コンスタンシア以外の家族にそう告げた。そのため、コンスタンシアの身柄は、まずレオナルドが引き取り、その上でミリエルに引き渡されることになった。

 もはや実家には帰れない身の上だ。王妃に仕えて終生独身でいる人間など珍しくもないし。王妃付きの女官はむしろ出世といえる。

 今のところ自分の運はそう悪くない。コンスタンシアはそう前向きに考えることにした。

 案内役の侍従に、ミリエルの使っている部屋へ案内してもらうとき、それに遭遇した。

 何ものっけからこんなものに出くわさなくても。

 コンスタンシアは、先ほど、自分の運が尽きていないという考えを捨てたくなった。

 そこには雑巾片手に掃除に励むミリエルが自分を見返していた。

 ミリエルを迎えに来たマルガリータは、雑巾を持ったまま茫然としているミリエルと、打ちひしがれて床にのめったコンスタンシアを見て深い溜息をついた。


 マルガリータが、自分が案内していくと、コンスタンシアについていた侍従を帰し、三人はそのままミリエルの部屋に落ち着いた。

 応接間として使っているそこは、落ち着いた色のソファと、椅子が二つ、そして小テーブルがあるだけだった。

 ソファにミリエル。残り二つの椅子にコンスタンシアとマルガリータが坐る。

 すでに、マルガリータがお茶を用意していた。

「何であんな格好してたんですか」

 コンスタンシアの当然の疑問に、ミリエルは明後日の方向を向いて答えない。

「まあ、これには事情があって」

 毒殺を警戒して、ミリエルが、レオナルドと自分、ついでにマルガリータとパーシヴァルの分の食事を用意していること。その際、ミリエルが自分で作っていることをばれないように、下働きのお仕着せを着て、調理場に言っていること、そのまま、した働き姿で、いつの間にか掃除に励みだしたことなどをマルガリータが説明した。

「わかったような、わからないような」

 コンスタンシアは、自分の運が尽きていないという確信が砕けるのを感じた。

 王妃付きの女官は出世だが、その王妃は、これなのだ。

 仮にも王妃をこれ呼ばわりするくらい、コンスタンシアは疲れていた。

 旅の疲労だけでなく、ミリエルと再会したことが、コンスタンシアの疲労を更に蓄積させていた。

 次に何をやらかすかわからない。びっくり箱にこれから仕える事になる。

 自分の幸先は、あまり明るくないような気がした。



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