再会の食卓2
レオナルドが気まずい沈黙を打ち破った。
「とりあえず食事にしよう。食後酒でも飲みながら、今後のことを考えよう」
食事のまずくなりそうな話題は、今は避けようということで、全員の意見が一致した。
食事といっても、スープとパン。それに炙り肉がついているのがささやかに贅沢といった献立だった。
それでも全員、文句はない。最近ではパーシヴァルですら粗食に慣れつつあった。
「料理人があらかた逃げてね、かろうじて残った人間で調理してもらったんだ」
ミリエルはスープを飲みながら提案してみた。
「それじゃ、私が厨房に入るのはだめ?」
ミリエルの提案にしばし全員固まる
「大丈夫よ、私、お母さんにちゃんと料理習ったし、食べたことあるよね、マルガリータ」
そう言って背後に控えているマルガリータを振り返る。
マルガリータはしばし返答に困った。うかつなことは言えない。
「前に作ってあげたでしょう」
冷や汗で背中が濡れるのを感じながらマルガリータは頷いた。
「それいいかもしれない。ミリエルが、僕とレオナルド、そしてミリエル本人の三人前作ればいいんだ」
パーシヴァルが手を打った。
「まだ、どこに敵の残党が潜んでいるかわからないんだ。それなら毒殺の心配もしなけりゃいけない。そういう時自炊するのも一つの手だよ」
レオナルドはしばらく考え込んでいたが、再びミリエルを見た。
「頼めるか?」
そしてミリエルは不思議そうにレオナルドに訊いた。
「何か、あったの?」
レオナルドは苦いものを飲むような顔をしていた。そして切り出した。
「ナダスティが死体で発見されたおそらく毒殺だろう」
その場にいた全員がそれを聞いて仰天した。
「覚悟の自殺というのではなくて?」
「最後に食べたらしい食事に毒が混ぜてあったようだ。覚悟の自殺なら、延々隠し通路を抜けた後じゃなくて、たぶん、玉座の間で、玉座に座った状態で自殺するだろう」
レオナルドはそう言った。
「自殺にそんな風に格式ばるものなの?」
ミリエルには理解できない世界だった。
ミリエルの周りには自殺した人間はいない。噂に聞いただけだ。
しかし、自殺する寸前まで格式にこだわるなんて話は聞いた事がない。
「複雑なのね、王族って、まあ私は自殺する気はないけど」
「されちゃ、困るよ」
パーシヴァルがつっこむ。
「とにかく、首謀者が死亡してしまったので、色々と調査などが滞っている。それに、おそらく奴を毒殺した者も回りに潜んでいる可能性が高い。だから、毒殺には注意しなければと思っていた」
「何で毒殺されたか、か」
ミリエルも、処刑確実な人間をわざわざ殺害する理由にうすうす見当がつきつつあった。
隠れた共犯者がいたのだ。