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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
12/210

首都グランデの作戦 4

 話が進みません。ごめんなさい。

 翌日も憂鬱な顔でミリエルは練習に行く。

 昨日やっと初心者向けのやさしい練習曲を弾けるようになったばかりだ。これで本番までに引けるようになるんだろうか。激しく不安だった。

「こんなときはやっぱりお友達と遊びたいな」

 ミリエルはしょんぼりと道を歩く。

 こんなときに限って窃盗もひったくりも出くわさない。せめて痴漢でもいい。誰か現れてほしい。

 そして、私のお友達の銀色に輝くその姿をを鮮血で染め抜いてくれれば。

 そんな切なる願いも虚しく街は平和だった。

 無表情にどす黒いオーラを撒き散らしながら、ミリエルは練習に場向かう。

 目の前に、心からお友達を叩きつけたくなる存在がいた。

 ミリエルのけして友達ではなくこれからも友達になる予定のない男が。

 雀斑だらけの顔にやぶにらみの目。

 薄い金髪を刈り上げて尖らせている。

 ミリエルの所属は第三地区そして相手の所属は第四地区隣あわせの地区で、互いに争い何度血反吐を吐かせたかわからない相手だ。

 地区ごとに子供達は定められた頭目のもと団結し、周囲の地区と戦う。

 ミリエルは史上最年少で頭目に選ばれた。そしてその史上最年少記録はいまだ破られていない。

 ミリエルの指揮する作戦は精緻で巧妙。そして大胆。ミリエルを指揮官として、第三地区は破竹の勢いで勝ち進んだ。

 第四地区の頭目であった目の前の男は年下の少女率いる。第三地区に惨敗したのがどうしても認められなかった。何度も再戦を繰り返し。そのたびにこてんぱんにされ続けた。

 そしてとうとう頭目の地位を追われてしまった。

 負け続けただけなら、そんなこともなかったが。彼は敗北の責任を、自分の部下に押し付け、処罰という名目で暴力を振るったのだとか。

 己の無能を認められない小物とミリエルは軽蔑していた。

 そしてそれはミリエルが特殊部隊入隊と、それに伴う第三地区頭目引退で終わったはずなのだが。

 今もミリエルの行くところについて歩き不愉快極まりない嫌がらせなどをしてくるのだ。

 脳みそはみ出すくらい殴りたいなぁ。

 スカートの下に仕込んだお友達を撫でてみる。

 硬い鎖の感触を確かめる。ミリエルの心が誘惑に負けそうになる。

「何してんのよ、行くよ」

 ヴァイオリン担当の同年代の友人がミリエルの腕をつかんだ。

「大丈夫、ミリエル意外に覚えるの早いって言ってたから、期限までに引けるようになるよ」

 そう言って開いてミリエルの腕をつかんだまま足早にその場を立ち去る。

目の前の相手が何か言おうとするのも無視して。

「ミリエルまた絡まれそうになったの? 安心して、ここの皆はミリエルの味方だから」

 そう言ってミリエルの肩を叩く。

「絶対あいつを近づけさせないから」

 しかしミリエルの心は晴れない。やっとストレス解消の糸口を見つけたかもって思ったのに。

 お友達を使わないまでも。せめて素手でぼこぼこにしたかった。

「だめだよ、ミリエル、今手を怪我するようなことをしちゃ。皆で守るからモーニングスターも家においておいてね」

 見抜かれた気持ちにミリエルはやさぐれた。


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