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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
119/210

閑話 旅路にて

 王城に近づいていくたびに、少しずつ。きな臭いにおいが立ち込めたきた。

 ミリエルは眉をしかめる。戦いが終わって何日も経っているにもかかわらず、こんな臭いが立ち込めているなんて。

 傍らを馬で進むマルガリータは馬車の窓を覗きこむ。

「臭いが気になるなら、窓を閉めておいたらどうだ」

「だめ、さっきやってみたけど、扉や窓から臭いが入ってくるの」

 だから開き直って窓を開けているのだとミリエルは答えた。

「首謀者は無事捕らえられたのかしら」

 ミリエルはいまだ戦火の後生々しい燻る街を進みながら呟く。

 いまだ、レオナルドから中途報告がなされていない。ミリエルは、それにさして興味があるわけでもないが、立場蒸気にしておかなければならないと思ってそう言ってみた。

 いってみただけだ。どうせ着けばわかることだ。

「やれやれ、城に付いたら風呂の用意がしてあるかな、身体中きな臭くてしょうがない」

 パーシヴァルがぼやく。

「それなら適当な川で行水でもしたらいいじゃない」

「ミリエル、この寒空でそんな真似をしたら一発で肺炎でおにいちゃんははかなくなってしまうよ」

 ミリエルは不思議そうに呟く。

「そうなの?」

 マルガリータはあきれた。

「ミリエル、お前は風邪を引いたことがないのか?」

「そういえば、ない」

「では言っておく、お前基準は一般人基準じゃない。自分を基準にして他人を判断するな」

 マルガリータから基準が普通の人間じゃないと断言され、ミリエルはへこんだ。

「そういえば、あれずいぶん静かね」

 最後列にディートリヒは着いて進んでいる。

 あれほどけたたましかった男は、今ではすっかりおとなしくなっていた。

「こんなことならもっと早くしめればよかった」

 ミリエルは本気で後悔した。空気を読まないディートリヒの存在にどれほど神経をかきむしられたか。そのたびにスカートの中の相棒に手が伸びそうになって、それを押し殺すのにどれほどの精神力を使ったか。

 こんなにおとなしくなるなら、我慢しなけりゃ良かった。

「まあ、少しむかつくって程度で、頭かち割ってたら君が悪役になっちゃってたよ」

 妹が何を考えていたのか冊子をつけたパーシヴァルが、そう諭す。

「だから、これに味をしめて、むかつく奴を手当たりしだいしめちゃだめだよ、ヤキを入れるのも禁止、まず相手の出方を伺って相手が手を出した時を見計らって血祭りに上げる、これを忘れちゃだめだよ」

 パーシヴァルの提言をミリエルは神妙に聞いた。

「そうね、まず相手に手を出させてからなら正当防衛が成立するものね」

 ミリエルの輝く笑顔を見ながらマルガリータは、心のうちだけで呟く。

「過剰防衛を正当防衛だと主張しているだけだろう」

 自らの胸のうちだけに収めた呟きは、実は周囲の騎士達もまた同調していたことをマルガリータは知らない。


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