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暁の星とともに  作者: karon
サン・シモン編
11/210

首都グランデの作戦 3

改稿いたしました。今まで読んでくれた方ごめんなさい


 ダニーロが入っていったのはサすすけた、何の変哲もない建物の中だ。

 商業区域である、第六地区と宗教関係者の住まう第七地区の間に建っている。

 地区ごとに神殿はあるが、主だった神官等宗教関係者は、ほぼ第七地区から第八地区に住んでいる。第九地区は役人の住む場所だ。

 そこを通り越すと、今度は貴族関係御用達の商人の住む十区以上になるのだ。

 つまり宗教施設は街の中心に集中していることになる。

 元々は、この街の商人達の寄り合い場所であったが、サフラン商工会成立。その後、元軍人という機動力を生かしてサフラン商工会が次第に版図を広げていくにつれ、元祖グランデ商工会はそのまま飲み込まれた。

 今では元々商人や工芸関係の仕事をしていたものと、元軍人のサフラン商工会のメンバーが渾然一体となってサフラン商工会を運営していた。

 かつては黒獅子十将も今では将軍ではなく、例えばダニーロの主な仕事は本来は内部監査だった。

 会計や、新規商品の開発など、サフラン商工会の発展に役立つ仕事をしているほうが多い。

 当たり前だがサフラン商工会はほとんど商業組織なのだから。

 この建物の中で巨万の富といってもいい金額の商取引が頻繁に行われるなどと、建物を見ただけでは誰も想像できないだろう。

サフラン商工会本部では、当代黒獅子アルマンが、薄汚れた机に向かって資料を読んでいた。

 入った入り口から一番奥に、正面を見据えるようにアルマンの机がある。

 縮れた黒髪は前髪が後退し、血色のよいぱつぱつの肌に目じりの小じわが目立つ。

 体格は、丸い。縦横すべてが大きく壁のように見える。

 顔も体型もすべてが丸いアルマンだが、灰色の目はどこか冷たい色をして、性格まで丸くないと主張していた。

「どうした。ダニーロ」

 本来来る日ではないのに、本部に顔を出したダニーロに、怪訝そうな顔をする。

「家の孫が言い出したことなんだがね」

 そう言ってダニーロはミリエルの提案を並べて見せた。

「確かに、それしかないかもしれんが」

 資料片手に、アルマンはダニーロを見やる。

「もうすぐ鎮魂慰霊祭だ。事を起こす場合、その前と後、どちらがいいかね」

「難しい問題だな」

 ダニーロは暦の印を見ながら呟く。

「事を起こすならいっそ当日という可能性もあるからな」

 グランデの街のほとんどが協会に集まる当日なら、その家の警備も手薄なはずだ。盗賊が狙うにはうってつけの日だ。

「それにだ、偽の情報を流す前に、本物のほうも確認すべきだろうな。例えばだ、今狙われやすい立場にいるのは誰だ?」

 二人は地図と、契約関係の写しの目録を片手に討論を始めた。

「いっそ、狙われる確立のある奴を囮にするのはどうだ」

「そのほうがでっち上げることが少なくてすむな、九割九分九厘真実で、最後の一厘が嘘。そんなもんが一番見破られにくいもんだ」

 二人はそのまま作戦を煮詰め始めた。

「それはそれとしてだ。今日おかしなことがあったそうじゃないか」

 不意に話を変えられダニーロは戸惑った顔を見せた。

「第三地区の練習場に覗きが出たとか」

 それに関してはさして気にも留めてなかった。

「おかしいと思わないか? これが踊りの練習なら、俺もそう驚かなかった。しかしだ、楽器の演奏や歌を歌うお嬢ちゃん達を覗くために壁をよじ登って、二階の窓から顔を出したってちょっとありえないと思わないか」

「若い娘の集団という情報だけがあって色っぽいことはないと知らなかったとか」

「この国にいて鎮魂慰霊祭を知らない?」

 ありそうもなかった。

「あの中にミリエルもいたよな」

 その言葉に含まれているものに、ダニーロは眉をしかめる。

「関係ない」

「本当にそう思うか?」

 アルマンは重ねて聞いた。



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