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暁の星とともに  作者: karon
サヴォワ編
107/210

疑念

 レオナルドは城内に入り込んだ。

 すでに逆らう者もいない城内を、幼い頃の記憶を頼りに進んでいく。

 しかし、そこかしこに転がる屍。火災でも起きたのか、きな臭い匂いが鼻を突く。

 幼い頃の思い出は、凄惨な戦場の記憶に塗り替えられた。

 すすけた壁の前を押さなかった自分が駆け抜けていく幻が見えた。小さく頭を振って、幻を追い払うと。レオナルドは再び歩み始めた。

 マーズ将軍がその後を追う。

 今落城のときを迎えつつある白の中、攻めるものも守るものも、変わりなく戦いの終末を見ていた。

 敵は、すでに抗う様子もなく、諦観をにじませ、廊下に座り込んでいた。床にゆっくりと鮮血が広がっていく。

 レオナルドはそれに目もくれずただ歩いた。


 レオナルドはほとんど交戦せず歩き続けた。行く手に、佇んでいた三人の男は、レオナルドを見るとすぐに壁沿いに移り、その行く手を遮らなかった。

「お前達は誰だ」

 明らかに恭順の姿勢を示している以上、先に城内に入った味方だろう。

「サフラン傭兵部隊です」

 そういえば、そんな奇妙な名前の傭兵部隊を雇ったなと、レオナルドは思い出した。

 腕を売る男達にしては、随分と値引きしてくれたことと、その奇妙な名前で覚えていた。

 そこにいたのは、たった三人、しかし随分とたくさんの敵兵が倒れていた。ほぼ一個師団くらいだろうか。

「これはすべてお前達が?」

「いいえ、逃がした連中もかなりいます。これだけ数がいれば、どうしても打ちもらす」

 そう言って奇妙な武器をかざす。

 それは、ミリエルが持っていた武器にも似ているような気がした。

 鎖の先に刃の付いた塊がぶら下がっている。

 こんなものでなぎ払われればさぞ痛いだろうという代物だ。

 こんなものを見て思い出すような女、そんなとんでもない女ともうすぐ自分は結婚する。

 嫌いではない。たぶん、人形のような見た目を裏切り、とんでもない性格と、予想困難な行動力に戸惑うが、それでもおそらく悪気はないのだ。

「もしかして、ミリエルの関係者か」

 彼らはあっさりと頷いた。

 ミリエルが育ったサン。シモンで、その成長を見守ってきたと答えられた。

 レオナルドは三人と別れると、かつて、父が坐っていた椅子のある場所へと向かった。

 玉座の間。今はもう儀式にしか使わない、仰々しい台の上に、重厚な椅子が乗っている。そしてその周りで、臣下達がひれ伏す。

 レオナルドが生まれる前からそこを使わず、円卓のテーブルで、乳は普段の仕事をしていた。

 あそこで仕事をしていると効率が悪いと父は笑っていた。

 父が死んだ後、新たにそこの主となった男は、常にそこに坐っているという。

 彼は合議などしない、会議も、ただそこで命じるだけ、逆らえば死、単純すぎて笑える有様だった。

 そして国は混乱を極め、今日という日を迎えた。

 どうして、こんなに時間がかかったのだろう。

 レオナルドは改めて疑問に思う。彼のとった策は下策中の下策。なのに何故今までそれを打ち破ることができなかったのだろう。

 レオナルドの脳裏を占める疑問とは裏腹に、その足取りはしっかりと事前の作戦通りに歩みを進めていた。


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