特殊部隊入団
以前も投稿させていただきましたが、あれは事前に書いたものを順次投稿していました。これはリアルタイムで書いておりますのでご容赦ください
もしかしたら別作品で出た名前があるかもしれませんが別人です。
森の中 深い深い森の中、獣道に近いその場所に、唐突にその子供は立っていた。
髪を肩までに伸ばし後ろでくくっている。
着ているものは薄汚れたシャツと上着、そしてズボン。もう少し小奇麗ならば、平均的な家の子供の普段着だ。
髪も顔も全体的に薄汚れていて、容姿の美醜も見分けがたい。その中で目だけが綺麗な緑色をしていた。
深い森の中で、出会うはずのないその存在の足元に、巨大な死骸が横たわっていた。
大猪。それもめったにいない大物の雄猪だった。
首の辺りに鋭利な刃物を使われたような傷がある。
そして、明らかに、子供の薄汚れた衣服の上からもわかる返り血の後。
「お前がしとめたのか」
子供はこくりと頷く。
「どうしよう」
か細い声で訴えた。
「こんな大物、食べきれないよ、でも処分しないと狼が来るし」
そう泣きそうな顔で訴えられて、彼は対応に困った。
彼は、軍事教練の一端で森に分け入った軍人で、何でこんなところに民間人の子供がいるのか困惑している途中で、そして、自分は軍人であって猟師でも肉屋でもないので、猪は捌いたことがなかった。
確かに、猪を処分することが子供一人では難しいかもしれないが、大人が一人いれば解決するかと言われれば否と答えざるを得ない。
初対面の子供と、仲良く困惑していると、大勢の足音が聞こえてきた。
全員街の住民で、どこかで見たような顔も混じっている、総勢十五人ほど。
その全員が満面の笑みを浮かべている。
「よくがんばったな、これで最終試験は合格だ」
真ん中の男がニコニコと笑いながら告げた。
ようやく彼は、今何を見ているのか気付いた。
「もしかして、特殊部隊の入団試験か?」
サフラン商工会付属機動隊、ならびに特殊部隊は、精鋭ぞろいと名高い。
その入団試験の一部に、野外訓練があり、丸一週間武器だけを持ち込み深い森や山の中で生き延びると言う試験があると聞いたことがある。
「史上、最年少記録を更新だ」
禿げ上がった。その場で一番年長の男が断言する。
唐突に子供が口を開いた。
「あの、最終試験は終わってないでしょう、果し合いの相手は誰」
全員の笑みが深くなる。しかしその笑みはどこか硬直した、笑みの形に固まっているような印象を受ける。
「その猪を倒した段階でその必要はないと判断された」
全員がその言葉に頷く。そして彼は、血祭りに上げられた猪を見る。
なるほど、誰でも命は惜しいよなと納得した。
ここまでではカテゴリーのうち何も出てきませんね、軍隊ぐらいか