彼女と血縁者=秘密だってあるほうが良い
「違う違う違う違う違う違う違う違う!
僕は友達が居ないんじゃなく選んでるからぱっと見居ないように見えるだけで決して居ないんじゃない。
そうだ、違うんだ!」
まいネガティブわーるど☆に、どっぷりハマっていた理事長。
の、肩を叩いた男。
「あー……理事長? 大丈夫ですか?」
「だから違うっていってるだろう!!」
「は? 何の話でしょうか? め――っと、西城が何かやらかしましたか?」
「あ」
「……理事長?」
招き猫を抱えて、精神の安定をはかっていた理事長に、勇敢にも声を掛けた男。
学園教師、西城 秋(物理担当29歳独身。彼女的女子複数)
「あら? お久しぶりです、伯父さま」
「お……じさ……」
「――一体何をしたんだ? お前」
「西城……先生? まさか……あなた」
「大変申し訳ありません、血縁者です」
「め――め、姪子さんか?」
「はい、残念ながら」
「で? どんな奇天烈な行動に出た」
「理事長先生と私の秘密です。
犬派の伯父さまには、一生縁の無い話です」
理事長としての威厳とか、登場時のキャラとか、なけなしのプライドなんかを成層圏までぶっ飛ばされて……
「そうだな……犬派ならば私達の会話は分からないだろう」
何だか思考が汚染されはじめた男と、
「そ――う、ですか」
慣れているのか、やたらと諦めの早い男。
そして、
「理事長先生に、基本的な学園説明はしていただきました。
あまり長居してはお仕事の邪魔になりますし、そろそろ失礼します」
何故か場の主導権を持つ彼女。
「――さい……っと、明美君」
「はい、何でしょうか?」
立ち上がり掛けた(信じられないことに、ネガティブしている理事長を放置しソファで紅茶を飲んでいた)彼女は、再びソファに腰掛ける。
「君が西城先生の血縁でも、G棟生である以上S棟生には逆らえない。
覚えておくんだな」
「はい。
理解は、しました。ご安心ください」
『…………』
「あー、うん。では、行きなさい」
「はい、失礼します」
パタン
と、扉が閉まると、理事長は長いため息を吐いた。
「理解は、って……つまり納得はしてないって事か?」
この十数分で、何だかやけに疲れた。
なんて考えていて……
「……まて、何でぼ――俺は、何の処分もしなかったんだ?」
数々の失礼な言動を振り返るだに、退学を言いわたさなかった事が悔やまれてくる。
「今からでも遅くない……わけの分からない事をしでかされる前に追い出そう!」
そうと決まれば、教室に入る前に捕まえたい。
勢い込んで立ち上がり、扉に一歩踏み出した理事長だったが……
「ん? 何だ?」
応接用のテーブルに、薄い緑の便箋一枚。
鍋会のご案内
明後日、正門にて11時より
鍋はきりたんぽを予定しております。
追伸 友達出来ます
西城 明美
「…………」
鍋を、正門で……
「まぁ……西城君はG棟生だし。良いか!」
そんなに友達が欲しいか!!
と、突っ込みを入れてくれる人は居ない。
「すまない、口を滑らせた」
「気を付けてください。ばれたら終わりですよ?」
「……注意するよ」
「まぁ、誤魔化せるように準備はしてありますから……一番良いのは、西城先生があまり私に関わらないことでしょうね」
「――本当に、一人で大丈夫なのか?」
「誰に、お尋ねですか?」
嵐は、その勢いを隠しながら、学園北の校舎棟へ移動中。