彼女と理事長室=百人居れば良いというもんでもない
「学園は、2つの棟に分かれている。
金持ち組のS棟と、学力優秀組のG棟だ。西城君はG棟組」
明美が理事長室に入ると、挨拶も無く説明が始まった。
しかし、理事長(南澤 雅春、35歳独身。バツイチ)の目は、しっかりと明美を捕らえて離れない。「なるほど~」
対する明美は、何故かニコニコしながら相づちをうった。
が……その視線は、執務机に置かれた招き猫をロックオン。
「まぁ、せいぜい頑張って……無傷で卒業してくれ。
あぁ……くれぐれも、S棟生に迷惑を掛けないように――おい」
「なるほど~」
「ちょっ、おい! お前俺の話をっ――」
「なるほど~」
「っ――聞けぇぇぇ!」
「なるほど~」
無駄に優しげな笑顔は、招き猫(左手を少しだけ挙げた三毛猫…小さな幸運を呼ぶ人を招きたいようだ)だけに向けられている。
「っっなっ、何が悪い! 小さな幸せバカにすんなよ! ミケボンはなぁ、友達たくさん招いてくれるニヒルな猫だっ!」
ニヒル……
時が止まったかのような沈黙
『………………』
そして、明美は初めて理事長に視線を移した。
「たくさん招いてくれると良いですね」
ニッコリ
やはり、彼女の笑みは優しさ満開。
逆に痛い。
「―――――っ、友達いなくてわるかったなぁぁぁぁ!!!」
理事長のしょっぱい願いをほじくりつつ、理事長室での嵐は勢力を増しながらキリモミ回転中。