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急変!?幼なじみ


この物語はフィクションです。


スマホのバイブ音が鳴った。


続いて、どこかくぐもった音楽が聞こえてくる。


アタシは布団の中を手探りして、

スマホを救出する。


時刻を確認して、

ゆっくりと体を起こした。


――朝。


頭がぼんやりしたまま、

軽く伸びをする。


「あ、起きた?」


突然の声に、

アタシの動きが止まった。


「え?」


ぎこちなく隣を見る。


――と。


「おはよう、ちーちゃん」


すでに身支度を整えた冬馬が、

ドアの前に立っていた。


「いい朝だね」


ハツラツとした満面の笑顔に、

アタシは思わず固まってしまった。


――いや、待って。


誰?


★★★


教室に入るなり、

海咲がアタシの机に身を乗り出してきた。


「ちょっとちょっと、

アンタの旦那どーしちゃったワケ?」


「……ダンナジャナイ」


いまだに訳がわからず、

アタシは混乱する頭を抱えて、

机に突っ伏した。


いや、混乱もするでしょ。


昨日まで残りHP1みたいだった奴が、

急に全回復して起こしにくるなんて。


誰が想像できる?


しかも――だ。


今朝の登校中。


いつもの風景。

いつもの住宅街。


その中を――


軽い足取りで、

冬馬が歩いている。


「ねぇ、本当に大丈夫なの?」


数歩先を歩いていた冬馬が振り向いた。


「大丈夫だよ。

それより荷物、持とうか?」


「……え?」


思わず、アタシは立ち止まってしまった。


「いつも重たいモノ持ってくれてたからさ。

そのお礼」


へへ、と照れくさそうに笑う。


――いや、へへって。


なに?


……ぼとり。


あまりの衝撃に、

思わずアタシは鞄を手放してしまった。


地面に落ちた鞄を、

冬馬がひょいと拾い上げる。


「ほら」


そのまま、当たり前のように肩にかけた。


「早く行こう。ちーちゃん」


「……」


言って上機嫌で歩き出す冬馬の背中を、

アタシは目をまるくしたまま見つめる。


「ちーちゃん?」


振り向く冬馬。


「どうかしたの?」


不思議そうに、きょとんとする。


しばしの間の後。


「変なちーちゃん」


はにかむように、

照れくさそうに冬馬は笑った。


「いや変なのはそっちぃ!?」


「うわ、びっくりした」


今朝の出来事を思い起こして、

アタシは思わず叫んだ。


海咲が変なものを見るような目を向けてくる。



「紫月って産まれた時から身体が弱いって言ってたよね?」


海咲が通路に投げ出していた足を組む。


「んー、会った時から気が弱くて、

病弱って感じだったー」


机から顔だけ上げて、

アタシは初対面の冬馬を思い浮かべる。


「小三からとはいえ、

一応私もアイツを見てきたわけだけど――」


チラリと視線を向ける。


つられて追った視線の先は、冬馬の席。


「この光景、うちらから見たら異常よね?」


そんな冬馬の机の周りには、

今だかつてない人数が集まっていた。


輪の中心に、彼がいる。


級友たちが物珍しそうに話しかけ、

冬馬は少し照れくさそうにそれに応えている。


――いや。


見慣れないにも程があるでしょ。


全く。

全然。


わけが、わからない。



知らない。

知らない。


こんな元気な冬馬。


え?


なんで?


理由を思いつく限り並べてみる。


あ、そういえば今日。


誕生日だっけ?


え?


もしかして、

それで浮かれてるだけ?


――いや、でも。


なんだか今の冬馬。

雰囲気が違うような……。


改めて彼を見て、

腕を組んで考える。


そこへ、予鈴が鳴った。


わらわらと、

級友たちが自分の席へ戻っていく。


まだ今の状況に納得できていないアタシは、

鬱々とした気分を、

ため息と一緒に吐き出した。


でも――


この時のアタシは、

まだ気づいていなかった。


冬馬が、

じっと見ていたことに――。


★★★


放課後。


いつもの道を、

アタシたちは二人で歩いていた。


この時間、この辺りは

ほとんど人がいない。


……正直。


気まずい。


二人の間に、会話はない。


ただなんとなく、

以前のように話しかけにくいだけで――


今日一日、

アタシはなんとなく彼を避けてしまっていた。


本当に偶然、

たまたまタイミングが合わなかったことも

あったような――


……なかったような。


そんな時だった。


普段と同じ、

少し遠慮がちに、

冬馬が声をかけてきた。


「一緒に帰ろう」


断る理由もなく、

アタシは静かに頷いた。


「……今日、俺のこと。

避けてたよね?」


夕暮れの道に伸びる、

二つの影を眺めていた時だった。


気づけば、アタシたちは足を止めていた。


急に核心を突かれて、

アタシは思わず焦る。


「……っ、あーいや。

避けてたわけじゃ……」


視線をそらす。


すると冬馬が、

くすっと小さく笑った。


「うん、大丈夫。


ちーちゃんが戸惑うのも

わかってるから」


静かに言われて、

アタシは一つ、深呼吸をした。


「……というか、

その変わりっぷりはなに?


てか、本当に――


冬馬なの?」



ザァーっと風が吹いた。


二月下旬の今。

日中は暖かい日もあるけれど、

この時間になると、まだまだ肌寒い。


アタシはマフラーと首の隙間を埋めるように、

きゅっと掴んだ。


「……大丈夫。俺は俺だよ」


冬馬は冷たい空気を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。


「そのことでさ。

父さんと母さんが、話があるみたいなんだけど……


一緒に来てくれる?」


アタシは冬馬の目を、

じっと見つめた。


冬馬もまた、

じっと見つめ返してくる。


しばしの沈黙。


やがて――


はぁ―――……。


それまで溜め込んでいたものを、

アタシはため息と一緒に一気に吐き出した。


「わかった。

一緒に行ってあげるわよ」


両手を腰にあてて、

アタシは苦笑した。


「ありがとう、ちーちゃん」


その途端――

ぱっと笑顔になる冬馬。


今さら疑っても仕方ない。

何せ長い長い付き合いなんだ。


それに、

透子さんたちから何か聞けるなら

それこそ願ったり叶ったりってやつ?


今日はもう充分驚いたし、

きっとこれ以上の驚きもないだろう。


大丈夫。


アタシはただ、

目の前の幼なじみを信じようと

心に誓ったのだった。



「妖し王子と怪力姫」を読んでくださりありがとうございます。


冬馬の誕生日を祝う食事会にお呼ばれしたアタシ。

そこで彼の父――冬獅郎さんから驚きの事実を聞かされる。

いつもの変わらない日常が、少しずつその形を変えていく――


次回『訪問!紫月家』

3月13日 21時頃更新予定です。

更新をお楽しみに!


第一章は全9話予定で、1日1話更新予定です。


※「トワイライト・ベアラー」も予定通り更新していきます。

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