表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

そして続く日常


この物語はフィクションです。


朝。


鏡の前で、きゅっと髪を結ぶ。

動きやすさ重視の、

高めで強気のポニーテール。


履き慣れたスニーカーに足を突っ込み、

軽く足先をトン、と鳴らした。


「行ってくるねー」


母の返事を背に受けながら、

制服のスカートを翻して玄関のドアを開ける。


――と、同時に。


隣の家のドアも、ほぼ同じタイミングで開いた。


思わず、顔を見合わせる。


「おはよう、冬馬」


「おはよう、ちーちゃん」


冬馬が笑う。


――あ。


「寝癖……」


言って、

ぴょんと跳ねた髪にそっと触れる。


「えぇ!? おかしいなー。

ちゃんと直したのにー」


冬馬が手でぐいっと押さえ込むが、

すぐにまた跳ね返る。


「妖怪アンテナみたい」


「うう……ストレートヘアーがうらやましい」


冬馬が肩を落とした。


「アタシも多少クセはあるけど、

冬馬のは結構頑固だよね」


言いながら、

アタシたちは並んで学校へと歩き出した。


★★★


教室のドアを開ける。


後ろの席の海咲と、

軽く挨拶を交わした。


「おー、夫婦仲良く登校かい?」


「……ふ、夫婦って」


相変わらずニヤニヤする海咲の言葉に、

アタシは思わず、ちらりと冬馬を盗み見る。


「お? なにかあったん?」


海咲が少しだけ驚いた。


「ないない! なーんもない」


「ふーん」


慌てて両手を振るアタシを見て、

海咲のニヤニヤがさらに強くなった。


完全に、おちょくられている――。


冬馬が「普通」に登校するようになって、

一週間が経った。


まだ教室は少しざわつくけど、

初日ほどの話題性は、もうないようだ。


冬馬はアタシから離れた席で、

荷物の整理をしている。


そこへ男子生徒が二人来て、

挨拶を交わし、楽しそうに話していた。


アタシ以外の人との交流にも、

少しずつ慣れてきているようだった。


――まぁ。


あの三人と知り合えば、

そりゃ慣れるよね。


苦笑して――


――思い出す。


ケンカと運動が好きなバトルバカ――

かと思いきや、

意外としっかりした一面もある、コウ。


可愛らしい見た目とは裏腹に、

実はとんでもない力を秘めた、アヤコ。


その兄であるレンは――

自分の研究のためなら手段を選ばない、

陰険インテリ野郎だったけど。


……案外、

冷静に状況を見ることのできる、

まともな奴なのかも――


――あ。


思い出した。


アタシ、アイツに泣かされたんだ――


よし。


今度会ったら、

足を思い切り踏んづけてやる。


「そういやさー」


密かにレンへの復讐を企てていたアタシに、

海咲が呟いた。


「ん?」


海咲がわずかに、アタシに身を寄せる。


「日直で職員室行ったらさ、

城田と知らない男子生徒が一緒にいたんよねー」


手を口の端に添えて、海咲は小声で言った。


――城田しろた みのる

アタシたちの担任だ。


「転校生かな?」


小声でアタシも返す。


「多分ねー。この時期に珍しい――」


その時――

海咲の言葉を、予鈴が遮った。


同時に、ガラッとドアが開く。


入ってきた城田先生は教室を見回し――


ビクリ。


アタシを見て、

小さく身体を震わせた。


ん?


なに、今の。


ほんの一瞬。

何かに驚いたみたいな――


引きつったような表情。


けれど城田はすぐに眼鏡に触れると、

何事もなかったかのように歩き、

教卓に着く。


「おーい、席つけー。

転校生を紹介するぞー」


ざわめく教室。


クラスメイトたちの視線が、

一気にドアへと集中した。


現れたのは――


「……あ、どうも」


小さな声で。


鞄を両手に抱え込み、

怯えながら、

前かがみになって歩く男子生徒。


雰囲気こそ違うものの、

その顔には見覚えしかなかった。


「……は?」


思わず、声が漏れる。


反射的に冬馬を見る。


冬馬は驚いた顔のまま、

勢いよく首を横に振っていた。


知らない。

聞いてない。

俺、関係ない。


その表情が、必死にそう語っている。


――なにもそこまで怯えなくても……。


先生が黒板に名前を書いていく。


「……逢魔レン、です。

よろしくお願いします」


小さな声で、

転校生――レンはぺこりと頭を下げた。


――いや、キャラ違いすぎでしょ。


いつもの日常。

いつもの学校生活に戻った――


そう思っていたのに。


アタシは、なんだか――


ものすごくイヤな予感がして、

仕方なかった。


「妖し王子と怪力姫」を読んでくださり、ありがとうございます。


ひとまず、事件は一件落着――

……ってことでいいのかな?


アタシと冬馬の関係は、

ずっと変わらないものだと思ってた。


でも。


少しずつ、形を変えていくこと。

そして――変わっていくことを、

アタシは知った。


――なーんて、

しんみり思ってたら。


まさかのレンが転校生?


なんだか一波乱起きそうなんだけど?


どうやら、

アタシたちのちょっと不思議で騒がしい日常は、

まだまだ続くみたい。



ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


次回の投稿はまだ未定ですが、

二章を鋭意制作中ですので、

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ