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真相!明かされる裏側


この物語はフィクションです。


「お咎めなしー?」


思わず、

アタシは叫んでしまった。


昼食後。


アタシたちは今回の騒動について、

ことの発端と顛末を聞くことになった。


二人掛けのソファに、

冬獅郎さんと透子さん。


その隣の三人掛けのソファに、

冬馬、アタシ、アヤコの順で座る。


ローテーブルを挟んだ床に、

コウとレン。


自然と、

全員が顔を合わせる形になった。


「そ。少なくともチヒロに関してはね」


カップをソーサーに戻しながら、

アヤコが言った。


「お兄様の暴走に付き合わされた、

可哀想な人間の女の子――


って言ったら、

みーんな納得してくれたよ」


そう言いながら、

チラリとレンを見る。


あ、視線そらした。


「むしろ同情の声が多かったくらい。

よかったね」


アヤコは、

無邪気に笑った。


――けど。


なんだろう――


「いいの、かな?」


――どこか、引っかかる。


結構な騒動だったと思うんだけど。


街中の妖しが、

アタシを捕らえようと手を伸ばしていた。


アタシだって、

ただ大人しく逃げていたわけじゃない。


色んなものを、

飛び越えて、掴んで、

倒して――壊して。


それなのに――


みんなが、

あっさり許してくれたなんて。


むしろ、

その軽さが――


少しだけ、不気味に思えて仕方なかった。


――まるで。


アタシの起こした騒動とは比べものにならないくらいの――


もっと大きな何かが、

アタシの知らないところで、

動いていたんじゃないかって――


「いいんじゃねーの?」


コウの言葉に、

はっとして顔をあげる。


「あながち間違っちゃいねーしな」


コウが、 わざとらしく伸びをした。


ついでに、 ローテーブルの真ん中に置かれたクッキーを、 ひょいと摘み上げる。


思わずアタシは、

向かい側に座るコウの動きを、

じっと目で追っていた。


「コウ」


「うぐっ」


アヤコが、 静かに名を呼ぶ。


その一言で、 僅かに空気が引き締まった。


クッキーを噛む音が、 やけに響く。


やがてコウは、

ゴクリと飲み込んだ。


わずかな間。


アヤコは、にっこりと微笑んだ。


口元をわずかに引きつらせ、

コウはふいと視線を逸らす。


「……私からは以上です」


そう言って、

紅茶を一口飲む。


――なんだか、

いまいちスッキリしない。


そんな気がして。

ふうっと少し大きく息を吐いた。


ちらりと、

隣の冬馬を見る。


冬馬は――

なぜか、曖昧な笑みを浮かべていた。


「父さんたちのほうも、

片は付いたってことで、

いいんだよね?」


「まぁ一応、ね」


苦笑しながら、

冬獅郎さんは少しだけ言葉を濁した。


「じー様のいらん思いつきだった――って、

親父から聞いた」


コウが少し呆れたように、

口を挟む。


コウたちのじー様。

冬獅郎さんのお父さん――


――つまり、王様だ。


「まぁ……簡単に言えば、ね」


冬獅郎さんは口元に指をあてて、

一瞬、言葉を探すように視線を落とした。


冬獅郎さんのことだ。

色々考えてはいたんだろうけど――


コウの雑な切り出し方に、

少し戸惑っているようにも見える。


やがて。

小さく息を整えてから、

ゆっくりと口を開いた。


「千聖ちゃん。

前に君にした話、

覚えてるかな?」


「うん」


確か――


お父さんである王様が、

二人の兄を焚き付けて、

それで王位継承争いが起こったって、


……そんな話だったはず。


冬獅郎さんは、

言いにくそうに口をわずかに動かす。

やがて、口を開いた。


冬獅郎さんは言いにくそうに、

口元をわずかに動かす。


やがて、口を開いた。


「一番上の兄は、とにかく冷静で――」


……ん?


「二番目の兄は、とにかく脳筋」


……んん?


思わぬ言葉に、

思わず口元がピクピクと動く。


「――父がそう言っていたんだよ」


そう言って、

冬獅郎さんは苦笑した。


あ……そうなんだ。


とりあえず、

心の中で納得しておくことにした。


「それでね」


冬獅郎さんは、

気を取り直すように続ける。


「父は王として、

将来この二人に王位を任せることに――」


そこで冬獅郎さんは、

一旦言葉を切った。


視線が、

アヤコ、レン、コウの三人へと向けられる。


「その……

少し不安を感じていたらしいんだ」


あ、そうか。


冬獅郎さんのお兄さんたち――

つまり。


冬馬の従兄妹である三人、

それぞれの父親ってことか。


それは――


……言いにくそうだな。


「それで――

父の中では、

比較的バランスが取れていて……


いわば“普通”だった僕を、

もう一度呼び戻して、

任せられないかと――


……思ったみたいで」


だんだんと冬獅郎さんの声が小さくなり、

やがて、言葉は消えていった。


リビングに、

なんとも言えない沈黙が落ちる。


やがて――


「元々、僕ら兄弟の仲は

そこまで悪くはなかったと思うんだけどね」


ぽつりと、続ける。


「人づてに聞いた時は、

にわかには信じられなかったよ」


一度、言葉を切る。


「でも……理由は何であれ、

僕はあちらの世界と立場を捨てたようなものだから」


少しだけ視線を落とした。


「二人の兄が僕に対して、

よくない感情を抱いていてもおかしくない――


そう思ってしまったんだ」


そして――


「だから、

いたずらに千聖ちゃんを不安にさせるようなことを、

言ってしまった」


静かに、そう締めくくった。


「冬獅郎さんが、

お城を出てから――


一度も連絡をとらなかったの?」


家族なのに。


そう思ったら、

言葉がこぼれていた。


冬獅郎さんと透子さんは、

お互いに顔を見合わせる。


「――冬馬が産まれた時に、

一度だけ」


冬獅郎さんは、

少しだけ目を細めた。


「王妃である母に、

手紙を送ったよ」


苦笑する。


「返事は――

来なかったけどね」


わずかに、

冗談めかした調子で言った。


「私たちも、

冬獅郎さんたちのことは聞かされていたよ」


アヤコが、

チョコレートのクッキーに手を伸ばす。


「でも、おばぁ様がね。


“あちらはあちらで上手くやっているようだから、

そっとしておきなさい”って」


一度、言葉を切って――

冬獅郎さんと透子さんへ視線を向けた。


「とっても穏やかな顔で、

そう言ってたよ」


にっこりと笑って、

アヤコはクッキーを一口かじった。


「……そっか」


冬獅郎さんがぽつりと呟き、

透子さんがその手を優しく包み込む。


二人の表情には、

どこかほっとしたような、

わずかな嬉しさが滲んでいた。


「だからさ――」


レンがティーカップを手にする。


「家族同士は、

別にそこまでこじれてなかったはずなのに」


少しだけぬるくなった紅茶に、

視線を落とした。


「なんであんな話になってるんだって、

思ってたんだよね」


そのまま、

紅茶に口をつけた。


その横でコウが、

クッキーをまるごと口に放り込む。


「うちの親父さ。

めちゃくちゃ強ぇーし、

頼れる兄貴って慕われてっけど――」


もぐもぐと咀嚼しながら、続ける。


「“オレが王様?無理に決まってんだろ”

って言ってたし」


空になっていたみんなのカップに、

透子さんが温かい紅茶を注いでいく。


「順当にいけば、お父様も次は自分が――

とは思うかもしれないけれど、

兄弟を蹴落としてまでどうこうする方じゃないしね」


アヤコは小さく礼を言って、

紅茶をソーサーごと手に取った。


「超効率重視型だから、

そもそも余計なことはしないだろうし」


レンも含めて、三人は顔を見合わせて頷いた。


「ひとまず、

僕と透子は、

密かに父の元へ向かうことにしたんだ」


数年ぶりの再会――

どんな感じなんだろう。


思わず、

冬獅郎さんと目が合う。


……苦笑された。


どうやら、

アタシの考えていたことは

お見通しらしい。


「僕らは――」


少しだけ間を置いて、


「普通に、出迎えられたよ」


目を、

どこか嬉しそうに細めた。


「兄さんたち夫婦も揃っていてね。

その場で、話を聞けたんだ」


ほんの少しだけ、

表情が曇った。


「父としてはね、

軽い話題のつもりだったらしいんだけど……」


一瞬、

言葉を選ぶように間を置く。


「周囲が、

それを本気にしてしまったらしくて


その結果――

焚き付ける形になってしまったみたいなんだ」


小さく息を吐いた。


リビングに、

再び沈黙が落ちる。


「おじい様も、困った方よね」


アヤコが、

ぷりぷりと怒りながら腕を組む。


「気さくでおおらかなところは素敵だけど――

もう少し、

御自分の立場をわかって発言してもらわなくちゃ


……でないと」


そこで、

ふっと声のトーンが落ちた。


「どんな火種になるか、

わかりやしない」


「アヤコ?」


何か思い当たる節があるのかと、

そう思って呼びかけてみる。


アヤコは、曖昧に笑ってみせた。


「……だよなー」


コウが口を挟んだ。


「実際、

今回の騒動は、

マジでヤバかったんだよなー」


レンがカップをソーサーに戻す。


「王城の中でもさ、

本人たちよりも、

周りの連中の方が騒いでたし」


肩をすくめてみせた。


「長男派、次男派ってさ。

さらには冬獅郎さんたちまで巻き込んで、

それぞれ勝手に話を膨らませていって――」


すっと、目を伏せた。


「気づいた時には、

“三人のうち、誰が王に相応しいか”じゃなくて、

“三人のうち、誰を担ぐか”の話になってた」


――本人たちの意思なんて、

関係ないみたいにさ。


吐き捨てるように、

レンが言った。


「え……」


思わず、声が漏れる。


それって――


相当、

ヤバかったんじゃ……。


一瞬、

誰も言葉を挟まなかった。


少しだけ、

息が詰まる。


「兄さんたちも――

話を聞いて、

ようやく事態を知ったみたいだったよ」


冬獅郎さんが、

隣の透子さんへ視線を向けた。


もしかして――

透子さんも、

危ない目に遭っていたのかな。


透子さんと目が合う。

少しだけ、困ったように笑っていた。


「あ――」


思わず、声が出そうになる。


その手を、

そっと掴まれた。


「……とう、ま?」


冬馬だった。


ゆっくりと首を横に振って、

透子さんとよく似た笑みを浮かべる。


冬馬はきっと、

アタシよりも多くのことを聞かされているはずだ。


そう思ったから――


アタシは、

何も言わずに済んだ。


「……それでね」


冬獅郎さんの声が、

やけに静かに響いた。


「父曰く――」


少しだけ言いにくそうに、続ける。


「最近、ふと思うことがある――

そんな話を、懇意にしている家臣に漏らしたらしくてね」


一瞬、言葉を選ぶ。


「長男と次男のどちらに王位を任せるか。

二人とも優秀ではあるけれど――」


小さく苦笑する。


「どうにも決め手に欠ける、と。

その流れで――


今はいない僕の名前を、

軽い気持ちで出してしまったらしい」


リビングの空気が、

ほんの少しだけ重くなった。


「……それで、

父はその時に――」


一瞬、言葉を探す。


「“いっそ兄弟で競わせてみるのも、

一つの手かもしれないな”――と、

冗談のつもりで言ったみたい……なんだ」


言葉尻とともに、

冬獅郎さんの背中が、ゆっくりと丸まっていく。


その背を、透子さんが優しく撫でた。


「……ただの世間話だったはずなのに。

それだけで、

ここまで大事になるなんて――」


思わず漏れた言葉に、

アタシは慌てて口を押さえた。


みんなの視線が、アタシに向く。


――ヤバ。


気まずい空気に焦った、その時。


ふいに、頭に小さな手が触れた。


「……それが」


アヤコだった。


顔を見合わせると、

優しく頭を撫でられる。


「私たち王族の、

宿命――だからね」


にっこりと、

アヤコは笑った。


王族としての誇りを持つ一方で、

どこか寂しそうな笑顔だな――


そんな気がした。


アヤコに大人しく頭を撫でられている傍らで、

冬馬が冬獅郎さんに問いかける。


「そもそも――

なんで、その……お祖父様は」


一瞬、言いよどむ。


「父さんたちを、

争わせようなんて考えついたの?」


もしかして――


はじめて呼んだのかな。


自分の、

おじいちゃんのことを。


少しだけ、

ぎこちなく響いた。


冬馬の質問に、

冬獅郎さんは片手で顔を覆った。


「――なんでも、

最近ハマっている小説に、

王位争いとか、

兄弟の対立とか、

そういう展開の物語があったらしくてね……」


冬獅郎さんは、

遠い目をする。


「ライトノベルというらしいんだけど――

会話の中で、

ふと思い出して――」


一瞬、言葉を探す。


「本当に、冗談のつもりで。

口にしてしまったらしい」


小さく、

肩を落とす。


その頭を、

透子さんが優しく撫でた。



――え?



それが、原因?


ていうか――


「……王様って、

ラノベ――

読むんだ」


思わず、

アタシの口から思考がこぼれ落ちた。


「いや、そこかよっ!?」


向かい側から、

コウの突っ込みが飛んできた。


「まぁ……

おじい様らしいといえば、らしいけど」


アヤコが、

こめかみに手を添えた。


「そういやあの人、

結構雑食なんだよね。


いろんな本読んでるなーとは思ってたけど」


レンがぼやく。


「リアルに持ち込むなよ!

じー様ぁー」


頭を抱えて、盛大に嘆いた。


「いっそアイツら競わせてみるかー、わははは。

……って感じで言ったんだろうぜ」


コウが早口でまくし立てる。


「あー、あの人ならやりそう」


「もう、おじい様ったら……」


レンとアヤコが顔を見合わせ、

そろって呆れたようにため息をついた。


「……それについては、

息子である僕からも謝るよ」


三人のやりとりに、

いたたまれなくなったのか。


冬獅郎さんが、

静かに頭を下げた。


一息ついたところで――


再び、

みんなの視線が

冬獅郎さんへ向けられる。


「そのせいで生じた諸々のことは、

すべて元凶である王に責任を取らせる。


大人こちらでなんとかするから、

子供あなたたちは安心しなさい”――と、

母……王妃が言っていたよ」


――有無を言わせない、

言い方だった。


そして――


冬獅郎さんは、

ふっと肩の力を抜いた。


「千聖ちゃん」


冬獅郎さんと透子さんが、

改めてアタシの方へ向き直る。


「たくさん怖い思いをさせて、

ごめんね」


「冬馬たちから聞いたわ。

本当に、ごめんなさい」


二人は、

深々と頭を下げた。


「……あ、いや。

た、大したことにはなってないし」


骨が折れたわけでもないし。


これくらい――

いつものことだし。


それに――


――俺は、

ちーちゃんを守れる王子様になりたいって、

思ってるんだから。


「……っ」


思い出した瞬間、

顔がかっと熱くなった。


――なんで、

今それ思い出すかな、アタシ。


思わず、視線を逸らした。


慌てふためくアタシを、

冬獅郎さんと透子さんが

不思議そうに見ていた。

「妖し王子と怪力姫」を読んでくださり、ありがとうございます。


昼食会のあとに聞かされた、

今回の騒動の発端と顛末。


え?

これって完全に、

王様のやらかしってことなの?


……でも、それにしては。

なにか裏があるような気がするのは、

アタシの気のせい――なのかな?


ともかく。

なんだかんだあったけど、

王族トリオとはこれからも上手くやっていけそう。


……よかったね、冬馬。


次回

『反証!相互共鳴』


3月21日 21時頃更新予定です。

※変更になる場合があります


更新をお楽しみに!

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