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チートゲーム戦記  作者: 如月いさみ


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3/8

貴方は誰だ?

 森野貞芽に勧められて4人が座れるテーブル席へと移動した。店の鍵もかけてという邦彦からすれば、話の内容も分かっているのではないかという念の入れ具合であった。


 邦彦は隣に広昭が座りコーヒーをそれぞれの前に置いて漸く彼女が正面に座った瞬間に唇を開いた。


「俺がしようとしている話を何故あなたが知っているんですか?」

 じっと見据えて告げた。


 森野貞芽はにこやかに大人の笑みを浮かべながら

「直球で来たね。クニくんはゲームじゃかなり思慮深いけどリアルでは違うのかな?」

 と言い

「まあいいわ。そうよ、君が来た理由は大方想像がついている。何を望んでいるのかもほぼ想定は出来ているわ」

 と告げた。


「首相一族に課せられた『戦争』という特殊設定を破壊したい。その為に私がその『戦争』でもチートできるかを知りに来た。それこそ何故? アースマザーに対して一介のおばさんが不正出来ると考えたのかしら」


 広昭は森野貞芽と邦彦を交互に見てヒタリと汗を浮かべた。もうすでに意味が分からない。というか、二人が喋っている言葉が宇宙語に聞こえる。


 広昭は手を前に出すと

「悪い、俺……全く意味がわからん」

 と告げた。


 邦彦は苦笑して

「ごめん、ちゃんと話す。それに森野さんに対しても筋は通す」

 と告げた。


「浅生、いま日本の政治を動かしているのはアースマザーシステムというAI政治システムなのは知っているのよな?」


 広昭は曖昧に頷いた。

 知識としては知っているがそれほど意識したことはない。いや、意識する必要がなかった。


 衣食住には困らないし働いて給料をもらい生活をする。それが普通に行われているからである。


 もし、100年以上生きていたとして違いを強く感じることがあるとすれば『選挙がない』ことくらいだろうか。


 広昭は邦彦を見つめ

「その、言われて認識する程度だけどな」

 と告げた。


 邦彦は笑むと

「それが普通なんだ」

 と言い

「だがアースマザーシステムが世界の政治を動かし始めた時の各国の首相一族にはある役目が課せられた」

 と告げた。


「それが『戦争』だ」


 広昭は目を瞬かせて

「は、はぁ……その戦争って何をするんだ? その銃を持って戦ったりするのか?」

 と返した。


 実体験がない上にアースマザーシステムが始まってから戦争は起きていないのだ。まして、その単語を耳にしたのは歴史という過去の勉強の時だけで現在にそんな事象が起きているとは想像もできなかったのだ。


 邦彦はチラリと森野貞芽を一瞥して

「人類が誕生してからAI政治システムが始まるまでの間に行われた戦争は大量の人々と生活空間……言わば地球自体が犠牲になる陣取り合戦だった。だけど今はその役目……つまり俺の藤原家や各国の政界の頂点にいる一族だけが行う陣取り合戦で形はタクティクスゲームだ」

 と告げた。


 広昭は目を見開くと

「た、タクティクスゲーム? それだけ? それで何で邦彦がそんな真剣になるんだ?」

 お前、ガチ勢って訳じゃないだろ? と付け加えた。


 それに森野貞芽は苦く笑むと

「勝利した時に得られるのは土地。所謂、境界線だね。その代わり負ければ参加した人間は死ぬことになる」

 と告げた。

「椅子と部屋に爆弾が仕掛けられていて軍隊の比率に合わせて生命残量が減り同時に仕掛けられた爆弾が一つずつ爆発して……ゼロになれば参加者のいる部屋ごと吹っ飛ぶというデスゲーム」


 参加の拒否権は無し。


 広昭は慌てて

「いやいやいや、俺、想像できない! 藤原、お前それに」

 と蒼褪めた。


 邦彦は頷いた。

「ああ、次の開戦から参加する」


 広昭は呆然と口を開いたまま邦彦を見つめた。

 足元に爆弾があるだけでも生きた心地がしないのに逃げ出すこともできないなんて、想像するだけでぞっとする。


「まさか、それで」


 邦彦は頷くと

「ああ、俺が死ねば次は兄。そして、最後は妹の優華だ。それを止めるには俺が世界征服するしかないと覚悟を決めた。だが国盗りタクティクスゲームだから戦術で勝つ自信があっても戦略で負ける可能性がある」

 と告げた。

「だから戦術での勝利を確実にするためにチートできる人間に力を借りようと思った」


 もう綺麗ごとでは済まない事態になっているんだ。


「俺が今日訪ねたのは『戦争』の根を完全に断ち切ること。その為に俺は世界征服をする。その為に教授にアースマザーシステムの『戦争』に不正を仕掛けてほしい」

 

 邦彦は頭を下げると

「俺が誓えるのは征服したとしても地球の境界線を無くすだけで生活している人々に手を加えるつもりはない」

 と告げた。

「それこそどの地域のどんな人々に対してもだ」


 森野貞芽は冷静に

「ここに私と自身の身の安全が入らないのは彼が状況を正確に理解しているからだね」

 と心で呟いた。


 安易でヒーローぶった人物なら

「何があっても貴方の身を守る」

 という言葉出るのだろうが、世界を掌握しているアースマザーシステムからそのシステムに不正を働こうとしている人間を守るなど自信過剰、烏滸がましいというモノだ。


 藤原邦彦は自分を過剰評価もしていないし、冷静に状況を見ることもできるということだ。


 森野貞芽が沈黙を守っているのに邦彦は息を吐き出すと

「それと教授は俺が思った通りにアースマザーシステムに精通しているし今のシステムの動きも知っていた。反対に俺が聞きたい……」


 貴方は誰だ?

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