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チートゲーム戦記  作者: 如月いさみ


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2/8

モリヤーテイ教授

 なにがあったんだ!? と浅生広昭は暫く目の前に立つ邦彦を見つめた。

 自分がちょっとサボってゲームをしようと誘っても「勉強しないと痛い目見るぞ」と窘める方だったのだ。


「熱あるか?」


 広昭に言われて邦彦は困ったように笑うと

「熱はないけど……教授のところへ行きたいんだ」

 と告げた。


 深い黒の瞳が僅かに伏せられ表情に濃い陰りが見受けられた。

 広昭はじっと3秒ほど見ると直ぐに立ち上がり

「わかった。その代わり事情聴くぞ」

 というとカバンを手に邦彦の肩を軽く叩いて歩き出した。


 教授、というのはゲーム廃人の広昭が師と仰ぐ森野貞芽という女性で別に大学の教授ではない。

 彼女の名前の読み方が『もりやてい(め)』と読めることからゲーム界隈で『教授』と呼ばれるようになったのだ。


 ゲームに精通し、チートにも詳しい。


 彼女のモットーは

「勝てば官軍よ。だって負けてばっかりじゃやる気萎えるでしょ? それにゲームだもん。ストレス溜めてどうすんのって話だわ。ただ他人に迷惑をかけるつもりはないからリザルト争いはしないの。ほぼソロ活。助けてほしい子だけ助けるかな?」

 ということらしい。


 邦彦は広昭と共に彼女が屯する店へと足を向けた。


 邦彦自身は不正が大嫌いである。そんなことをしてまでゲームで勝ちたいとも思わないし、不正をしても自分の力ではないのが余計分かるから素直に喜べないのだ。


 だから、彼女に近付きたくはなかった。


「けどもう四の五の言っている場合じゃない。俺が死ねば兄が、優華が犠牲になる。俺で食い止めなければ」


 森野貞芽が働いているのは二人が通う東都大学付属高校のある東都電鉄文京駅から東京へ向かって二駅ほど移動した秋葉原駅から徒歩15分ほど歩いた場所にあるゲーム専門の店舗が入っている雑居ビルの地下にあった。


『アースカルマ』という昭和を思わせる様相の地下喫茶である。


 邦彦は広昭と秋葉原の駅を出て多く行き交う人々を見ながら

「平日日中なのに人が多いよな。俺らと同じくらい学生もいるな」

 と告げた。


 授業はサボらない、がモットーの邦彦らしい言葉だと広昭は思いながら軽く邦彦の胸を手の甲で叩いた。


「今は俺らもだろ」


 邦彦は笑うと

「確かに」

 と答えた。


 広昭は見えてきた『アースカルマ』の入っているビルを目に

「しかし、今日は本当に何があったんだか」

 とぼやきながら邦彦を見た。


 授業をサボらない邦彦が突然朝からブッチをかまし。更にチート嫌いなのにチートを平気でしている教授と会いたいというし、広昭から見ればイレギュラーずくめであった。


 邦彦は明るい朝の陽光が遮られて仄暗い地下へと続く階段をコッコッコッと足音を響かせながら階段を降りて昭和レトロな木目模様の戸を押して広昭と共に入った。


 瞬間に薫り高いコーヒーの匂いが鼻をくすぐり先ほどは仄暗いと感じた光加減が落ち着いた様相を際立たせて落ち着いた空間を作り上げている。


「ここが森野貞芽の拠点か」


 邦彦はそう考えながら目の前の4つのテーブルから左手奥のカウンタ―へと視線を動かした。


 コーヒーを立てていたのは黒い髪を結い上げたスラリとした肢体の綺麗な30代くらいの女性であった。


 広昭は彼女の方へと足を進めると

「教授、前に教授嫌いの友達がいるって言ってただろ? 今日連れてきた」

 と笑いながら告げた。


 邦彦はゲッと慌てると

「浅生!」

 と走って言葉を止めさせた。


 これから力を借りたいのにその真っ正直なデスリ証言は止めてほしかった。


 女性は笑って

「いいの、いいの。だって、ちゃんと遊んでる子はチート嫌いで当然でしょ? おばさんにはきっついけどねー」

 と告げた。


「初めまして、森野貞芽よ。モリヤーテイ教授でやってるわ」


 邦彦は真っ直ぐ彼女を見ると

「俺は藤原邦彦。クニです」

 と答えて周囲を見回した。


 防犯カメラが付いているかどうかを気にしたのだ。

 防犯カメラは全てアースマザーシステムに管理されているのだ。下手に何か言えば自分は殺される。


 邦彦が周囲を見始めたのに広昭は不思議そうに

「どうした?」

 と聞いた。

「何かいるのか?」


 いやいや、幽霊でも見ているような言い方は止めてくれ。と邦彦は心で突っ込むと

「いや、別に」

 と告げた。


 それに森野貞芽は笑みを浮かべて

「防犯カメラならつけてないよ」

 と答え

「やっばい話をしに来たのかな? 藤原家次男の邦彦君」

 と告げた。

 

 邦彦はピクンと反応すると彼女を見据えた。


 森野貞芽は笑みを浮かべたまま

「先日、日本の首相になったんだよね?」

 とコーヒーのサーバーを止めると邦彦と広昭に

「そこに座って。今日はコーヒーをサービスするわ」

 とコーヒーを入れるとカウンターから出て店の前に準備中の札を立てた。


 広昭は邦彦を見ると

「は? へ? 日本の首相?? お前がか?」

 と茫然と告げた。


 邦彦は視線を一度落として直ぐに上げると

「ああ、その事で教授に会いたかったんだ」

 と告げた。

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