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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

トホホの忌太郎 -夜ガラスのなく頃に-

作者: 戯言士

『己』と『?』って、なんか似てませんか?

 幼き子どもというのは無邪気に非道なことをするものだ。

 実際にそれを体験した僕が言うんだから間違いない。


 あれは40年近く昔のこと。当時小学生だった僕と彼の間に事件は起きた。




「いったぁ~」


 後頭部の衝撃に後ろを振り向く。

 何が起きた?

 多分誰かに叩かれたのは間違いない気はするのだが、しかしそれが誰なのか判らない。

 周囲にはニヤニヤと笑う男子たち数名。

 きっとこいつらの誰かの仕業だ。

 でも、犯人を特定できない以上は僕の言い掛かりに過ぎないとされるわけで。


 ま、まあ、仕方ない。

 相手にしなけりゃそのうち興味も薄れるだろう。


 大人の対応と背を向けたところでまた一発。


 振り向けば再び周囲の笑い声。

 なんだよ、ドリフのコントのつもりかよ。

 僕は長介じゃないっての。

 裏でやってるひょうきん族にしろ何にしろ、ろくな番組をしないからこんなやつらが出てくるんだ。


 ──と、こうして腹を立てみたところで何かが変わるわけじゃない。

 でも、悔しいけど証拠はないんだよなぁ……。

 よし、ならば次こそはその場を押さえて文句を言ってやる。


 警戒しながら背を向ける。

 そして間を入れずに振り向く。


 こいつかぁ……。

 見れば距離を詰めた男子が変な体勢で固まっている。


「何の真似だよ?」


 怒りを抑え笑顔で問い掛ける。

 きっと僕の柳眉は震えていたことだろう。


「はあ? 何のことだよ?

 なあ? みんな、俺って何かしたか?」


「さあ、そんなこと言われても知らねえけどなぁ」


 彼の問い掛けにニヤニヤ笑いで答えるクラスメイトたち。


 くっそぉ……、こいつら正義や友情って言葉を知らないのかよ……。


 ならば次こそは決定的瞬間を取り押さえてやる。それならば誰も否定はできないだろ。


 震えながらあいつに背を向ける。

 だ~るまさんが、こ~ろん……だっ!


「あべしっ!」


 あいつの拳が顔面に直撃。

 にゃろう……。

 だがこれで誰も文句は言えないはずだ。


「何するんだよっ!

 さっきからいい加減にしろよっ!」


 思いっきり睨み付けて文句を言ってやる。

 これで正義はこっちにありだ。

 誰も否定はできないはず。


「はあ? そっちこそ何言ってんだよ?

 俺が何かしたっていう証拠でもあんの?

 いつ? 何時何分? 地球が何回回った時?

 そっちこそ言い掛かりもほどほどにしろっつ~んだよ、バ~カっ!」


 …………はあ?

 な、何をわけの解らないことを言ってるんだよ?

 いや、確かに物的証拠はないけれど、それでも現行犯だろ?


「そうだそうだっ。

 俺も見てたけどどこにも証拠はないぞぉ」


 あいつに同調するように僕を嘲笑うクラスメイトたち。

 


 ふっ……、なるほどね。

 そういえば武○鉄矢も言ってたもんな。「幾千万の言葉で以て話して解らぬやつがいる」って。

 そしてその解決法といえば──。


「……ああ、そうかよ。

 そんなら喰らえやっ。おらぁっ!」


 あいつへ目掛けて放つ頭突き一発。

 これが昭和の喧嘩ロックだっ!


「バ~カっ」


 あいつがひょいと体を躱す。

 そしてその先にあったのは校舎三階の窓。


「え? 嘘?

 ち、ちょっと、マジ?」




 そして現在、墓石の上で今日も憂鬱に溜息を吐く僕。

 やっぱり向いてないことはするもんじゃないか……。


 陰険卑劣なごっこ遊び。

 そんな洒落を理解できなかった僕に対する神様の天罰だったのだろう。


「アホ~」


 夜ガラスの鳴く声が闇に響く。

 カラスの勝手かよ……。

 夜は墓場で反省かい。

 じばくれいの歌でした。(笑)

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― 新着の感想 ―
これはひどい話だ どこも現実は同じか、私とかぶる しかしハッピーエンドに思えます
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