EP9.臨時休校とカレー(デート前の小さな怪獣を添えて)
??? 「8月投稿ってなんだっけ? 9月投稿さえ無いんだけど?
もう既に10月に入っていたー」
(ssaの余波が残ってます。あと音感無いので多分テンポ悪い)
この度も本作にご興味をお寄せ頂き、ありがとうございます! と作者の平成ヨーグルトです。
本エピソードでは、2度目の戦いを終えた蓮也達の休息が描かれます。そして秋秀には新たな出会いが…!
あと本編開始前に。投稿予定守れなくて、すみませんでしたぁ!
これからは出来ないことをカッコつけてやろうとしない、やれる時に手をつける、の2本立てでお送りします(オープニング終わった後の提供場面みたい)
それでは是非お楽しみください!
怪獣との戦闘を終え、秋秀、希美と合流した蓮也一行。少年とのハイタッチを交わし、全員で急いで学校に戻る。未だに興奮が冷めない生徒達にしれっと加わったおかげか、なんとか抜け出していたことを誤魔化すことが出来た。
そして燦々と輝く太陽が昇り、翌日。怪獣による学校周辺の被害が大きかったため、急遽休校になった。
そんな朝、ここ数日怪獣との戦闘を2回も経験した蓮也(とついでに色奈)を労うために、カレーを自宅で作る姫華。腰に手を当て、鼻唄を歌いながら鍋の中の具材を煮る。ルーを混ぜ込み、小鉢に少量のカレーを盛って味見をする。口にしたその味に満足した表情を浮かべる。
「うん、これだったら蓮也も喜んでくれるかな…」
普段人前では絶対に発しない、彼女の甘く優しい言葉がキッチンに静かに広がる。そんな彼女に声をかける人物が。
「あらあら、また蓮也君のためにカレーを作ってるの?」
「あ、お母さん!」
姫華が声のした方へ振り返ると、彼女の母親こと雀川 里奈がにこやかな表情を浮かべ、姫華が立っている。
「もう蓮也君の胃袋は掴めた頃かしらね?」
「は、恥ずかしいからやめてよ…!」
普段人前では大人しく、蓮也を冷たくあしらう姫華だが自分の親の前では本来の素面を見せる。
少し恥ずかしがっている姫華の横に立ち、洗い物の手伝いをし始める里奈だったが、ふと彼女の方に向き直ると、とある話題を持ちかける。
「そういえば、蓮也君の家に親戚の女の子が引っ越してきたんでしょ? しかも姫華達と同じクラスに転入してきたって聞いたわよ?」
「あ、うん…」
母親の言葉に、少し表情が曇る姫華。
「ねえねえ、その子のお名前教えて?」
母親からの質問に姫華は少しだけ視線を泳がせながら答える。
「えと…海咲、色奈、さん…」
「色奈、ちゃん…?」
里奈はその名を聞いた瞬間、目を見開いたまま、呆然とした表情を見せる。まるで何かに頭の中を埋め尽くされたかのような顔つきで。
「お母さん?」
姫華は珍しく固まっている里奈に声をかける。里奈はその声でハッと我に返ったかのような動きを見せ、再び姫華に笑顔を見せる。
「へー、色奈ちゃんね? いい名前じゃない! でもまさか、蓮也君に同い年の親戚がいたなんてねぇ…」
「あ、うん…」
本当は怪獣達との戦いに備えるための設定ではあるのだが、流石にそれを口にすることは出来ない。姫華は少し気まずそうな表情を浮かべながら、顔を背ける。
一方里奈は隣の蓮也の家がある方へ顔を向け、何か遠くを見つめるような顔を見せる。
出来上がったカレーがたっぷり入った鍋を両手に、隣の蓮也の家に向かう姫華。彼の家の前に到着すると、チャイムを鳴らそうとボタンに指を伸ばす。すると、その指がボタンに達する前に家の玄関のドアが勢いよく開かれた。
「この匂い…!」
「カレー!」
そこから蓮也と色奈が飛び出し、両手に鍋の姫華の前に駆け込んできて、目の前の鍋に釘付けになる。
「姫華! 頼む! もう食べさせてくれ!」
「はいはーい! 私も食べたい!」
熱いカレーコールが2人の口から出てくる光景を見て姫華は呆れながらもクスッと笑う。
「はいはい、食べたいのならまず家に入れさせて? じゃないと食べれないでしょ?」
それを聞き、彼らは頷きあうと玄関のドアを開け直し、両手が塞がっている姫華を先に家に入れさせて、その後自分達も家の中に入り、ドアを閉める。
「姫華早く!」
「ほら蓮也、そんなに急かさないで。まだ靴脱いでないんだから」
3人はリビングに向かい、四角いテーブルに鍋を乗せる。蓮也は皿を、色奈はスプーンを人数分を取りに食器棚に向かう。その間に姫華が鍋の蓋を取ると香ばしいスパイスの匂いが立ちこめ、食器棚から戻ってきた蓮也と色奈の食欲を刺激する。
「ああもう我慢出来ねぇ!」
「お腹空いちゃう!」
2人がそう言いながらテーブルにそれぞれ皿とスプーンを配膳する。そして色奈が蓮也の隣に座ろうとすると、姫華が咳払いをして注目を集める。
姫華は、こちらに視線を送る色奈を見つめながら口を開く。
「えーと、色奈さん…? その…このカレーを作ったのは私だから、えーと、その…」
姫華が珍しくどもりながら何かを言おうとすると、色奈は急にニヤケ出し、察したように言う。
「あー…ごめんね姫華? やっぱり自分の料理を食べてくれる人の隣に座りたいもんねー? 特に大切な人の隣には、ね?」
色奈の言葉に姫華は顔を赤くし、なんとか言葉を紡ごうとするも、うまく言葉に出来ない。そして彼女だけでなく蓮也も頭を抱え、色奈を睨みつける。
「色奈、変なこと言うなよ…」
「あはは! 2人とも顔真っ赤!」
「や、やめろって…!」
色奈は満足そうに頷くと2人の正面側に座る。一方顔の熱が引かない2人も、お互いをチラチラ見ながら隣同士で座る。
それを横目に、色奈は3人分のお皿にご飯を盛り、その上にカレーをかける。
3人の前にあるカレーライスは、食欲をそそる匂いを醸し出している。
「いただきます!」
「「い、いただきます…」」
色奈は元気に、蓮也と姫華は小さくなりながら手を合わせる。そしてスプーンで掬ったカレーを口に運び、味わうように咀嚼する。すると蓮也と色奈の目が輝き出す。
「くぅぅ…! やっぱり美味い!」
「んー! 最高!」
一方の姫華も、その味に満足そうに頷く。そしてカレーを掬う手が進む中、色奈はふと姫華に顔を向け、質問を投げかける。
「ねえ、もしかして姫華って今までもこうやって蓮也にカレーを作ってきたの?」
そんな色奈の質問に姫華は控えめに頷く。
「え、あ、そうだけど…」
「ふーん?」
色奈は並んで座る2人を交互に見て、うんうんと頷くと、
「随分と蓮也は胃袋を掴まれたみたいだねぇ? 将来のお嫁さんに!」
その瞬間、蓮也と姫華は激しく咳き込み出す。
「ごほっごほっ!」
「んっんぐ!」
色奈はそんな2人を見てニヤニヤが止まらなかった。
「えー? もしかして図星?」
2人の顔がさらに赤くなり、動揺が止まらない。
そんな中、少し息を整えた姫華は色奈を顔を見ながら、さっきの母親の様子を思い出した。まるで何か驚きを隠せていなかったその様子は疑問を呼ぶ。しかしそんな母親の様子とは対照的に、2人の様子に笑いが止まらない色奈。
そんな彼女を見て、いつの間にか疑問が消えていく。
蓮也の家では、温かいカレーに包まれた暖かく、そして少し気恥ずかしさが混じった空気が広がる。
一方、急遽学校が休校になったため、希美とデートを計画し、待ち合わせの場所に向かう秋秀。ラフな私服を纏い、弾む足取りで歩みを進める彼だったが、そんな彼の遥か頭上から小さな2つの何かが落ちてくる。
そうとも知らずに歩く秋秀の頭に、空からの物体がそれぞれ激突する。
「イッタ!? たく何だよ急に…んん?」
秋秀は頭に走った衝撃で後ろにひっくり返る。そして体を起こして頭を擦りながら、頭にぶつかりその場に落ちてた2つの物体を見る。
1つは機械のような何か。こちらに向いている面は、右側半分が黄色、左側半分が赤色の配色となっている。よく見ると、まるで2つの怪獣の顔を半分にしたものを継ぎはぎしたかのようなデザインとなっており、玩具のようにも見えなくない。
継ぎはぎされている開いた口のような部分の中央には、蒼い菱形の宝石のようなものが埋め込まれている。
もう一方の物体に秋秀が目を向ける。
赤いボディに尻尾のようなもの。白い突起が至る所から露出しているそれは、秋秀が見守る中、動物のようにムクッと起き上がり始めた。そしてこちらに方向を変えたそれを見て、秋秀は驚く。
「か、怪獣!?」
蒼き光を帯びているそれは、まさに2足歩行怪獣そのものだった。顔を見てみると、機械のようなアレの左半分のデザインと一致している。
赤いボディ、白き角、鋭い目、そして胸の部分にある蒼いクリスタル。
小型サイズの怪獣は秋秀を見つめ返した後、秋秀の元へトコトコと歩き出す。
驚きのあまり動くことさえ忘れてしまっている秋秀の足元までたどり着くと、その怪獣は何かを訴えるように鳴く。
「え、なんだなんだ?」
これまで出てきた2体の怪獣達よりも何倍もスケールダウンしたようなその動きに、恐怖心は生まれず、彼はどこか興味本意でその怪獣に顔を寄せる。
「んー、なんか言いたそうだけど…」
怪獣の鳴き声を聞き続け、ある発想に至る。
「あ! お腹空いてるのか?」
そう言うと彼は先程コンビニで買ったばかりのドーナツをバッグから取り出す。そしてそっと屈んで、手のひらを皿のようにしてその怪獣にいくつか差し出す。
すると怪獣はそれに飛びつき、ムシャムシャと喰らいつく。今まで見てきた怪獣達には無かった愛くるしい様子は彼を笑顔にする。少しして全て食べ切ったその怪獣は満足そうに唸ると、秋秀の足元をその小さな両手で押さえて頬擦りをする。
「おお…随分可愛いじゃねぇか」
そう言いながら怪獣を手に乗せて自分の目の前まで上げ、怪獣の体を指先でくすぐる。怪獣は嬉しそうに体を捩らせる。
その時、道に落ちていたもう一つの物体のクリスタルと、怪獣の胸のクリスタルが蒼く光りだした。秋秀がそれを見て思わず動きを止めると、怪獣は秋秀の手のひらから軽々と飛び降りて地面に着地し、もう一つの物体の元へ歩き出す。そしてそれの元へ辿り着くと秋秀の方へ振り返り、鳴き声を上げる。
秋秀も怪獣とそれに近づき、屈んでその機械のようなものに手を伸ばす。
指先がそれに触れた瞬間、彼に電撃のような衝撃が走り、あるイメージのようなものが突然彼の脳裏に浮かびあがる。
目の前にある機械のようなそれのクリスタルが輝く中、この怪獣が巨大化する光景。
そして彼の脳裏に届く、メッセージのようなもの。彼はそれを口にする。
「ディア…マイト…」
一瞬にしてそのイメージは霧が晴れるかの如く消えてしまった。秋秀はふと我に返ったが次の瞬間、目の前にあるそれのクリスタルが今度は真紅に輝き出し、それに呼応するように怪獣の全身が燃え上がるような紅に光りだす。そして全身を包む光がより一層輝きを増すと、光る球体のようなものに変化し、そのまま機械のクリスタルの中に吸収されてしまった。
「なんだこれ…」
目の前で繰り広げられた光景に、秋秀は唖然とするしかなかった。しかしあの怪獣のことが気になってしまい、たった今怪獣を吸い込んだ機械を拾いあげる。
「ディアマイト…それがお前の名前なのか?」
するとそれに応たえるようにクリスタルが一瞬輝き出す。
秋秀はしばらくそれを見つめた後、自分のバッグにそれを入れる。そして本来の目的である希美とのデートへと向かうため、待ち合わせ場所へ急いで走り出す。
「おーい、秋くーん! こっちこっち!」
待ち合わせの場所の近くまで来たところで、既に到着していた希美が両手を振りながら声をかける。秋秀はそんな彼女のところへ駆け寄る。
「ごめんごめん希美! 待たせちゃった?」
そんな彼の質問に、短い茶髪を靡かせながら希美は笑顔で答える。
「ぜーんぜんっ! さっき着いたばっかだし! ほらほら、今日も色んなとこいこ!」
「おう!」
2人は頷き合うと、手を繋いで歩き出す。お互いの暖かく穏やかな気持ちが、繋がれた手を通して伝わってくる。
それからしばらく、色々なところを巡った2人。
ーーお化け屋敷にて
「おじゃああああああああああああ!」
「ほぎゃああああああああああああ!」
ーーコスメショップにて
「これ、秋君に似合いそうな匂い!」
「それだったら希美には…これだなぁ!」
ーーアニメショップにて
「このキャラクターの髪型、すっごく可愛いよねぇ!」
「いやいや、希美だったらもっと可愛くなるって!」
2人でカフェで一息つく中、2人のスマホに振動と共に、とあるメッセージが送られて来た。
「ん、誰だ?」
秋秀がスマホを操作し、メッセージを確認する。一方の希美も届いたメッセージを確認すると、顔を輝かせて秋秀に声をかける。
「あー! グループラネに色ちゃんから写真が来てる! れんれんとぉ、姫ちゃんとぉ、色ちゃんとぉ、これは…カレー!」
「とんでもない奴ら」という名がつけられているグループラネ。蓮也、姫華、秋秀、希美、そしてつい最近加入したばかりの色奈の、計5人で構成されている。
色奈が発信したその写真には、カレーが入った鍋を囲む、蓮也と姫華と色奈の3人が写っている。色奈が満面の笑みを浮かべる一方で、蓮也と姫華は頬をほんのりと朱色に染めている。
相変わらずの2人と色奈の天真爛漫な姿に、秋秀と希美は口角が上がる。
「いやぁー、相変わらずお熱いねぇ」
希美はニヤニヤしながらスマホの画面を眺めている。
対面に座っている秋秀は、立ち上がって希美の隣に向かい、彼女の肩に手を回してスマホのカメラアプリを起動する。
「うし! こっちもなんか送ってやるか!」
カメラを内に向け、2人の顔にピントを合わせる。そして秋秀の掛け声で、
「よーし! はい…」
「「チーズ!」」
真上から注がれる日光に照らされた2人の満面の笑顔を、スマホのレンズが「パシャッ」と収めた。
改めまして本作をご覧頂き、ありがとうございます!
次回こそは今月中の投稿を予定しています!(戒めのブロンズ像)
また、皆さんのご感想なども心からお待ちしております! 皆さんからの評価やご感想のおかげで私は嬉しさのあまり、絶好調になりますので是非お願いします!
これからも「アクアブレイブ(幼馴染を添えて)」の応援、よろしくお願いします!




