人形
踊り場に
人形がおちていた
人々の行き来の狭間で
それは、うつくしかった
白粉のように
気管支に詰まるうつくしさだった
目はガラス玉のように、
子どもの好んだ、ザラメ糖のようにあり
だらりと降りた髪の毛が
油っぽく、希求の幻想世界をえがいていた
コツコツと
階段をあがる音がする
あれは耽美か、ロマンチシズムか
コツコツと
くだる音もする
それは不可解に、あきらかなガランを含んで
こうして
足したものをまた差し引かれて
初めの混沌にいたる人生ならば、
ここで、私は止めようと
人形の
その体を構成する、あらゆる無機物にあずかって、
私たちの
何回もの昇降でいたんだ足を
ここで癒そうと
人形の
ドレスの布地、一枚一枚からもただよう
あぶなさを
狂犬の如く
触れたら くるってしまう
夢と、血を
私はここで
吸入したいと