表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世紀末反抗期  作者: syi
13/15

第12話 嫌悪

 あの夢を見てから1週間が経ったが、それ以来、「声」は聞こえず、目にも異変は起きなかった。アーシィムとやらから届いた手紙の内容もイマイチ信憑性がない。確かに俺宛てだったが、人違いなんじゃないかと日に日に思う様になった。

「ちょっと散策でもするか…」

俺はベッドから起き上がり、リビングに行った。

 「あ!りっちゃん!」

「どうした、遥?」

遥はせわしない様子で俺に話しかけてきた。

「あ、あっのっねっ!」

「落ち着け…」

「無理ぃ!」

「何でだよ…」


 俺はとにかく遥について行った。拠点からしばらく歩き、穏やかに滝が流れ下る、自然豊かな森の奥深くに着いた。

「で、何だよ?遥?」

「あのね…」

遥らしくない、真面目な顔だった。俺はつい、固唾をのんだ。

「あのね、実は…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「「!?」」

突然、遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。森の中で反響してよく聞こえない…っ

隣にいる遥を見たら、遥の雰囲気が変わった。急に、俺らは悲鳴の元に転移した。

「た、助けてっ!」

一人の人が怨に襲われていた。この前に見た、哀感のような怨。しかし、なかなか攻撃せず、ただ、人を追いかけていただけだった。

「理解不能ー汝、言ノ葉とせよ」

俺はヤツに向かって、手を翳した。

「嫌ダァァァァ゙ァ゙ア゙!」

ヤツが幼子のように叫んだと同時に、天邪鬼がかき消された。俺は舌打ちをし、再び攻撃をしようとした。

「クッソ…ッ 理解不能ー其の時を…」

「効かないよぉ。「嫌悪」だもん」

脳天気なトーンで遥が言った。

「…嫌悪?」

「うん。嫌悪が拒絶したものは無効化しちゃうのぉ」

ヤツのことを知っているかのような口調。

「戦ったことあんのかよ…」

「まあねぇ、ボロ負けだったケド」

「…マジか…」

「だけどね?」 

遥が嫌悪の目の前に行き、俺を見つめ、小さく「見てて」と言った。

すると、一瞬で嫌悪が消えた。というより、ほどかれた。

「…」

俺は先ほど見た光景を信じられなかった。遥が何か違う、神々しい姿になり、一瞬で嫌悪を倒した。とても美しい所作で、残酷に。


 襲われていた人は?と思い、俺は我に返った。

「大丈夫ですか?」

その人は木の一番上に登って、震えていた。

「どうやって登ったんだよ…?大丈夫ですか!」

俺らが怨を倒したのだと知ると、静かに降りてきた。

「…すみません…」

深々と頭を下げた。俺と遥はすっかり困り果ててしまった。

「どうする?りっちゃん?」

「どうすると言われてもな…」

俺と遥はすっかり困り果ててしまった。

「仲間と巡回中にはぐれてしまって…」

その人、(マイクと言った)が更に申し訳無さそうに項垂れた。

「本当にありがとうございます」

そんな様子を見た遥が笑顔になった。

「仲間がいるんだったら良かった!次は襲われないようにね!ほら、あっちから君の名前を呼んでいる人が来ているし!」

確かに、大声で「マイク!」と呼ぶ声がだんだん近づいて来た。

その人は安心し、仲間の元へ駆けていった。

「本当にありがとうございました!」

「じゃあねぇ!」

遥は大きく手を振った。


 「さっきのって…?」

俺が聞こうとすると、途中で遮られた。

「近い内にプレギっちが来るから、そのときに。」

「…あぁ」

俺の見間違いかもしれないが、その時の遥の表情は、とても険しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ