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研修医になった直後にワンルーム投資の売り込みに遭った話

作者: Aihpos

 医師国家試験を合格してようやくなれる医師という職業。これに就いた人で言われたことがない人はいないであろう「不動産屋の勧誘には気をつけろ」、では実際どのような売り文句を使ってくるのでしょうか。実体験とともにお伝えします

【はじめに】

 こんな場末の怪文書を開いてくれてありがとうございます。本稿は散々注意喚起されながらも好奇心に負けて営業トークを体験してきた馬鹿(チャレンジャー)による体験談を数年後の今になって思い出しながら書き散らしたものです。結局筆者は脱出に成功しましたが……。いい勉強になりました、営業トークの。


【体験談】筆者の初のゴールデンウィークが犠牲になりました

 20xx年4月末、オリエンテーションも終わり、研修医としての業務が始まった頃のある日、仕事中に病棟から内線がかかってきて税金対策の話をされました。

・まず、住んでいるところの近くにあるレストランや喫茶店(筆者の場合、車で15分程度の距離にあるガ⚪︎トでした)で会う約束を取り付けられる

 税金の話が出た瞬間に切りましょう。相手も片っ端から電話かけるので時間はありません。業務上本当に必要な要件であれば再度かけ直すはずです。なお研修医一年目どころか一ヶ月目のペーペーに病棟からかけてくる用事はまずないはずです。そもそも当時の筆者は病棟患者の受け持ちもありませんでしたし、ましてや××科の病棟なんてこの時期にはそもそもご縁がないカリキュラムでした。

・支払う税金の額の高さや「節税」のお得感を説明してくる

 アポ電でも色々言われますが、いざ喫茶店にいっても散々教えてくれます。まあ相手の営業トークですが。ともあれ税金のお勉強のいい機会ではあります。中身は大体こんな内容です。

『医者は税金を支払われますね、だから税金対策としてマンションを買え』

※余談 :医者の平均収入から考えると(自営業の税金の補足率 :トーゴーサンやクロヨンなんて聞いたことがあるでしょう)ある意味一番税金が重い部類になりそうです。勤め人が達成できる収入のほぼ上限のようなエリアなので。

・具体的な物件の説明が始まる

 筆者が買わされそうになったのは、大阪の中心部近くの1Rマンションで価格はおよそ2200万円ぐらいでした。後で調べたところによると、なぜか大阪の物件が多いらしいです。東京出身者相手なら騙しやすいからなのか近畿圏出身者にも大阪の物件を売りつけに来るかは知りません。知りたくもないですね←

 大体の勧誘文句はこんな感じです。

「家賃でローンを払えるし、払ってもトントンから少々のプラスになるはずです」

「税金も返ってきますし、定年後も家賃収入が見込めます」

「団信(団体信用保険)に入るので、何かあっても大丈夫です」

「運営はうちが代行するのでセンセイはお金を受け取るだけです」

※余談 :団信ってなんぞや、の人は興味本位でも営業トークを聞きに行ってはいけません。相手は丸め込むプロです。一応蛇足ながら説明しておくと、ローンにかけておく生命保険のようなものです。ローン返済中に大黒柱を失った家庭が元の家に住み続けられているとしたら、大体これのおかげだと思ってくれれば十分です。筆者の体験した売り文句では、この保険の受け取り先を親にしておくことを勧められました。医学部に通わせるだけの教育資源を投下された自覚がある人向けのキラーワードなのでしょう。

・ワンルームマンションが「税金対策」になる理由の話

 大体の仕組みはこんな感じ、らしいです。

「賃貸経営によって得られた不動産所得は総合課税といい、給与所得と合算で課税」

「支出を伴わない減価償却費を計上することで不動産所得をマイナスにする」

「給与所得と合算することで、給与所得の額面が減るために税負担が軽くなる」

※余談 :減価償却ってなんぞや、の人は以下同文です。

 筆者はここまで聞いて「ちょっと考えさせてください、明日また聞きます」みたいな逃げ方をしました。後は着拒して終了です。次の日もいろんな電話番号からかかってきましたが全部無視です。


以上で体験談は終わりです。興味のある方次の項目をどうぞ。


【節税スキームの問題点】そんな美味い話はない。ましてや素人には持って行かない。

1.そもそもマンション(というか不動産)は買った瞬間に価値が何割か下がる

 特に新築だと3割程度下がります。買った(登記した)瞬間に中古扱いになって市場価格通り(逆にいえば新築にはそれだけ価格にバフがかかる)になります。すなわち、筆者の場合買った瞬間に500-600万円の損です。

2.家賃減少や空室リスク

 築年数が経つほど当然家賃は安くなりますし、空室であれば家賃収入は当然0です。言葉にすれば何を今更ですね。空室リスクについては不動産王がいくつも物件を買い漁れば他の部屋の収益で補填(というかリスク分散)、ということもできますが所詮イチ勤め人の収入じゃあ……。

3.管理費、修繕費、固定資産税

 これも定期でかかってきます。特に修繕費は、将来の老朽化に伴い必然的に上昇して行きます。であれば修繕費の安いうちに売り抜けて仕舞えばいいのですが、残念ながらたいていの場合ローンを組まされるので一気に損失を抱えるハメになるでしょう。

4.現金購入でない場合のローン金利負担

 上記でも軽く述べましたが、実際に35年でローンを組むと大体1.5倍程度の支払い総額になります。つまり購入価格の1.5倍程度の金銭を産んでくれなければただ単に節税ではなく赤字を垂れ流しているだけです。本末転倒ですね。


【まとめ】節税対策のマンション投資は甘くない

 金があると思われがちな上に不動産の知識に乏しい医者は、カモネギもいいところでしょう。ついでに塩にガスコンロに鍋まで背負っているかもしれません。興味本位で話を聞くのは止めませんが、相手は丸め込むプロです。筆者も色々と知っていたはずなのに引っかかりそうになりました。というかここまで書いておきながら、何か別のやり口で来られたら引っかからない自信は筆者にはありません。

 そもそも、そんなうまい話があるなら不動産会社が自分で銀行から借りて自分で運用した方が絶対儲かります。他人が絡みませんから。


(了)

もう二度とやりたくねえ←

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― 新着の感想 ―
未だにワンルームマンション買いませんかって有るんですね。 一度此の手の鷺まがいさん達によって酷い目見ましたが…… お医者様も大変ですね(^^ゞ
 不動産営業って50年経っても変わらんのだなぁ(しみじみ)  大学時代に教授が、高度成長期手前に借金して土地を買って、その土地を担保にアパート建てて、高度成長期になって地価がどんどん上がって、収入も上…
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