文字にひそんだ合言葉
夜勤明けの休日、眠りから覚めてダイニングに向かうと、箱が置いてある。
箱の近くには、一通の手紙が添えてあった。
『あいことばを入れてね』
文字から察するに妻からのメッセージカードだろう。
改めて箱を見る。
AからZの英文字と0から9の数字が並んでいた。
(こんなの簡単さ)
高をくくって、結婚記念日を入力してみる。
(あれ?)
箱を開けようとしたら、箱は閉じたままだった。
(ならほかの記念日かな)
プロポーズ、初めてのキス、初めてのプレゼント、デート、告白……
次は初めてハグした日を入れようとした手を止める。
(ベクトルを変えてみるか)
大きく息を吐いて、首を左右に振り、また大きく息を吐く。
英文字と数字を見て記念日だと思い込んでいた先入観を振り払う。
(何かの言葉、キーワードと思うんだよなあ)
どこかにヒントがあるはず、と家探しようとした足を止める。
(今はお昼寝の時間だからあまり物音を立てるのは、な)
ここに来る前に見た愛しの我が子たちの寝顔を思い出す。
胸が暖かくなるのを感じ、メッセージカードを手に取り、妻の真意を探る。
(ひょっとして――)
妻の性格を考え、よぎった言葉を箱に入力する。
カチリと音が鳴った。
(やっぱりか)
箱が開いたのを確認し、メッセージカードを机の上に置く。
そして、箱を開ける前に入力したあいことばにもう一度目を配ってみる。
『I LOVE YOU』




