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第三部:『地獄狼』決戦扁

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『ハハハハハッ! ヒハッ、ヒッ、ハーーーーーーーーッハッハッハァアアアアアーーーーーッッッ!』



 領民の戦意が最高潮に高まった時だ。

 不意に、虚空より笑い声が響き渡った。



『クハハハッ、オイオイオイオイオイッ最高じゃねェかッ! 聖女の治める地だってんだから、住んでる連中は坊主モドキの青ビョウタン共かと思いきやッ――クハァアアッ! 最高の狂信者(バーサーカー)共が揃い踏みじゃねェかよォオーーーーッ!』



 どこまでも絶頂の喜悦を滲ませた声。

 やがて――暗雲が立ち込めるように、広場の上空に闇の粒子が溢れ、一つの形を作り始めた。



「なっ、人型、に……?」


『よォ。嬢ちゃんがレイテ・ハンガリアでいいのかァ?』



 完全に収束する闇。ソレは黒正装(スーツ)の男となって、私の頭上に君臨した。

 鮮血を思わせるような赤髪を掻き上げ、男は裂けるように笑う。


 

『俺こそがザクス・ロア。テメェらの敵だ、よろしくなァ?』

 


 なっ――ザクスですって!? それって『地獄狼』総帥の!?

 

 男が名乗った瞬間、わたしが口を開くよりも先に、背後のヴァイスくんが「ザクス・ロア!」と叫んだ。



「貴様ァッ!」


『ンン? おっ――オイオイオイオイオイッ!? 誰かと思やぁヴァイス王子じゃねぇかよ! やっぱ生きてたのかよアンタッ! やったぜーーーーーッ!』



 睨み上げるヴァイスくん。その表情に普段のおだやかさなど一切なかった。



「ザクス・ロア……よくも我がストレイン王国を……!」



 相手は革命の実質的首謀者――王国を滅茶苦茶にした張本人なのだから当たり前か。

 されどザクス・ロアはどこ吹く風。まるで旧友とばったり会ったのかのように、親しげに『嬉しいなぁオイ!』と宣っていた。



『あぁ、本当に嬉しいぜ。――これでアンタと、もう一度殺し合えるんだからなァッ!』


「っ、この戦争狂いが……!」


『応ともよ。戦争、闘争、大好物だぜ』



 微笑みながら両手を広げ、謳うようにザクスは言う。



『人間が一ッ番輝く瞬間はいつだァ? それはッ、限界を超えた殺陣の瞬間だ!』



 狂気的熱が、男の瞳には宿っていた。

 暗黒の太陽がハンガリアの空に君臨していた。

 


『積み上げてきた修練をッ、経験をッ、秘めたる才を総動員して敵の命を塗り潰す最果て(ラスト)! その刹那にこそッ、相手の全てを観ることができる! 自分の総べてを魅せるコトが出来るッ! こんな生き甲斐を感じるこたァねぇだろッ!?』



 ――《《だから殺す》》。

 ザクスは全身全霊を持って、わたしたちにそう宣言した。



『ハァもったいねぇ。今、ここにいる俺は幻だ。配下の〝闇を操る異能(ギフト)〟により、影を見せているだけに過ぎない。そうじゃなけりゃァ……』



 ザクス・ロアが指を鳴らす。

 その瞬間、闇の粒子が再び溢れ、収束し――死に風纏いし五人の幻影が、彼の周囲に現れた。



戦友(コイツ)らと共に、テメェらをブチ殺してやったのになァ……!』



 ザクスの下に集う黒衣の戦士たち。

 

 ――野獣の如き顔付きをした青年。

 ――柔和な笑みを湛えた紳士。

 ――両目の潰れた白髪の老人。

 ――不自然なほど美しい少女。

 ――そして最後に、仮面の男。

 

 彼らこそが『五大狼』。いくつもの国を荒らしてきた、最恐の異能持ち(ギフトユーザー)たちか……!



「なっ――お爺、様……!?」


「あの若者は、まさかっ!?」



 彼らの出現に対し、わたしの背後で二人が呻いた。

 せっちゃんことセツナと、アシュレイだ。彼らは信じられないモノを見る目で、『五大狼』の青年と老人を見上げていた。



「二人とも、知り合いなの……?」


「っ、ハイ……でござる。あの目に傷のある男こそ、ランゴウ・ムラマサ。凶行を働き、逃亡した我が祖父でござる」



 最初に答えたのはセツナだ。

 ……なるほど。彼の青春を滅茶苦茶にした、因縁の祖父。それとこんなところで対峙するなんてね。



「アシュレイも?」


「ええ……あの最も年若い彼は、ヴァンピード。私が貧民街(スラム)で生きていた頃、世話していた者の一人です」



 ヴァンピード――ああ、たしかに前に言ってたわね。自分以外にも一人、異能(ギフト)を持った気弱な子供がいたと。

 だとしたら、なんて皮肉。それとも必然なのかしら。

 貧民の行きつく職など限られている。特に戦力、異能(ギフト)を有しているならば、『傭兵団』に属することなどほとんど当たり前だもの。



『その声は……さようか。其処に居るのだな、セツナよ』


『アァッ、兄貴ダァッ! アンタここにいたンだナァッ!』



 片や厳かな声で。片や理性の溶けたような声で。罪人(ケダモノ)たちは二人のことを見下ろした。

 

 そして――、



『儂が憎くば、斬りに来い……ッ!』


『アァァ――腑抜けちまったアンタなンて、オレァ見たくナカッタヨォォォオ……!』


 

 空間越しに、濃密極まる殺意を二人にぶつけた――!



『クハハハッ。いやぁまさか、アシュレイの裏切り野郎までいるとはねェ。燕尾服で働いてるとは、笑えるぜ』



 因縁がぶつかる中、餓狼はウチの執事を睨んだ。



『アシュレイ……どうだよ、今の気分は。裏切ったおまえをいつか《《殺させる》》ために、このヴァンピードは仲間に引き入れたんだぜェ?』


「ザクス、さん……アンタまさか、こいつを洗脳して……!」


『さてなァ。ま、せいぜい楽しく殺しあえや。ラン爺と因縁ありな剣士ちゃんも――もちろんそちらの褐色王子クンもなァ……!』



 次に、ザクス・ロアは視線をシャキールくんに向けた。

 

 だがシャキールくんは『地獄狼』総帥を一瞥するのみ。

 その何十倍もの憎悪を込め……奇妙な女を睥睨していた。

 


「少女の死肉を纏った男……貴様が、『おぞましきエルザフラン』か」


『あらあらあらぁっ、熱視線でワタシ様見られてるぅ~! 恋しちゃったのかにゃ?♡』


「抜かせッ!」



 身をくねらせる露出の激しい女――もとい男。エルザフランもまた、シャキールくんと視線を合わせた。

 小首をかしげているけど、間違いなく気付いているでしょうね。

 相手がラグタイム公国の王子で――死兵を操る自分を、心底恨んでいるのだと。



「一言だけ言う……後悔させてやるぞ、貴様」


『やぁんっ。こわい、こわい❤』



 エルザフランはどこまでもシャキールくんを小馬鹿にしていた。

 それからわざとらしくしな(・・)を作り、ザクス・ロアに抱き着いた。



『えぇ~んっ、総帥サマー! なんかアタシ様ッ、よくわからないイケメンに睨まれてるよぉ~! たすけてぇ~ん!』


『おうよかったなエリィ、殺されろや』


『クソ上司ッ!』



 適当な会話をする二人。

 ――だがその裏で、静かな地響きが聞こえ始めていた。無理やりに操られた十万の死兵が、着実に街に近づいているのだ。

 なんて冒涜。なんて残虐。部下を通し、その命令を下しながら抜けた様子で話せるというなら、あのザクス・ロアという男は、



「……認めてあげるわ、ザクス・ロア。アンタもかなりの極悪だとね」


『おぉ、聖女様に悪性を評価されるとは恐悦至極。……って、《《も》》? どゆこと……?』



 なぜか首を捻るザクス。あとなんか聖女がどーとか言ってたけど、いきなり知らない人の話すんなバーカ!



「ザクス・ロア!」


『!?』



 わたしをビッと指をさし、同レベルの悪人として宣言してやる!



「首を洗って待ってなさい! このレイテ様が……『極悪令嬢』サマが、アンタを一発ブン殴ってやるわぁ~~~!」



 極悪の座を賭けた極悪デュエルよ! ボコボコにしてやるシュッシュッシュ!



『お――俺様を、ブン殴る、だと……? 首を洗って、待っていろだと……?』



 呆然とするザクス。

 それからしばし、わたしの言葉をうわごとのように呟き、繰り返し――そして。



『クッ……ククヒャハハハヒィイイイイーーーーッ! おぉおおおおおもしれぇえええッ! この俺にッ! そんな口説き文句を言ったオンナはッ! テメェが初だぜレイテ・ハンガリアァアアーーーッ!』



 呵々大笑と、腰を逸らして笑い始めた。



『ヒヒハハハッ! おいおいおいッ! このザクス・ロア様が怖くねえのかよ? 臆さねえのかよォ!?』



 はぁ~? 何言ってんのコイツ?



「怖くはあるわよ。アンタはわたしが出会った中で一等の悪党よ」


『まァなァ』


「で、《《怖いからって臆したところでイイことあるの》》?」


『!?!?!?』



 ――わたしは知っている。

 六年前、わたしが領主となった頃のハンガリアは、荒れた領民に溢れていた。

 そんな連中を前にして、ブルブル震えて? それで相手が優しくなるか?

 ンなわけあるかボケ。



「感情なんて関係ないわよ。決めてるの。わたしが領主である限り、《《凛として外敵はブッ殺す》》と」


『《《見事》》――!』



 敵は可笑しくてたまらない様子だ。

 口角が上がりすぎて、いよいよ本当に裂ける寸前になっていた。

 まさに、大きすぎる獲物にかぶり付かんとする狼のように。



『アァアーーーッ本当にイイッ! イイぜアンタッ! 今日は最高の日だァッ! あのヴァイス・ストレインと再び会えただけじゃァなく、裏切り者のアシュレイに、秘奥の異能(ギフト)を持つというシャキールにッ、こんな最高にわけわからん女と出逢えちまったァッ!』


「誰がわけわからん女よッ!」



 ムキーッ! 失礼なやつめ!!!!!!!!

 石投げてやるわ!!! あっ、幻影だから透過しちゃった! あっあっ、そのまま地面に落ちて領民の一人に当たっちゃった!

 なんか「ありがとうございまぶッ!」とか言いながらダウンしちゃった!

 ただでさえ兵力差あるのに戦力マイナス1だあああああああああーーーーーーー!?



『ギャハハハハハッ!? なんだコイツゥウウウウウウウーーーッ!』


「うるせええええええーーーーーーー!」



 ああもう完全にキレたッ! ハラ抱えて笑うザクス・ロアにッ、中指を立ててやるッッッ! 死ね!



『おッ――俺様に、中指立てる女だと……!? アッ、アンタはどんだけ俺様のハジメテを更新しやがるんだレイテ・ハンガリアァーーーッ!』


「嬉しそうにするなザクス・ロア! ――アンタの部下共合わせて、宣言してやるわこの野郎ッ!」



 ざっ、と。わたしの横合いに並ぶ仲間たち。

 ヴァイスくん、アシュレイ、シャキールくん、せっちゃん、ケーネリッヒ、ついでにドクター。

 そして凶悪な領民共と共に、全員で宣戦布告してやる――!



「ブッ潰してやる『地獄狼』ッ! この極悪領地にケンカ売ったことをッ、後悔しやがれコンチクショォーーーッ!」




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レイテたん切れまくりぃ!
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