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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第二部:太陽の王子と魔獣の乱舞

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72:いってらっしゃい



「あっ、あれが全部魔物だって!?」

「何て数だぁーーー!?」

「女子供から避難させろっ!」



 雲海の如く迫る魔物の群れ。さらには駄目押しをするかのように、ひときわ巨大な影が群れを押しのけて顔を出した。


 かの存在こそ、数多の英雄譚で災厄の象徴とされる存在――!



『ガァアアアアアアアアーーーーーーーッ!』


「っ、暗黒龍(ドラゴン)ですって……!?」



 魔の最強種、漆黒の龍が現れたのだった。

 ……その威容に、領民たちのパニックは頂点に達した。何万もの悲鳴が一斉に響く。



「そん、な……!」



 わたしは思わず固まってしまった。わたしは為政者だ。この地の女王だ。ならば落ち着きを促すべきなのに、あまりにも事態が重大すぎる。



「魔物のことを……舐めていた……!」



 私財までも尽くし、徹底的に守護兵団を優遇した。彼らが戦ってくれるように。どうか逃げてくれないように。そうして大枚を人質に兵らを動かし、経験を積ませて、いつしか魔物の侵略をたやすく抑えられるようになった。領民たちは安心し、領の治安は一気によくなった。


 けど、



「そうよ……ここは、辺境の地……!」



 国境より魔物押し寄せる、死の大地であることを再確認させられた。



「――伝令ッ! 伝令ーーーーーッ!」



 とそこで。『魔の森』側を見張っていた兵が報告を飛ばしながら駆けてきた。



「地上からも数千匹の魔物が接近ッ! 各領民はただちに逃げたしッ!」



 ……泣きっ面に蜂とはまさにこのことだった。空と地上、合わせて万を超える魔物の強襲。それらを率いるは最恐最悪の巨大龍だ。領地の一つや二つなど、鎧袖一触に滅ぼせるだけの脅威が迫る。



「み……みんなっ……!」



 落ち着きなさい、という言葉が出ない。


 わたし自身が一番に動揺していたのだから。



「レイテ様っ、どうすれば!?」

「ご指示をォオオーーッ!」

「どこに逃げればいいのですかぁ!?」



 わたしをよそに人々は叫ぶ。それを責めることは出来ない。既に刻一刻と、魔の軍勢はこちらに押し寄せてきているのだから。それが余計に頭を混乱させていく。



「みんな、みんな……ッ!」



 そして、わたしが答えに詰まり、目の前が真っ白になりかけた――その時。



「者共よ、気を鎮めろ」



 静かな声が、強く響いた。


 同時にわたしは肩を抱かれる。



「っあ……!?」



 力強い手。男の人の、熱い体温。それに驚きながら横を見れば、そこには凛と領民たちを見据える、ヴァイスくんの姿が……!



「ヴァイスくん……っ!」


「ああ、俺だ」



 彼はわたしを見て頷いてくれた。安心させるように、「キミのヴァイスくんだ」ともう一度言って。



「すまんな、レイテ嬢。キミを一人にしてしまった」


「ううん……ううんっ……!」



 側にいてくれるだけで頼もしい。思わず涙が出そうになる……!



「レイテ嬢――そして領民たちよ。恐れることは何もない」



 彼の金色の瞳が輝く。続けて放たれる放射光。蒼白の光が街中に溢れ、わたしたちを温かく包んでくれた。言葉よりも雄弁に、〝お前たちを守る〟と伝えてくれているようだ。

 混乱の気配が一気に収まる。恐怖の叫びが感嘆に変わる。



「……魔物共よ。よくもこの地に、踏み込んでくれたな?」



 ――そして、殺意が吹き荒れた。


 わたしたちを包む優しさとはまるで違う、魔物共を刺す眼光と烈光。揚々とこちらに押し寄せんとしていた魔物たちが、一瞬止まった。迫る黒龍の強壮な顔に、明らかな怯えが走るのが見えた……!



「よくも、俺のレイテを泣かせてくれたな……?」



 凄絶な殺意が、さらに昂るのを感じた。何十体かの小型の魔物が空から墜ちた。――ショック死したのだ。彼らの最後の表情は引き攣っていた。



『ガッ――ガァアアアアアアアアアーーーーーーーーーーッッッ!』



 その時、巨大な黒龍が必死に吼えた。まるで恐怖を押し殺すように。〝恐れを与えるのはわれらのはずだ!〟と訴えるように、怒号を張り上げ、空より迫った。ついに虐殺の時が来る。


 が、しかし。ヴァイスくんはまるで一切の恐れもなく、わたしの髪を優しく撫でた。



「ヴァ、ヴァイスくん……?」


「いってくるよ」


「っ!」



 彼は、微笑んでいた。そしてわたしの言葉を待っていた。心が繋がったようにそれがわかった。



「もう、ヴァイスくんってば……」



 柄にもないことを要求してくれるんだから……。


 だけど嫌な気は全然しない。ああ、そうね。



「望むところなんだからっ」



 わたしは涙を拭い飛ばすと、精いっぱいの笑顔を浮かべて、彼の期待に全力で応える――!



「いってらっしゃいっ! 早く帰ってきてねっ!」


「ッ、ああ!」



 その言葉に――両親が亡くなって以来、一度も言わなかったかもしれない言葉に――ヴァイスくんは笑顔で頷いてくれると、剣の柄を手に地を蹴った。


 瞬間、轟音と共に彼が消える。舞う瓦礫だけがその場にたなびく。なんとヴァイスくんは一瞬にして、迫る黒龍と魔物共の前へと翔けていた!




『グガァアアアアッ!?』


「フフ……あぁ、こんなに身体が軽いのは初めてだ……!」



 わたしたちが呆然と見上げる中、天を舞った王子は鞘を握り、蒼白の極光を一気に収束させた。



「殺してやるぞ、お前たち。俺には待っている人がいるのだから……!」



 そして降り注ぐ燐光と共に、彼の叫びが領地に轟く――!



「〝ストレイン流異能剣術〟奥義――『抜刀・斬煌一閃』ッ!」



 天を焼き尽くす極大の斬光。音速すら超える抜刀の下、龍と数千の魔を消滅させる大爆発を起こしたのだった……!


小国くらい軽く滅ぼせる暗黒龍さん(1話で死亡)「えぇ……」


ここまでありがとうございました!

↓『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』

と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に


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[一言] 生き残った魔物達『これからはヴァイス様が我らの主です。』 ヴァイス「俺が主というなら俺の主はレイテだからお前達魔物はレイテの所有物としてレイテの命令に従え!」 生き残った魔物達『仰せのま…
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