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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第二部:太陽の王子と魔獣の乱舞

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63:幸福の忠誠/破滅の予兆





 お昼時。ある程度の仕事を片したわたしは、街の様子を見に行くことにした。


 領民どもが反逆を計画してないか目を光らせないとだからね。



「ほら、行くわよアシュレイ」


「はいお嬢様ァ~~ッ!」


「元気ね~」



 なお護衛は変態眼鏡な模様。


 仕方ないわね。ヴァイスくんもせっちゃんも建築作業中だし。



「アシュレイと二人きりとか、なんだか昔みたいねぇ」


「そうですね。街の様子はずいぶんと変わりましたが」



 語らいながら雑踏に出る。わたしが現れた瞬間、道行く民衆どもは『ご機嫌麗しゅうレイテ様!』と言い、ザッと道を空けてくれた。


 うふふふ。よきにはからえだわ。みんなわたしを怖がってるわね!



「六年前とは大違いですね。あの時はほとんど貧民街(スラム)紛いでしたので」


「失礼な……とは言えないわね。元貧民街(スラム)住民のアンタが言うんだから、そうなんでしょうね。実際酷かったし」



 六年前。わたしが領主になった頃の治安は最悪だったわ。ちょっと人目の外れたところを歩けば、悪い奴らに金欲しさで追い回されたり。


 そこで偶然拾ったアシュレイが役立ってくれたわ。



「すごかったわねアンタ。襲ってくる悪のチンピラを千切っては投げ、悪のチンピラから悪のリーダーを聞いたら千切っては投げ、悪のリーダーから悪のボスを聞いたら千切っては投げ、悪のボスから悪の黒幕を聞いたら千切っては投げて。それでハンガリア領の裏社会を支配しちゃってさ」


「いやぁ、あの時は若かったですね~」


「当時はビックリしたわよ」



 その上、実はつよつよ異能(ギフト)まで隠してたんだから二度ビックリだわ。傭兵結社『地獄狼』の大幹部と知ったら納得の強さね。



「ふふ。わたしってばいい拾い物をしちゃったわね」


「ええ、私めも拾われて光栄でございます。……住んでいた貧民街(スラム)の者らも、幸福な居場所を見つけていたらよいのですが……」



 アシュレイはどこか遠い目をした。そういえばコイツの過去、あんまり聞いたことないわね。



「ねえアシュレイ、貧民街(スラム)では仲間とかいたわけ?」


「えぇもちろん。私は強かったので、大勢手下がいましたよ。よくみんなで抗争したものです」



 抗争て。過激な青春時代ねぇ……。



「兄貴分として、庇護している子たちもいましたよ。たとえばヴァンピードという少年がいたのですが、彼ってばギフト持ちなのに気が弱くて……」



 と、執事が語り始めた時だ。「アシュレイの旦那~!」と胴間声が響いた。



「見てってくださいよ旦那ぁ!」

「本日は林檎(りんご)が甘いですぜぇ~!?」

「レイテ様と一緒にお立ち寄りをー!」



 やたらガラの悪い商売人たちに声を掛けられた。ああ、彼らってばアレね。



「アシュレイがぶっ飛ばした、元裏社会の連中ね」


「ヤツらか……。おいっ、私を旦那と呼ぶな! 今の私は不良ではなく品行方正な執事であってだな」


「「「すいやせん旦那ァ~!」」」


「ぶっ飛ばすぞ貴様らッ!?」



 暴力で脅す『品行方正な執事さん』。あーおもしろ。



「まったくアイツらは……」


「あはっ。あれから彼ら、アシュレイに『真面目に働け』って脅されて、今や立派に果物屋さんしてるのよね~」



 楽しそうに働いてて何よりだわ。頑張ってレイテ様に税を納めることね。



「ふふふ。やっぱり人を従えるには恐怖が必要ってことね。これからも悪の執事として頼むわよ、アシュレイ?」


「は、大変ありがたいお言葉。……しかし一つだけ訂正を」



 あらなによ?



「私の力添えなど些細なこと。ハンガリア領が平和になったのは、全てレイテお嬢様のご成果にございます」



 あらあらあらっ!?



「そんなにわたし、恐怖の女王様ってことかしらぁ!? くぅ~極悪~!」


「フフッ、そうですね」



 おーーほっほ! アシュレイの言葉ですっかり機嫌がよくなったわぁ!


 ほれそこの果物屋さんっ、美味しい林檎を女王様によこしなさぁ~い!



「アシュレイには別の果物を買ってあげるわ。それでお互いのを半分こしましょうよ。悪のシェアよ」


「悪のシェアでございますか」



 そう、二つずつ買わずに一つずつ買うの。領主なのにずるいことしちゃったわ! 極悪ね!



「アシュレイーどれがいい?」


「さてどうしましょうか。なんとも腹がいっぱいな思いでして」



 微笑みながら、彼は言う。



「私は、世界一幸せな執事でございます」




 ◆ ◇ ◆



 ――一方、その頃。



「ぐぅぅぅぅっぅううッ、おのれ! レイテ・ハンガリアめぇーーーッ!」



 屋敷に響く男の怒声。


 隣領・オーブライト領にて、領主ブルリックは憤っていた。金杯のワインを喰らうように飲み干し、「次を持ってこい!」と空になった入れ物を老執事に投げつける。



「ぐっ……旦那様。そのような飲み方はお身体に……」


「黙れセバスチャンッ! 貴様、平民の分際で吾輩に逆らうか!? よもや貴様も、吾輩のことを笑っておるのかぁ!?」


「めっ、滅相もございません! すぐに次をご用意いたします!」



 逃げるように去る老執事。その痩せた背中に「クソッ!」と悪態を吐きながら、ブルリックは豪奢なソファに深くもたれた。



「おのれ、レイテめ。あの一件のせいで……吾輩は……この領地は……!」



 ――約一週間前に行った、ハンガリア領への悪逆。その事実はたちまち領地中に広がった。


 己が子供を使った、技術の強奪未遂。

 対するレイテは十六歳の少女で、しかも親類。

 さらに相手は辺境伯。国境から迫る魔物と対峙する、国防の立場。そんな相手への妨害工作。


 どれか一つとっても最低最悪である。


 結果、ブルリック・オーブライトは支持を喪失。


 そこにレイテの放った『移民優遇宣言』が見事に当たり、オーブライト領より一気に人が流出したのだった。



「クソックソッ!」



 しかし。



「全てあの女のせいだッ! あの女さえいなければ、こうはならなかったのだッ!」



 ブルリックは一切、反省などしていなかった。



「わからせてやるッ。わからせてやるッ。わからせてやるッ!」



 彼は自分を被害者とすら思っていた。


 息子・ケーネリッヒを使って悪事を働かんとした時と同じだ。


 六年前、危険極まるハンガリア領の管理を(いと)い、当時十歳のレイテに投げ渡したというのに、異例の大発展を遂げてからは〝あの娘にチャンスを掠め取られた〟と思う始末。自己を完全に正当化していた。


 今の自分はさながら、〝領民も家族も奪い取られた哀れな男〟と思い込んでいるところか。



「どうにか復讐してやらねば。しかしどうすれば……」



 レイテを排除し、叶うならハンガリア領の支配権さえ手に入れる策。ソレを為すには何をすればとブルリックは考える。考える。



「正しいのは吾輩だ……このブルリックこそが隣領の正当後継者だと、国の重職者に訴えれば勝てるはずだ。渋られたなら、賄賂を約束すればいい。ハンガリア領を奪った暁には、かの地の財貨を分けてしんぜると。だがここは所詮田舎……重職者とのパイプなど……」



 ブルリックは考え続けた。途中、ワインを持ってきた老執事を「遅い!」と殴打し、ひたすらに思考を続けた。


 ――そして。



「ああ、そうだ」



 一週間ほど前の出来事を思い出した。


 レイテ・ハンガリアに寄り添い、屋敷を破壊してくれた黒髪金眼の美丈夫。


 あの男は――革命に散った王子、〝ヴァイス・ストレイン〟にそっくりではなかったか?


 さらには、進撃してきたハンガリア領民の中には、侵略に散った王子〝シャキール・ラグタイム〟似の男もいなかっただろうか?



「まさか生きて……いや、それはない。両者とも、政府が死を公表したからな。だが……ククククッ」



 ブルリックは最高の策を思い付いた。雑多な平民では出来ぬ策を。




「貴族界に噂を流してやるのだ。〝ヴァイスとシャキールは実は生きていて、レイテ・ハンガリアに匿われている〟と!」



 これはイイと彼は自賛した。


 市井(しせい)に広がった噂ならば、国は動かないだろう。俗な兵民共の囁きごとにいちいち対処はしていられないからだ。


 だがしかし。貴族界に広がった噂ならば別だ。さしもの王宮も真偽を確かめねばならない。


 そうなれば。



「来るぞ。ハンガリア領に! 我が領を経由するカタチで、政府の重役らが来るぞっ!」



 高笑いするブルリック。嘘だろうが構わない。〝自分も噂で聞いた〟という(てい)にすればいいだけだ。要は高官と繋がりを持てればいいだけなのだから。



「こんな安い嘘で復讐できるなら御の字だ! ワーーーハッハッハッハ!」



 親類たるレイテを平気で貶めんとするブルリック。血の繋がりを裏切る負い目など、一切なかった。


 なお――彼は知らなかった。


 その安い嘘というのが、真実であることを。


 そして。




「たしか、新たな将軍として『ザクス・ロア』なる男が迎え入れられたのだったか。所詮は金好きな傭兵と聞く。彼に近しい者が来てくれたなら、賄賂でたやすくパイプを作れるのだが……」



 ブルリックは、知らなければならなかった。


 国家を実質的に支配している『傭兵王』ザクス・ロア。


 彼が――裏切りだけは、絶対に許せないタチであることを。


ここまでありがとうございました!

↓『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』

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― 新着の感想 ―
[一言] 無駄に鋭い!? ここまで腐ってるとは思わなかったブルリック。レイテ様パワーをみても改心しないならもう諦めよう。こいつは更生できない。 はぁ…レイテ様と執事のあれこれもっと聞きたかったのに…日…
[気になる点] ん?新たなフラグですかな?
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