59:幼馴染の覚悟
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というわけで、
「よく来たわねぇケーネリッヒ! ここがわたしの領主邸よぉ!」
「いや、たまに来るから珍しくは……」
「このクソガキッ!」
ケーネリッヒを保護してあげたわ。
このレイテ様の慈悲にむせび泣くことね~~~。
「身内には優しいレイテ様なのよ。わたしと親戚でよかったわねー?」
「……ああ。色々と言いたいこともあるが、お前には感謝しかない。このケーネリッヒ、心からの礼を示そう」
と言って片膝を突くクソガキさん。
……ふんっ、慣れない真似してんじゃないわよ。
「母上のことを保護してくれたのは本当に有難い。……父との生活で、だいぶ憔悴していたからな」
こいつのお母様は別館で静養させている。
病んでいる様子だったけどまぁ大丈夫でしょ。
「世話役にメイドを山ほど付けておいたわ。ウチのメイドは未亡人を主に雇ってるから、苦労者同士、いい相談相手になってくれるでしょ」
「そうか。お前には感謝してもし足りないな……」
「だーかーらっ」
わたしはクソガキの脛を蹴ってやった! 極悪令嬢キック!
「いだっ!? 何をするんだレイテッ!?」
「アンタも辛気臭い顔してんじゃないわよ! さっさと生意気に戻りなさいっ」
これじゃ調子が狂うっての。ケーネリッヒといえばいつもピーピー喚いてないと。
「もしかしてお腹空いてるの? クッキーあげよっか? わたし、ドレスの袖の中に入れてるから」
「湿気るだろそれ……。別に腹は減ってない」
じゃあなんで暗いのよ。
「今回の件……全ては俺が、父上に怯え竦んだことで起きてしまったんだ。それが情けなくて恥ずかしいんだよっ」
クソガキさんは顔を背けながら吐き捨てた。
なんか目元が赤くなってるけど……まぁ見て見ぬふりしてあげるレイテ様よ。
「お前の領地から技術を奪って来いと言われたとき。あそこで男らしく断ればよかったんだ」
「そしたらお母様を折檻されちゃうんでしょ?」
「そうなる前に俺が父上をボコしてやればいいッ! ……それが出来ずにいつまでも怯えた結果が、コレだ。全部お前に解決されてしまった」
加えて、と涙目で彼は続ける。
「オーブライト領民を、大量に奪われることになってしまった……!」
ケーネリッヒは領地に続く丘を見た。
そこにはこちらに向かって歩く、数多くの一団が。
オーブライト領民たちだ。数百、あるいは数千にも及ぶ者たちが、わたしの転居者優遇宣言を聞いたことで、即日の引っ越しを決めてしまったのだ。
「アンタには辛い光景ね。たぶん、明日にはもっと多くの人間が来るわ」
「……自業自得だよ。オーブライト領は、領民に優しいとは言えなかったからなぁ……」
「そうね」
――ふと、別館に向かう途中のメイドを見かけた。
「あぁっ、これはレイテ様!」
わたしへの明るい笑み。お金欲しさで媚びてるだけだろうけどすごく明るい。
それに対し、
「っ…………それと……ケーネリッヒ坊ちゃま…………」
ケーネリッヒを見た瞬間に彼女の顔が曇った。その反応にケーネリッヒが怪訝とする。
「な、なんだメイドよ。俺が何かしたのか?」
「……いえ、坊ちゃまは何も。ただ私の夫が魔物との戦いで死亡した際、ご領主様は何の補償もしてくださいませんでしたね」
「なッ!?」
少し懐かしい。ヴァイスくんに領地紹介をしている時、そういう経緯でウチに逃げてきた彼女を拾ったんだったわね。
「確かに夫は魔物に直接殺されたんじゃありません。その後の感染症によるものです。ですがアナタのお父様は無慈悲に、〝予後が悪いせいだ、自己責任だ〟と……!」
「そこまでにしてあげなさい。ケーネリッヒに罪はないわ」
「っ、失礼しました……! それでは」
足早に去っていくメイド。そんな彼女の背中を前に、ついにケーネリッヒの目から涙がこぼれ落ちた。
「くそっ……そりゃあ、故郷に愛想を尽かすわけだ……!」
「責任感じてるわけ? アンタは所詮、次期当主。悪いのは現当主のブルリックでしょ?」
「それでもだ。所詮、次期当主の身であろうとも、もっと出来ることがあったはずなんだ」
あぁそう。それは責任感のお強いことね。
わたしなんてテキトーに領民いじめて遊んでるのに。
「で、どうすんの?」
「決まっている」
幼馴染は涙を拭いた。そして去りゆくメイドの背中や、丘の向こうより領地を捨ててやってくる者らを見て言う。
「レイテ。俺は、強くなるぞ。いっぱい修行していっぱい勉強して、誰よりも強い男になって、この世で最高の領主になってやるんだ」
「ふぅん、わたしよりも?」
「当り前だ。そして……最高の土地を作り上げて、お前に奪われた領民たちを返してもらうんだっ!」
ずびしっ、と指をさされて宣言された。
生意気なヤツ。でも、いいじゃない。ウジウジしてるより億倍マシよ。
「調子が戻ってきたようね。いいわぁケーネリッヒ、その勝負受けてあげるっ!」
「ああ! ……そ、そしてレイテよ。俺が勝った暁には、そ、その、嫁に……」
「んん?」
と、彼が何やら言おうとした時だ。物陰より、「感動的ですねぇ……!」と涙ぐむ声が。
この声は……。
「なに見てんのよ、アシュレイ」
「はっ、気付かれてしまいましたかッ!」
ウチの変態眼鏡執事ね。なんでハンカチ片手にぐずぐずしてるのよ。
「なによその涙」
「いやぁ、私こういう展開に弱くって……!」
「こういう展開?」
「ちっちゃい子たちの友情物語です」
ってッ、
「「ちっちゃい子じゃなーーーいッ!」」
思わずそう叫ぶ、十六歳のわたしとケーネリッヒ(※身長150cm以下)だった……!




