57:続ッ、ブチキレレイテちゃんwithハンガリア領民!
――技術を盗みに入ったケーネリッヒ。処刑寸前で、彼は謝罪と共に告白した。全ては、誰かに命じられてやったことだと。
「改めて……すまない。言うことを聞かなければ、母上が折檻を受けてしまうのだ。愚かに育てたお前の罪だと言われて」
「ふぅん」
それだけで、命じた誰かは絞られてくるわね。
「まぁおかしいとは思ってたわよ。ケーネリッヒ、アンタはクソガキさんだけど」
「クソガキ言うなっ!」
「でも悪いことをするクソガキさんじゃないでしょ。アナタには、貴族としての尊厳があるもの」
「っ……!」
ちなみにレイテ様にはあんまりないかも~~。
どーーーせ中央政権から離れた地だしね~。よそと絡みもロクにないから、格式張っても仕方ないわよ。
「で、ケーネリッヒ。アナタにコソ泥の真似事をさせたのは誰? アナタの口から、明確に言いなさい」
「そ、それは」
「早く言え」
……わたし、まだまだ怒ってるんだからね?
「言い方を変えるわ。お前に、貴族としての尊厳を捨てさせる真似させたのは誰?」
「ッ……!」
瞳を揺らすケーネリッヒ。やがて彼は、吐き出すように告白した。
「父様、だ」
「なんですって?」
「我がオーブライト家当主、『ブルリック・オーブライト』の命令なんだ……!」
ほーーーん。
「潰すか」
「!?!?!?」
◆ ◇ ◆
オーブライト領にて。
「さて、愚息は上手くやっておるか」
領主ブルリックは、豪奢なる屋敷のバルコニーより外を見ていた。
老眼で睨むのは西の方角。憎きハンガリア領のある方である。
「みておれ、レイテ・ハンガリアめ……!」
かの地の小癪な少女領主を思い出し、チッ、と舌を打つ。
「魔石加工に石油加工だったか。やれ新技術だので荒稼ぎしておるようだが、所詮はたまたま優秀な人材が集まっただけのこと。あやつ自身は単なる小娘に過ぎんだろうが」
ゆえに評価する気などさらさらない。
ハンガリア領は本来、国の外縁部に位置する辺境地。魔物蔓延る『未開領域』に面した、恐ろしい場所のはずなのだ。
それを十代もなりたての小娘が継いだとなれば、即座に荒れ果てるのが関の山だったろうに。それなのに、
「運だけで成り上がりおって……! その鼻っ柱に鉄槌をくれてやるわっ」
思い上がった小娘への天誅――そのような名目で、ブルリックは息子へと〝ハンガリア領の技術を盗んで来い〟と命じたのだった。
罪悪感など一切ない。むしろ彼は信じていた。自分ならば、新技術を用いてより豊かな結果が出せるはずだと。
「さて、愚息が戻るまで茶でも」
と、その時だった。見やっていたハンガリア領の方角より、土煙が見え始めたのは。
「む、なんだ? 砂嵐か?」
この付近は草原のはずだが。と、訝しげに目を細めるブルリック。
その選択は正解だった。
「むっ」
目を逸らさなかった、それゆえに。
「むむっ……!?」
その砂埃が、迫りくる大軍勢の『進撃』によるものと気付けたのだから。
「なッ――あれはなんだぁあああーーーッ!?」
「だっ、旦那様ッ!」
混乱と同時に開かれる扉。疲れ顔の板についた老執事が、血相を変えて飛び込んできた。
「こ、こんなときにどうしたぁ!?」
「宣戦布告ですッ! ただいまレイテ・ハンガリア様が、宣戦布告の文を持って直接参上なさいましたッ!」
「なにぃっ!?」
瞬間、ズガァアアアアアーーーーーーーンッ! という大破壊音が屋敷に響く。
「うわぁああ!?」
たまらず身を伏せるブルリック。そんな彼の下へと、少女は優雅に現れる。
「門前で十秒も待たされるものだから、つい壊してきちゃったわ」
「き、貴様はっ!?」
「ごきげんよう、ブルリック」
銀髪黒衣の幼き令嬢、レイテ・ハンガリア。
美丈夫と異人の剣士を伴い、ブルリックの前へと君臨した。
「せっ、迫りくる軍勢は、貴様の手勢かっ!? よよ、よくも吾輩にこんなっ」
「黙れ」
ボギャッ、と拉げた音が鳴る。
ブルリックは遅れて気付いた。それはレイテのヒールによって、自分の手の甲が踏み折られた音だと。
次瞬、奔る激痛に絶叫が溢れた。
「あッ、あぐああああああああぁああああーーーーッ!?」
「子爵風情が囀るな。わたしは、レイテ・ハンガリア辺境伯だぞ」
「なっ、なぁあぁああ……!?」
混乱、怒り、痛み、そして……恐怖。
それらによって回らなくなるブルリックの舌。止まらない冷や汗。
ああ、これは悪夢かと、衝撃的な現実に固まっていた時だ。彼の意識を引き戻すように、バルコニーの外より怒号が響いた。
「あ、ああぁあぁああ……!?」
首だけでそちらを見れば、遠目にも怒気に染まった十万以上のハンガリア領民が、兵を蹴散らして侵入してくる様が。
「よくも我らの地に手を出したなぁあああああーーーーーーーーッ!?」
「聖地を汚した大罪人がぁあああああーーーーーッッッ!!!」
「ハンガリア領の怨敵めッ! それも子供を使うような外道めッ、死ねぇえええええ!!!」
明らかに異様な光景だった。
屈強の兵士の群れ、ならわかる。だが進撃してきた者らの大半は、どこにでもいるような小男に女、さらには子供まで交ざっていた。
だというのに溢れる殺意だけは本物だ。
まるで縄張りを荒らされた獣のように。あるいは、最後のパンのひとかけらを狙われた飢餓者のように。
『殺してやるゥウウゥッゥウゥウウウウウウウウウウウウウゥウゥゥゥウウウウウウウウッッッ!!!』
全員が、脳髄の沸騰するような赫怒を燃やして進撃していた。
「――やってしまいましたな、ブルリック卿」
「あぁ……?」
呆然とする彼の前に、眼鏡をかけた燕尾服の美男子・アシュレイが現れた。
レイテの側に恭しく立ち、くすりと笑う。
「ハンガリア領は不毛の地。それこそ、アナタが相続を嫌い、十歳そこらのお嬢様に押し付けるような場所でしたねぇ?」
「そっ、それはっ」
「言い訳は結構。そのような地です。当然、領民は居場所のない流れ者ばかり。噂では『地獄狼』から脱走してきた危険人物までいるとか」
「ひぃっ!?」
「なのに」
と、彼はレイテを見やり、
「我らがレイテお嬢様は、そんな不毛の地を立て直し、居場所なき者らにヒトとしての尊厳を取り戻させたのです。なのに、ああ、そのような者らの地から、技術を奪う? それも弱者を利用する? あぁ、あぁっ――あまりにもソレは、地雷の踏みすぎですよ……!」
次の瞬間、ウワァーーーーーッという多数の悲鳴が響き渡った。
突然の侵略に混乱したオーブライト領の者たちが、「助けてくれ領主様っ!」「何がどうなってるんだ!?」「アンタ隣領になにしたんだ!?」と、領主邸に押しかけてきたのだ。
その後を追うように響く怨嗟の声。ハンガリアの餓狼たちが、忍び寄る。
「わ、わ、吾輩は、あのっ、その……!」
「さて、それじゃあブルリック」
悲鳴と怒号に溢れる中、レイテは優雅に微笑んだ。
「落とし前、どうつけるか決めましょうか?」
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