52:やけっぱちのセツナ
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「おらっ、レイテ様にきりきり吐きなさいよぉ~! お寿司もぐもぐ」
レイプ目薄ら笑い侍ボーイ・セツナのアホに襲われた後のこと。
ヴァイスくんに瞬殺された彼を縛り付け、わたしは目の前でお寿司を食べていたわ!
「な、何をしているでござるか……!?」
「おん? アキツ和国の人間にとって、『お寿司』って食べ物は生命維持に欠かせないアイテムなんでしょ? 文献にあったわ」
お米に生魚が載った食べ物ね。
流石に食あたりが怖いから、わたしのは半炙りした鴨のロースト載せてるんだけどね。
コレはこれで普通にうまぁ~い!
「だから拷問よ! 飢えていくアンタの目の前でお寿司食べまくってやるわッ!」
「えぇ……?」
おぉーーーほっほぉ! レイテ様ってばまさに極悪ねッ!
「……よくわからんが、魚以外の寿司など邪道でござる。それに匂いからして、酢も使ってない様子。出来損ないでござるぞ」
「じゃあ食中毒リスクの少ない魚の養殖法や正しい食べ方教えなさいよ。貶したからには本物のお寿司を食べさせなさい」
「フッ、いいだろう。――ではなく!」
縛り付けられたままセツナはもがいた。
咄嗟にヴァイスくん(一緒にお寿司パクパク)が剣を抜こうとするが、それを手で制してあげる。
「なによ」
「レイテ姫よ。〝本当の目的は何か〟と聞いたな? そんなものは知れているッ。荒稼ぎしている貴様を殺し、その財貨を奪い取るためでござる!」
ふーーーーーん。
「嘘ね」
「なっ!?」
悪の女王なめんじゃないわよ。
「お金が欲しいのは本当ね。『大仮装祭』の時にも、賞金目当てに腕相撲大会に参加してたし」
「む」
「あと露店の売り物を見ては物欲しそうな眼をして、でも『駄目だ駄目だ』と首を横に振って諦めてたし」
「ってなぜそれを知ってるでござるかっ!?」
当たり前でしょ。悪の女王として、開いた祭りがつまらないと思われたら舐められちゃうもの。
目につく限りのお客さんの様子はきっちりチェックするに決まってるじゃない。
「でもセツナ。アンタ、わたしを殺したくなんてないでしょ」
「なっ……なぜ」
「アンタには殺意が欠けている」
そう指摘すると、セツナは唇を噛んで押し黙った。
いつの間にか薄ら笑みが剥がれているわね。『大仮装祭』の時は、本当の笑みを浮かべていたのに。
「不意打ちとはいえ、うちの執事を倒したそうね。それだけアンタは強いんでしょうけど、でも、本気の殺意を持って屋敷に来たなら、アイツは倒れても倒されないはずよ」
気持ち悪いけど絶対にわたしを守ってくれるはず。アレはそういう男よ。
「それに、殺したとは言ってないじゃない? わざわざ生かす必要もないのに」
「それは」
「そして、今は真っ昼間よ。殺人強盗したいんだったら、それこそ夜襲を掛ければいいでしょ」
それがコイツはのこのこ真正面からやってきて、しかも挨拶までしてくるんだから。これで本気で殺す気ならアホね。
「結論。アンタ、自暴自棄になってるでしょ」
「っ」
「理由は知らないけどお金は必要。でも、女の子を卑劣に殺すのは嫌。だからこそ真正面から来て――」
わたしはヴァイスくんのほうを見上げた。
腕相撲大会とはいえ、セツナを圧倒した最強の男を。
「彼に、ヴァイスくんに倒されることを望んだ。〝自分をどうか、止めてほしい〟とね」
「ッゥ……!」
セツナは完全に項垂れた。
もうぐうの音も出ないって感じね。
「ヴァイスくん、縄を解いてあげなさい」
「わかった。……セツナよ、事情を話すがいい」
縄を解いていくヴァイスくん。いつでも抜刀できるようにはしてるみたいだけど。
「そもそもなぜ金銭が必要なのだ。『大仮装祭』の時、貴様は〝武者修行のための路銀が必要〟と言ってたが」
「……それは、嘘でござる」
やがてセツナは口を開いた。
もう、最初のへらへらした様子はどこにもない。今にも泣き出しそうな黒髪の少年だ。
「拙者の名はムラマサ・セツナ。和国にある武家の家系……この国で言う騎士の一族でござる」
「それは立派じゃないの」
上位貴族や王族を護るのが仕事ってわけね。偉いじゃない。
「で、それがなんでお金を求めて?」
「祖父が、主君を斬ったからでござる」
なんですって?
「祖父は、寡黙な武芸者だったでござる。口少ないが忠実に主君を守る、まさに侍の鑑であった」
――だが、とセツナは語る。
ある日突然、主君を斬殺せしめて逃亡したと。
「理由は知らぬ。だが駆け付けた他の侍も斬り、最終的には三十三名も殺して逃げ出したのは事実。結果、我がムラマサ一族全員は縛り首に処されることになった」
まぁ、当然ねと頷いてしまう。
それだけやらかしたら一族郎党根切にされても仕方ないかもしれない。
「で、アンタは何で生きてるわけ?」
「幕府から温情が下った。異邦の大国『ストレイン王国』にて、五年以内に海外の通貨『十億ゴールド』を稼ぎせしめてみせれば、一族の命だけは助かると」
「……なるほど」
幕府、こっちでいう王城かな。
そいつらもずいぶん考えたわね。
「ストレイン王国の発展は目覚ましいからね。半面、アキツ和国は島国の小国で、海に囲まれてるせいで輸出業もままならないと聞くわ」
わたしは『ワサビ』と『ショーユ』取り寄せるために大金叩いて来てもらうことあるけどね。
豚鬼肉にさっとつけて、ご飯と一緒に食べると美味しいのよねぇ~アレが!
まぁそれはともかく、
「海外とまともに商売していくには、価値の高い外貨が必要。それでアンタを使い走らせたわけね」
他の家族を人質に取ってるから裏切れない身。
そして海外で野垂れ死んでも、どうせセツナは死罪人の子供だもの。むしろ手間が省けるってわけね。
「なかなかの悪ね。極悪令嬢として感心するわ」
「レイテ姫が悪……?」
「なによ!?」
なんか文句あるわけ!? 目の前でお寿司食うぞッ!
「で、何でいきなり突撃かましてきたわけ。『大仮装祭』の時はまだ余裕ありそうだったじゃない」
「あの時は、まだ。……しかし事情が変わったでござる」
セツナは言った。十億稼ぐ期間が、五年から一年以内になったと。
「は? なんでいきなり……」
「『革命』でござるよ。二か月ほど前に起きた、第二王子の変。アレが本国に届いたでござる」
「それでなんで……って、ああ、そういうことね」
――幕府がこの国の通貨十億ゴールドを求めた理由。
それは、これからも発展していき、通貨の価値が上がり続けると見込んだからだ。
でも、
「強引な政変によって経済がよくなることは稀でござる。しかも革命の背後には、『地獄狼』なる危険な組織の影がある様子。ゆえに」
「幕府は今後、ストレイン王国の通貨価値が落ちていくと見込んだわけね。それでまだ価値があるうちに、一年以内に十億稼げと言ってきたわけね」
なーるほど。そりゃセツナもやけっぱちになるわけだわ。
「……ヴァイスくん、気にしなくていいわよ?」
「いや……」
目に見えて彼はしょげていた。だって要するに、あの日の革命のせいで、セツナは大変なことになっちゃったわけだからね。
弟の異変に気付けなかった第一王子として、やっぱり責任感じちゃうみたい。
「セツナよ……手荒くしてすまなかったな。レイテ嬢を守るためとはいえ、愛刀も、折ってしまってすまない……」
「ヴァ、ヴァイス殿?」
「まぁレイテ嬢に剣を向けた件は三か月ほど忘れないが……」
「なんでござるかおぬしっ!?」
真相を知らないセツナは戸惑ってるみたい。ま、あとあと教えてあげるわ。
「委細承知したわ。それじゃあセツナ」
「うむ。複雑な事情があったとはいえ、拙者は姫君に剣を向けたでござる。どうか、処刑を」
「十億ゴールドあげるわ。アンタわたしに仕えなさい」
「えッッッ!?」
はい一件落着ぅー!
「悩みが解決してよかったわね、せっちゃん!」
「せっちゃん!?」
・【圧倒的】複雑な事情、2秒で解決――!【金の力】
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