51:突然の襲撃者!
領主邸の執務室にて。
「疲れたもおおおおおおお! ヴァイスくん、わたし領主辞めて普通の悪女に戻りますッ!」
「レイテ嬢、それは無理だ」
「うぅ、そうよね、簡単に領主の地位捨てられないわよね……」
「そうじゃなく、キミは悪女じゃないからだ」
「なんでよッッッ!?」
……というわけで、レイテ様は絶賛お疲れモードだわぁ……。
領地経営自体は順調なのよ。もう超儲かってる。
魔学知識を持つドクター・ラインハートと石油加工知識を持つシャキール王子がタッグを組んで、『魔晶石製電化製品』を量産しまくってるわぁ。
「他領からの移住者もグングン増えていくしねぇ。しばらくは技術パクられたくないから、例の『魔晶石製電化製品』――略して魔電製品を、領民限定販売にしたおかげかしら」
「それだけではないだろう。移住者への就業斡旋に家賃支援や生活支援を手厚く行っているのだ。優れた技術がなくとも、領主の心遣いだけで住みたくなるさ」
はっ、心遣いぃ? また勘違いしてるわねぇヴァイスくん。
「わたしが奴隷が欲しいだけよ。甘いエサで釣って、まんまと領民になったところをわたしがいじめる! なんて悪辣な罠なのかしらぁ~~!」
「今日は天気がいいなぁ」
「聞きなさいよッ!?」
のんきに空見てるんじゃないわよヴァイスくん。相変わらず天然野郎なんだから。
「はぁーあ。脳みそふわふわヴァイスくんに比べて、わたしはなんて可哀そうなのかしら。十六歳の身空で、最近は日々書類仕事漬けよ?」
ガンガン増えていく領民票作成にあちこちの店舗が意味わからん勢いで納めまくる事業売上税の帳簿付けに、もう限界よ~~~~!
「その上、時間が少しでも空いたら『魔晶石』集めに森行かされるし……!」
わたし、なんかギフト『女王の鏡眼』の使い過ぎで、発動してなくても生物の弱いところがうっすら見えるようになってきたんですけど!?
それで異能発動の負担減るようになったって言ったら、『じゃあもっと一緒に森を巡れるな』ってヴァイスくんが突然の鬼畜発言しやがってさぁ~~~……!
「ヴァイスくん、わたしのこと嫌い!?」
「む、そう思える発言をしたか? ……よしわかった。謝罪として腹を切ろう」
「ってちょっとぉ!?」
わーっ、ホントに剣抜き始めた! やめてよいきなり死なないでーーー!
「逝くぞレイテ嬢」
「らめぇええーーーーーー!?」
などと、ヴァイスくんにしがみついて必死に止めていた時だ。
突如、「たのもぉーーーッ!」という叫びと共に、扉がドバンッと開けられた。えっ、いきなりなに!?
「って、アンタは……」
入ってきたのは、黒い髪を結い上げた和服の少年だった。
「セツナ、だったかしら。たしか『大仮装祭』の時、ヴァイスくんと腕相撲対決してた人よね?」
「おぉ、流石は優秀と噂のレイテ姫。拙者のことを覚えておいてくださったか」
ふふんっ、まぁね。
「しかも、うっかり性交中に入ってしまっても叱らないその度量。あっぱれでござるな!」
「って性交中じゃないわよッッッ!?」
わたしは急いでヴァイスくんから離れた!
「むむ、違ったでござるか?」
「このバーーカ! 変な勘違いしてるんじゃないわよっ! ヴァ、ヴァイスくんは王子様なのよっ!? それがわたしみたいな辺境の悪女と、ア、アレしたら、血が濁っちゃうでしょ!」
「気にするところはそこなんでござるか。ていうか、え、王子?」
あっ、しまった!?
「お――王子様みたいに思ってる人ってことよ! 決して、王都から匿ってる王位正当後継者ってわけじゃないからね~!?」
「あーなんだそうでござるか。それはよかったでござる。失礼な勘違いにならずに済んだ」
何がよかったのよ!?
「つまりそちらのヴァイス殿のことは、、性交してもいいくらい好いているというわけでは?」
「ちがーーーーーーーう!」
はぁ、はぁ、もう何なのよこのトンチキ侍……。
よく見たらなんか目が濁ってるしさぁ。口はニコニコしてるくせに変なやつ。
「ヴァイスくん、こいつ敵かもしれないわよ。注意しなさい」
「いや、俺は彼を善人だと信じたい。なぜならとても素晴らしい見識を持っているからだ」
「なんでそう思った!?」
ヴァイスくんはなぜかホワホワした顔してるし、はぁーまったくもう。
「で、何しに来たのよレイプ目侍」
「レイプ目侍!?」
礼を尽くしてやる気はないわ。だって、
「アンタ、うちの執事を倒してきたでしょ」
「――」
指摘すると、口元の笑みが消えた。
「……なぜ、そうお思いに?」
「決まってるでしょ。アイツは唯一、わたしみたいな悪女に愛欲ぶつけてくるような物好き野郎だからよ。そんな彼が不審者を近づけるわけがない」
休日にはわたしの残り香おっかけマラソンとかしてる変態だもの。見知らぬ者が屋敷に入れば、必ず気付いて迎撃に向かうはずよ。
「ほう、ずいぶんと信頼してるでござるなぁ」
「負の信頼よ。ともかくアイツが黙したままってことは」
セツナが頷く。そして、
「ああ、ご明察。不意打ちでござるが、この通り」
そう言って懐から何かを放り投げる。
床に落ちたそれは、変態眼鏡執事の眼鏡だった。
「アシュレイ……人間性の三分の一を取られちゃったのね。可哀そうに」
「眼鏡が三分の一とかどんだけ人間性ペラいんでござるか。それよりも」
一瞬だった。気付いた時には、彼の手には細身の剣が持たれていた。
アキツ和国の門外不出武装……切れ味に特化した『刀』という武器だったか。
しかも、その切っ先は既にわたしの喉元寸前だった。マジでどんな速さで抜いたのよ……。
「怯えなくていいのでござるか、レイテ姫? 貴女はもはや終わりでござるが」
ふむ、終わりねぇ。
「それ、言う相手が間違ってるでしょ」
「むっ?」
怯えなくていいのかですッて? 馬鹿ね。表情を変える気にもならないわ。
だって。
「終わってるのは、アナタでしょうが」
瞬間、バリィイイイイイーーーンッという音を立て、彼の刀が粉々に砕けた。
「なっ、拙者の愛刀がッ!?」
そして、
「動くな」
セツナの喉元に、背後から長剣が回される。
ヴァイスくんだ。彼は一瞬を超える一瞬の内に、既に相手を追い詰めていた。
「馬鹿なッ……!? いつの間に我が愛刀を砕き、背後に……!?」
「貴様、瞬きを一度しただろう。その時にだ」
「そんな阿呆なっ!?」
馬鹿で阿呆でも現実なのよっと。
「ヴァイスくんの強さを舐めないことね。彼は天然でふわふわだけど、剣を握れば誰より最強なんだから」
「くっ……」
さて、茶番は終わりかしら。
「セツナ」
わたしは侍に近づいた。
「アンタの本当の目的、教えてくれる?」
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