44:決着ッ、領地自慢対決!
なんかアクガキがピーピー言うもんだから、街を紹介するついでにハンガリア領の技術やらを公開することになった。
シャキールくんが快適に過ごせるよう、公国首都に負けてる点があったらボロクソ言ってやるですって。なまいきねぇ~。
「おいレイテ・ハンガリア」
「なによアクガキ」
「その呼び方やめろ! ……あれこれ紹介してもらおうにも、もうすぐ夕方だぞ?」
えぇそうね。
「だから?」
「はぁ? だからじゃない。暗くなったらどこの店も閉まってしまうだろう。それとも、シャキール様に早足で街を巡らせる気か?」
「ンなわけないでしょ。別に日が翳ろうと大丈夫よ」
だってそろそろ……ほら。
「むッ!? なんだっ、立ち並んでいた棒の先が……光った!?」
「棒じゃなくて『魔照灯』ね」
アクガキくんの見上げる先には、道に立ち並んだ魔照灯たちが花開くように点灯していく光景が。
「あれはなんだっ!? 誰かが火をつけているのか!?」
「違うわよ。魔物から取れる『魔晶石』を活かした開発品でね、電気ってのを発生させることで、薪も油も使うことなく光るのよ」
今はドクターに改良されて、外部の光量が落ちてくると発光するよう調整しているわ。
「おかげで暗くなっても開いている店が多くなったし、昼と夜の『二交代制』で二十四時間動かす職場も生まれたのよ。だから時間は気にしないで頂戴」
「なっ……なんだ、それは……。あんな発明品、ラグタイムの公国首都にもないぞ……!?」
あら、そうなの?
「それは意外ね。ウチってば所詮は辺境領だし、流石に首都には敵わないと思ってたけど」
「う、うるさいっ! あんなピカピカ一つで勝ったと思うなよ!?」
「ピカピカ一つじゃないわよ」
お祭り以降、ドクター・ラインハートは『魔晶石』を活かした試作品を次々と生み出している。
曰く、〝弟が頑張ってるんだ。私もちょっと本気だすヨ〟とのこと。弟って誰かしらね?
「まず一つ目が『洗濯機』ね。魔晶石をセットすると自動で回り出す鉄筒で、そこに洗濯物を入れると労力いらずで綺麗になるの」
「なっ」
「次に『電子レンジ』ね。箱の中に食べ物を入れると、魔晶石から変換した電気エネルギーを照射して、焼かずともアッツアツになるのよ。それと合わせていつでも美味しいものが食べられる『冷凍食品』も開発しているわ」
「ななっ」
「それから『アイロン』に『掃除機』に~」
「もッ、もうわかったわかった! 少なくとも技術力だけは、公国首都よりも……いや首都にも負けてないと認めてやるぅ~~~!」
あらそう? それはよかったわ。
「じゃ、次は食文化を紹介してあげるわ」
小腹も空いたしね~っと
◆ ◇ ◆
「はい、じゃあ軽食にしましょう。この串焼きを食べてみなさい?」
「むむっ」
露店で買い占めた串焼きを突き出す。ほれ公国民ども、さっさと口になさい。
「この匂いは、焼いた豚肉か? いや、それにしてもなんと香しい……臭みというものが一切ないぞ……!?」
「はい匂いレビューはいいから味わう」
「むが!?」
アクガキの口に串焼きを突っ込む。
一瞬抗議のまなざしを向けるも、すぐに彼の表情がとろけた。
わたしから串を奪い取り、大興奮でガツガツと口にする。
「なっ、なんだこれは!? なんなんだこれはっ!? そこらの豚肉よりも柔らかく、なおかつアクがないうえ味わい深いッ! それに腹に溜まるたびにエネルギーがカッと湧いてくるようだ……! おいレイテ、これは一体なんという品種の豚だ!?」
ああ、豚じゃなくて。
「豚鬼のお肉よ。魔物のアイツ」
「ってブフゥウーーーッ!?」
あぁこら、噴くんじゃないわよ。
「げほっ、げほ……! ま、魔物の肉だとぉ!? そんなおぞましいものを食わせたのかっ!?」
「何がおぞましいっていうのよ」
「だ、だって魔物と言えば人食いの存在だ。それをお前は……っ!」
あーはいはい、それなら安心よ。
「我がハンガリア領は完全なる防備体制を整えていてね。付近の魔物たちは一切ヒトを口に出来てないわけ。その証拠にすごく美味しかったでしょう? 人肉を食べた魔物は凶悪かつ肉質も硬く臭く変異していくけど、逆に一切に人を食べてなかったら、こんなに柔らかくて芳醇になるのよ」
栄養となるたんぱく質もギュムッと詰まってるわよ。
「そ、そうなのか……!? だが、流石に気分が悪い……こんなものをシャキール様に食べさせるわけには……」
「いや、いただこう」
「シャキール様ッ!?」
無造作に食べるシャキールくん。するとデフォルトで偉そうなまなざしが、「むッ」という呻きと共に大きく開かれた。
「これは確かに素晴らしく美味よ……! 王宮に卸される最高級品種でも、これほどの味わいはなかなかないぞ。これほどのモノを民草にも食べさせているのか……?」
王子が串焼き屋の屋台前を見る。
そこには看板がかかり、『大人気! トロール串焼き 一本100ゴールド』と書かれていた。
子供のお小遣いでも買える額ね。
「ふむ、私ならもっと高くして税収を上げるが……」
「別にそんなことしなくていいわよ。そもそも、つい最近までは魔物なんて倒しても1ゴールドの価値もなかったのよ?」
魔物肉は酷くマズい。それゆえ倒しても捨てるしかなく、ただ兵士たちに戦死のリスクを負わせるばかりだったが……、
「今じゃぁ利益が上げられるようになった。それだけでもう十分でしょ。あと、美味しくて栄養価の高いものこそ、たくさんの民衆に食べてもらいたいしね」
そのほうがいっぱい働いてくれるようになって、税収も上がるってもんでしょ。
「ほうほう、それは納得しかない意見よな。ああ、完敗だレイテよ。技術も食文化も、統治者としての才覚も、どうやら公国は劣っているらしい」
「そんなシャキール様っ!?」
「アクナディンよ、そなたもさっさと魔物肉を食え。栄養を付けろ。……いつか復讐を遂げるためにも、この地の在り方を見習って、我らはもっと飢えなければならんぞ」
シャキールくんの言葉にアクガキは詰まる。だが腹を括ったように、やがてヤケクソ気味に串を食べ始めた。
他の敗残兵たちもだ。最初は恐る恐るといった具合だが、すぐにガツガツと食べるようになった。
「くそっ、魔物のくせにウメーなチクショウ!?」
「これは確かに力が湧くぞ……っ!」
「シャキール殿下のおっしゃった通りだ。たくさん食って強くなって、王国に目にもの見せてやるっ」
よしよし。魔物食はご満足いただけたようね。
「他にもウシ型の魔物『クレイジーホーン』やシカっぽい魔物『チャージディア』のお肉も食用化しているの。お小遣いあげるからみんな好きに買ってくるといいわ」
「「「ママ……!?」」」
って誰がママよ! アンタらみたいなムキムキ褐色野郎どもなんて産んでないわっ!
「まったく……。あーアクガキなんて言ってたかしら、あとは治安とかも勝負だっけ? なんか捕り物劇でも見せればいいの? つってもわたし悪役キャラ被りが大嫌いだから、領内犯罪は徹底的に取り締まってて滅多に犯罪起きないし~…………って、あら、なんでアクガキってば悔しそうに俯いてるの? なんか涙目になってるわよ? ねぇシャキールくんどうしてかしら?」
「……レイテよ、そろそろ勘弁してやれ、アクナディンも十分わからされただろう」
え、勘弁ってなにがよ?
「普通に領地の紹介してただけだけど?」
「う、うむ、まぁいい。それよりも……我は希望が湧いたぞ」
ん? 希望って何がよシャキールくん?
「正直に言えば不安だった。我の存在が王国に嗅ぎ当てられようものなら、このような辺境地など一夜で消し飛ばされるだろうとな。そのような迷惑をかけないためにも、いずれ出奔することも考えていたが……」
だが、と。シャキールくんは夕方になってなお活気付く領地を見渡し、
「この領地の力さえあれば、対抗できるかもしれんな。あの――恐るべき『五人の獣』たちに」
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