43:おいでませ、ハンガリア領観光!
「異国人とはいえ、王族のシャキールくんの顔を知る人は旅人にいそうだからね。口元をベールで隠しておきなさい」
「ふん、王族たる我に踊り子紛いの装いを所望するか。マニアックな」
「うっさいわねっ、顔隠さないと街歩かさないわよ?」
公国の人たちを治療して着替えさせた後のこと。
このレイテ様直々に、ハンガリア領を案内してあげることにした。
はいみんな、カルガモみたいについてくるっ!
「いいかしらぁ? アンタたちは奴隷商から買い取った、ただの敗戦奴隷って設定で行くからね!? 王子シャキールとその配下たちじゃなくて、『下級兵士シャキール』とその仲間たちよ! それを意識して過ごしなさいっ、特にシャキールくん!」
「うむ、よきにはからえ」
「はからえじゃないわよっ!」
くっそ~、この褐色イケメン野郎。王族としての妙に偉そう感が消えないわね~。
「調子こいてんじゃないわよ。そもそも砂漠の公国って『後宮』ってのがあって、めっちゃ王様がお世継ぎ量産してるんでしょ?」
噂だと第二十七王子までいるとか。
「そんなにいたら、下のほうの王子なんて価値カッスカスじゃないの? シャキールくんそのへんどうなのよ? おーん?」
「む? 我は第一王子なるぞ」
ギャァアアアアアアアアーーーーーーッ!? 一番格が高かったァーーーッ!?
てか、次期公国王陛下だぁ~~~!?
「そっ……それはまぁ偉そうにもなるわよね、うん。じゃあ今から修正するのも無理だわ、ごめんなさい……」
「よい、許す。そなたのことは気に入っておるからな」
クッッッソォオォォォッ、なんか謝らされた上に無駄に度量を見せつけられたわ……!
「それよりもレイテよ、我はこの地に興味深々だ。とく案内するがよい」
「あっはい。――ってレイテ様に指図するな~!」
きーーーっ、コイツいつかわからせてやるのだわぁッ! ちくしょー!
◆ ◇ ◆
「はい、ここがメイン通りよ。食べ物屋さんから服屋店まで、色んなお店が軒を連ねている場所ね」
「ほうッ、これは凄まじい活気だ……!」
まずはシャキールくんズを中心街に連れてきた。
領民どもが一番行き交ってる場所ね。最近はどんどん人口が増えるものだから手狭に感じてきたかもだわ。
まぁ、
「アンタたち、道を空けなさい」
『ハハァッ、レイテ様ァーーーーッ!』
わたしの一声に領民どもがシュバッと脇に退く。
「ふふふ、見たかしらシャキールくん。わたしの恐怖政治によって、完全に奴隷と化した領民たちを!」
「ああ……これは驚いたな……」
でしょう?
「肌でわかるぞ。民草たちより、よくぞこれほどの尊敬を集めているものだ」
「はぁぁあああッ!?」
尊敬~~~? 何言ってんだこの褐色野郎。脳みそまで日焼けしてるわけぇ?
「恐怖政治って言ってるでしょうが。みんなわたしにビビッて言うこと聞いてるのよ」
「ビビるだと? そなたのどこにそのような要素が?」
「悪女みたいな見た目とかッ!」
「妖精のように思えるが?」
この節穴ッ!
「悪女だって言ってるでしょうが~!」
そう訴えるわたしに、「その通り」と思わぬ援護をしてくれる者がいた。ワカメ頭のアクナディンだ。
「アクガキ」
「その呼び方やめろ! ……シャキール様には申し訳ありませんが、僕には到底この女が妖精には見えませんね。さっきだって、僕を脅して飲み物を取りに行かせたんですよ? しかもシャキール様まで人質にとって! まさに悪魔ですよッ!」
と言ってビシッと指を差してくるアクガキ。
お、ぉおおぉぉおおお……っ!
「アクガキッ、あんたセンスあるわ! そうよっ、レイテ様ってば悪魔なのよ! ありがとーっ!」
「わっ!? 手を取ってくるなっ!?」
あらいけない、嬉しくて思わず握手してしまったわ。
「ごめんなさいね。わたしみたいな女に触られて不快だったでしょう? うひひっ」
「や、別に不快じゃ……ってなんでそんなに嬉しそうなんだ! まったく……」
彼は咳払いを一つすると、「とにかくお前を認めない」と睨みつけてきた。
「僕はお前のことが大嫌いだ。それと、いいかぁ? これからこの街はシャキール様の仮住まいになるんだ。もしも公国首都に劣るような技術力や治安に民度を見つけようものなら、ビシバシと指摘してやるからな!?」
「おい、アクナディンよ。流石に辺境領と首都を比べるのはだな……」
「いいえシャキール様っ! 親衛隊として、僕はアナタ様にすこやかに暮らしていただくために全力で目を光らせますからねっ!?」
ふふん、本当に忠実な部下だこと。
ちょっとうるさくて子供のくせに無駄に背は高いトコは腹立つけど、なかなか得難い人材よね。
「いいわよアクガキ。どーせあちこち見せてあげるつもりだったし、せいぜい好きに比べていきなさいな」
「いいだろう。ダメ出ししまくって、泣かせてやるからな?」
「はいはい」
まぁ公国首都とやらのレベルは知らないけど、ウチの領も頑張ってるし、ギリギリ文句言われない程度はあるんじゃないー?
アクガキさん(14)「手、柔らかかったな…」
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