2:奴隷商が来たわよ!!!!
朝食の後のティータイムにて。
「――レイテ・ハンガリアが命じるわ! 使用人どもッ、わたし様に新聞をよこしなさいッ!」
『はいレイテお嬢様ッッッ!』
一声命じると、数十人もの使用人たちがそれぞれ新聞を持ってきた。
い、いらねぇ~。
「ひとつで十分だから帰りなさい……」
『はぁいッッッ!!!』
適当な使用人からひとつもらって全員下がらせる。
なんか庭師まで押しかけてきたんだけど、仕事しなさいよアンタら。
「まったく、どれだけわたしに媚びへつらいたいのかしら。まぁそんなことよりも……」
紅茶を飲みながら、『ストレイン王国新聞』を広げる。
この国で唯一発行が許されている新聞だ。王都から離れたこの『ハンガリア辺境領』にも半月遅れでやってくる。おっそ。
「さてまずは四コマ漫画の『オホちゃん』でも……って、なにこの見出し? え……ええ!?」
“第二王子が革命を起こして、第一王子と国王を殺害”!?
「それで、第二王子が新たな国王になったって……!? えぇぇ……?」
なにこの記事!? な、なんかいきなり衝撃情報が出てきたんですけど~!?
「あーなになに?」
“新政権の発表によると、第一王子と前国王は極悪人であり、裏では私腹を肥やしていた”?
「……それマジなわけぇ?」
国王様やらの悪い噂なんて聞いたことがない。
んー……明らかに革命を正当化するためのゴシップな気がするけど、突っ込んだら終わりね。
「これから荒れそうねぇ。政権争いに巻き込まれるのは勘弁だわ」
このレイテ様は極悪だからね。弱い民衆を虐げるのは大好きだけど、強い権力者とガチ決闘はイヤイヤなのよ。
そんときは領民を守備にして命を守るわ。
「第二王子を支持する貴族がこれ見よがしに、死んだ国王を支持していた貴族層を襲撃して領地簒奪とかありそうねぇ」
まぁその点ハンガリア領は大丈夫だと思うけどね。
ウチはどこの派閥にも属していない上、辺境伯として『未開領域』からやってくる“魔物”どもを抑え込む仕事があるからねー。
土地自体はかなり広いけど、ウチを奪ったら魔物の対処に追われなきゃいけなくなるから、よほど下手なことしなけりゃ攻め込まれないでしょ。
「うーん、民衆どもにはしばらく王都に行かないよう注意勧告しようかしら。向こうは今や荒れてるだろうし、トラブルに巻き込まれて火種作られたら面倒だもの」
はぁ~ホント革命とか面倒なことしてくれたわねぇ第二王子。
そのうち王城からの使者がやって来て“新国王に仕えるか?”って確認取ってきそうね。それまで大人しくしてましょ。死にたくないし。
「……殺された第一王子も災難だったわね。たしかまだ十八歳だって話なのに」
顔は一応知っている。黒髪金眼のどえらい美丈夫だったかしら。
王子なのにずいぶんと武芸に優れているらしく、王都の剣術大会などでよく優勝しているようだ。
そのため、たびたび新聞にトロフィーをもたされた写実絵が載せられるんだけど……。
「顔立ちは整ってるのに、いつも仏頂面なのよねぇ……。未来の為政者としてアレどうなのよ」
その結果、ついた異名が『氷の王子』だそうだ。たぶん皮肉も混ざってると思う。
まぁそんな不愛想男だけど、いきなり革命起こされて弟に殺されるのは流石に可哀想すぎるわよねぇ。
ご冥福をお祈りするわ。と、死んだ王子に流石のわたしも憐憫を覚えていた時だ。
ドアから顔を出した眼鏡執事が「お嬢様」と声をかけてきた。
「なによ。踏んであげるお願いは聞いてあげないわよ?」
「そんな……っていえ、そうではなく。お嬢様にぜひ会いたいと、商人の方がやってきました」
「商人?」
頷く執事。彼は「王都からやって来たそうですが」と言った後、眼鏡の奥の瞳に嫌悪感をにじませた。
「……奴隷商人だそうです。それも傷病者を多数扱うような、悪徳商のようですが」
「へぇ」
ここでわたしの極悪頭脳はグルグル回った。
ちょうど“革命こわいなー”と思っていたところだ。
なにせわたしは極悪女領主様だからね。恨みを抱える民衆たちは多いだろう。へこへこしてる連中だって、お金が欲しいから面従腹背しているだけだ。
だからこそ、このレイテ様に絶対服従するような奴隷たちが欲しいと思っていたのよ……!
「いいわ、例の奴隷商に伝えなさい。売り物全員引き連れて、客間までおいでなさいとね」
【キャラ紹介】
ハンガリア領民たち:レイテの下僕。レイテ様だいしゅき。
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