154 学園執事マスターレイテP!
かくして、数週間後。
あれからも色んな部活を回りながら参考にし続け……ついに!
『――ではこれより、「アリスフィア大文化祭」を解散いたします!』
『ウオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーー!!!』
いよいよ、対決の日がやってきた!
「う~~~ふっふっ~~~! 絶対に勝てるわよーーー!」
続々と校門から入ってくる来場者たち。
様々なお国柄の服装が入り乱れる様を、わたしは校舎から見下ろしながら笑っていた。
今から彼らは全員、わたしたちレイテチームにお金を落としまくるでしょうねぇと!
「――おやおや、ずいぶんと余裕そうですねぇレテイ様」
と、そこで。気に食わないあんちくしょうの声が。
「出たわね、ハロルド~……!」
「どうもですレイテ様」
現れたのは元地味男子・ハロルドのアホだ。
さらにその背後には、無駄に壁を背にして腕を組んだポーズをしている金髪野郎、セラフィムの姿が。
「フッ。レイテ殿には恩義があるが、それは聖王としてのこと。生徒会長としては今日は負けんぞ!」
「上等よ。大文化祭の売上勝負、あんたたちまとめてぶっ飛ばしてやるわぁ!」
勝つ自信は満々だ。
さぁみんな、こいつらに一つ目の出し物を見せてやりましょう!
「このレイテ様の一番手ッ、『無駄に顔だけはいい執事喫茶』を喰らうがいいわぁ~~~!」
指をぺにょんと鳴らす。
すると、執事長・アシュレイ(※ガチ執事)が胸を張って現れ、
「ぐぬぬぬぬぬっ! せ、拙者が異国の下男風情になるとは~……!」
「ぼ、僕の恰好おかしくないですかぁ!?」
続いて、燕尾服を纏ったカザネとジャックくんが恥ずかしげに出てきたのだった!
「ほらっ、しゃんとする。あんたたち中身はアレだけど顔だけはいいんだから」
「「中身アレいうなぁ!」」
おーーーーっほっほ!
今日のわたしは極悪プロデューサー・レイテ様!
売れるためならあんたたちの恥じらいなんて知らないわぁ!
さぁどうかしらハロルド!? 一店舗目でもう勝負は決まっちゃうかもねぇ!
「ほほう、なるほど。ビジュアル勝負でくるとはシンプルながらいい出し物です。しかし喫茶と名が付くからには、飲食物の調理も必要となる。そちらについては?」
「問題ないわ」
今日のために、『マヨネーズ部』や『トマトにギリギリまで水あげないで甘くなるか枯れるかのラインを見極めよう部』、その他農業系の部活から食品提供をいただいた。
自分たちの渡したものがどうなるか気になるところ。彼らは確実に店にきてくれるだろう。
加えて、
「きもいことに無駄に料理上手なアシュレイ監督のもと、スライムたちに料理を教え込んだわぁ!」
「スライムですって!?」
驚いたハロルド先輩が、わたしたちに与えられた開店用の教室の戸を開く。
するとそこには、『スラーッ、スラーッ!』と健気にぴーぴー鳴きながら、触手でフライパンを振るったりするスライムの群れの姿が……!
「これは確実に話題になるでしょう! どうかしらぁハロルド先輩!?」
「ふっ……なるほど。安心しましたよ、レイテ様。いやレイテP!あなたは本気で私を倒しに来たようだ!」
「当たり前でしょ!」
わたしとハロルド。共に瞳に闘志を燃やし、互いに宿敵を睨み合う!
「さぁ、このレイテPの力を見せてやるんだからぁ――!」
◆ ◇ ◆
というわけで始まった売上勝負。
わたしはお店には居つかず、文化祭中の学園に飛び出すことにした。
というのも。スライムのおかげで人手が足りたのもあるんだけど――、
「あッ、聖女レイテ様だ! チョコバナナおごりましょうか!?」
「おおおこれはレイテ様! わたくしめは商国ラルゴの――!」
「このたびは海洋国家の安全にご協力いただき――!」
……やってくる客たちは、比較的富裕層と生徒の親の貴族ばかり!
そうなると、『聖女レイテ』に挨拶しにくるやつがわんさか現れるのだ!
「わーーんっ! あんなやつらがいっぱい押し寄せたらお店の邪魔になっちゃうわよー!」
となれば逃亡するしかないでしょ!
そういうわけで視線の集まる雑踏の中、わたしは人気のない場所を探して駆けていた、そのとき。
「おわっ!?」
誰かの足につまずいて転びかけてしまう!
そうして痛みを覚悟した、そのとき。
「無事か、レイテ嬢」
「あっ……!?」
わたしを力強く受け止めてくれる影が。
同時に、周囲の客たちが恐れおののいたようにスペースを空けてくれる。
「やれやれ。国王として、あまりレイテ嬢にアプローチしないよう広めているのだがな」
「ヴァ、ヴァイスくん!」
「ああ。キミの国王ヴァイスくんだ」
そこにはやはり、わたしの頼れる最強護衛・ヴァイスくんが!
「また会えたな。元気なようでなによりだ」
「ええ、ビーチ以来ね。といってもわりと少し前なんだけど、大丈夫なの? そんなに頻繁に会いに来て」
「問題ない――と自信満々に言えるほどじゃないが、まぁ、大丈夫だ」
ってちょっとちょっと。それ、要するに無理してきたってことぉ?
「国王サマなのにいいわけ~?」
「仕方ないだろう。あまりレイテ嬢を放っておくと、周囲に妙な男が増えるとわかったからな。レイテ嬢に手を出さないか心配だ」
「ちょっ、それって……!」
あーなるほどなるほど……。
気に食わないけど今のわたしは『聖女レイテ』。
王国復興の旗頭的存在だから、万が一があったら心配だもんね。
「ありがとう。ヴァイスくんの考えは分かったわ」
「……絶対にズレている気がするが、まぁいいだろう。それよりも」
ヴァイスくんは恭しく片膝をつくと、片手をわたしに差し出してきた。
「せっかく時間を空けてきたんだ。レイテ嬢、共に文化祭を周ってくれるか?」
って、あらあら。格好つけちゃって。
「もちろんよ。楽しくエスコートしてね、国王陛下?」
わたしは彼の手を取ることにした。
異論なんてあるわけがない。ヴァイスくんが側に居れば、誰にも負ける気がしないからね~!
「うふふ。それにしてもヴァイスくんってば大人びたことしちゃってぇ。でも今の誘い方、よかったわよ。いつか好きな子ができたら絶対やるといいわ!」
「…………よし決めた。近いうちに押し倒そう…………」
「えっ、なんて?」
こうして文化祭のお供に、頼れるヴァイスくんをゲットしたのだった!
あ。あとで執事喫茶でお金落していってね~~!




