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第四部:学園の聖女扁

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151 結成、レイテ&カザネパーティー!(+変態眼鏡とクソ怖い弟子)




 貴族の学び舎・聖アリスフィア学園。

 お堅いイメージを持たれがちだが、れっきとした学校機関の一つとして、庶民の学び舎と同じくいくつかのイベントがあった。

 中でも盛大に行われるのが、『アリスフィア大文化祭』である。

 本来ならば秋に行われる行事……。

 それを前倒して夏に行うなんて、ありえないし誰も乗るはずないと思ったんだけど――、



「文化祭実行委員(※勝手に就任)のハロルドです! 生徒のみなさんッ、レイテ様が来月に学園を出てしまうのは聞きましたね!? 彼女を送り出すために、文化祭を前倒しで開きましょオォオオオオーーーッ!」


『ウオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッッッ!!!』



 ……なぜか、全生徒からの大賛成で決まっちゃうのでした!

 そんなああああああーー!?



◆ ◇ ◆



「んでっ、どーしろってのよハロルド先輩!」


 ……文化祭の開催決定後。

 わたしは先輩を部屋に連れ込み、その後の詳細を訪ねることにした。



「ふん。わたしだってあんたに負けっぱなしで終わりたくはないからね。最後の勝負、乗ってあげるわ」



 けど!



「文化祭でどう戦えってのよ?」


「簡単な話です」



 先輩が指をパチンッと鳴らす(※綺麗に鳴らせてうらやましい!)。

 すると、なにやら波長が合ったのか彼に好意的なアシュレイが、がららーっとホワイトボードを持ってきた。

 そこにはこう書かれていて……、



「名付けて、『文化祭どっちが稼げるかプロデュース対決』ですッッッ!」


「『文化祭どっちが稼げるかプロデュース対決』ッッッ!?」



 名前なっが!!!



「あ、あーっと……。わたしとハロルド先輩が、それぞれお店とか催しごとを企画して、稼げたほうが勝ちってわけ?」


「む、よくわかりましたね。説明しようと思っていたのに」



 そらわかるわ! 企画名まんまなんだもん!



「ルールは簡単です。わたしとレイテ様でそれぞれ『二つ』、文化祭の出し物を考えましょう。そして当日、合計してどちらが稼げたかで決着を付けましょう」


「なるほど……」



 あらゆる国の子供を受け入れるも、逆に大人はどんな勢力だろうと極力阻むようにしているアリスフィア学園。

 が、しかし。文化祭の日だけは別だ。

 その日には平民相手にすら学園の門をおっぴろげ、生徒たちに大々的な商業活動を許している。



「あなたが勝てば、こちらが稼いだ売り上げまで含めて、好きに使ってかまいません。悪女として自由に使うがいいでしょう」


「マンガいっぱい買うわ!」


「……やっぱりあなたに悪女は無理かと」



 なんだとおおお!?



「ただし! 海賊の遺産のときと同様、こちらが勝てば、売り上げは全て寄付させていただきます!」



 ――文化祭の売り上げを全て寄付して学園を去る聖女、美談になりますね~~~と意地悪く笑うハロルド先輩。

 ぐぬぬぬぬぬ。文化祭の日にはいろんな国から人が集まるわけだし、それやったら確実に色んな場所で噂になっちゃう。

 これは負けるわけにはいかないわねぇ……!



「いかがですかレイテ様? 怖いなら無効試合にしてあげますが?」


「舐めんなしっ。いいわよ、乗ってあげるわよ」



 このレイテ・ハンガリアの辞書に、敵前逃亡なんて言葉はな~~い!



「学園最後のあんたとの勝負、悪女の悪知恵で稼ぎまくって圧勝してやる!」


「面白い! 文化祭までの一か月間、しっかりと準備することですねぇ~~!」



 ◆ ◇ ◆





 かくして数日後。放課後の空き教室にて。

 最後の学園生活を送る傍ら、企画を二つ考えなくちゃいけなくなったんだけど――。



「ねぇねぇジャックくんジャックくん! 学園でネコカフェやるなんてどう!? みんな大好きだしこれは勝ち確でしょ」


「うーん……売り上げで競うんですよね? となると回転率の面でダメでは……?」


「か、かいてんりつっ」


「よしんばお客さんがたくさん来ても、それはそれで猫ちゃんたちのストレスになってしまうのでは……?」


「だだだだだダメよダメ! ネコカフェ却下ー!」



 ……現在、なかなか『これだっ』という企画を思い付けずにいた。

 あうー。準備期間考えたら、もう思いついてないとダメなのにぃーーー。



「はぁーあ。人気も回転率も考えつつ、わたしとジャックくんとアシュレイ(いまトイレ中)だけでやれるお店や企画ってないかしら?」


「それなんですがレイテ様、普通にほかの生徒たちに手伝ってもらったらどうですか?」



 はぁ? だめよだめ。



「だってみんな、わたしのこと聖女様扱いしてくるんだもん! わたしは悪女として勝ちたいのォーーーッ!」


「わがままだなぁ!」



 表向き、レクリエーションとして『ハロルド先輩と売上勝負をする』というところまでは学園に伝わっている。

 なのでわたしの手伝いをしたいという生徒はわんさか来たが、それらは全部お断りさせていただいた。

 …………そしたらみんな、『レイテ様は自分の手で、僕たちに感謝の思いを伝えるために店をやりたいんだ!』と変な方向に勘違いされた模様。

 ぶっ殺すぞ!!?!?!?



「くそがぁ~~! わたしは極悪令嬢なのよー! お店して〝尽くす〟側じゃあなく、お店で好き勝手楽しんで〝尽くされる〟側なの! きえぇ~!」


「うーん。じゃあもうレイテ様グッズとか作って売ればいいんじゃないです?」


「売るかぁ恥ずかしい!」




 こうして、二つどころか一つも決まらず、うんうんと唸っていた――そのとき。



「悩んでいるようでござるな、レイテ・ハンガリア」


「むむっ」



 その美声ながらもどこかヒステリック奥様の若い頃を思わせるようなあんまり聞いてて安心しない声はッ、



「カザネ先輩!?」


「……おい貴様、いまなにか変なこと考えてなかったか?」



 がらりと戸を開けて入ってきたのは、ブチキレ姫男子のカザパイだった。



「カザパイ!」


「誰がカザパイだ! まったく、それよりも」



 無駄に美しく腕を組みつつ、なにやら悪戯っぽい笑みを向けてきた。



「貴様、ハロルドと勝負するそうだな。拙者に加勢させろでござる」


「なんですって……?」



 あんだけ嫌ってたわたしに、カザネ先輩が加勢してくれる……?

 そりゃまたどういう風の吹き回しで。



「デレ期……!?」


「誰がデレるかっ!」



 そうではなくッ、と。

 カザネ先輩は本気で嫌そうに表情を歪めてから(残念)、



「……青春に、けじめをつけるためでござる」



 真剣な顔つきで、呟くようにそう言った。



「青春に、けじめ?」


「そうだ。……じきに卒業するのは、貴様だけではない。拙者ら生徒会メンバーとてもう全員が六年生。学園にいれる最期の年であり、遊学期間も終了する」



 ――アリスフィア学園は自由な形態となっている。

 わたしのように一定以上の成績が認められれば数か月で卒業できるし、逆に好成績を収めていても、六年間だけなら学園に留まることができる。

 まぁ貴族は色々あるからね……。

 ジャックくんのように家から疎まれているとか、セラフィム会長のように生家の家督争いが絶えないとかで、最長まで学園に留め置かれている子も多いらしい。



「カザネ先輩も、なんか理由がある感じ?」


「……拙者は本来、妾の子でござった。だが本妻殿にいつまでも子が出来ず、彼女は離縁の憂き目にあってな。それから――たびたび拙者の下に、刺客が届くようになった」


「うっっっわ」



 それって、刺客送ってきてるのは明らかに……!



「当主たる父は元正妻を裁こうとせぬ。刺客との繋がりを調べようともしない。父は、対面のために離縁しただけで、彼女を愛しているのだ。ゆえに拙者を学園に放り、問題の遅延を行っているのだ」


「うっっっわぁあああ~~~……!」



 ばちばちにドロドロ案件じゃないの。

 跡継ぎ問題のごたごた。実は妾の子って立場。そして鬼女となって迫る元本妻に、自分をしっかり守ってくれない父親って――そりゃぁ性格もちょっとひねくれるわ。



「あんたのキレ芸は、自分を強く見せて守るための術だったのね」


「キレ芸言うなッ!」



 そういえばこいつ、いつかのゲームのときに『強くあらねばならない。女より弱くあってはいけない』って喚いていたような。

 それは、



「……怖かったでしょうね。父親が守ってくれない中、発狂した元本妻(オンナ)に狙われ続けるのは」


「っ、黙れ……拙者は強い! この学園で、異能持つ生徒どもを相手に六年間、拙者は風紀を護ってきた! 拙者は強くなったのだ!」



 だからこそッ、と。

 先輩は鋭い眼差しで続ける。



「そんな拙者の青春の六年……一度も本心を覗かせず、欺いてきたハロルドが憎い……!」



 ああ、なるほど。だからこそ。



「わたしの勝利に貢献して、あいつをギャフンと言わせたいわけね?」


「その通りでござるっ。あぁまったく、会長らのような事情があったのならともかく、やつめ、問い詰めてみたら『地味庶務キャラにも飽きたので』だと!? 本当にはらわたが煮えくり返る思いで……!」



 うんうん、わかったわかった。



「あんた、青春の仲間に秘密隠されててショックだったのね」


「ちちちちちがうわーーーーッ!」



 おっ出たわねキレ芸。顔真っ赤っか。

 はたしてその赤は、怒りなのか恥じらいなのか……まぁどちらでもいいわ。



「オッケーよ、カザネ先輩」


「むっ」


「その若々しい理由、気に入ったわ。あんたをレイテ様の仲間にしてあげる」



 一緒にあのヘラヘラ野郎をぶっ飛ばしましょう、と。わたしは同盟の手を差し出した。



「ちっ、なにが若々しい理由だ。拙者はもう十八だぞ!? 貴様のようなガキがなにをっ」


「ガキじゃないもん! わたしだってもうすぐ十七だもん!」


「!? ……お、おぬしも食事に毒を盛られ、それからはトラウマであまり食べられず……!?」



 って違うわぁ! 勝手に変なストーリー作って同情の眼になるな!



「と、に、か、くっ。よろしくねって言ってんのッ。あんたの青春のラストページに、このレイテ様と組めた幸福を添えてあげるわ!」


「……ふっ。相変わらず勝気なやつ。貴様のような女は、本当にはじめてだ」



 気に入らなさそうに鼻を鳴らしつつも、しかし。



「ゆえにこそ。このカザネ・ライキリの相棒にはふさわしいでござるな……!」



 そう言って、彼は握手に応じてくれたのだった。

 よしっ、仲間ゲット!



「あぁほら先輩、ジャックくんとも握手しなさいよ。彼も仲間だから」


「えぇ……こいつは嫌でござる。手に毒塗ってそう……」


「塗りませんよぉおお!?」



 なお、相変わらずジャックくんにはドン引きムードな模様。

 例の仮想大戦ゲームで、奴隷にして売ってきたからねコイツ……。



「あとアシュレイが戻ったらそっちとも握手ね。あいつ、いまトイレ行ってるから」


「誰がするかぁッ!」




 こうしてキレ姫男子先輩が混ざり、わたしの出し物メンバーが賑やかになったときだ。

 不意に、「――フッフッフ」と、無駄に格好つけた笑いが響き……、




「――聞かせてもらったぞ、カザネよ。隠し事をしていたのは俺も同じだろう」


「ぬあっ、おぬしは!?」



 夕闇の教室に輝く、黄金の髪。

 そしてその頭上には、荘厳な冠が乗っていて……!



「――なれば俺とも対戦だ! この新聖王・セラフィムが相手になってやろう!」



 ――実の兄を岩陰に連れ込んで襲ってたトンチキブラコンからなぜか王になった男、セラフィムのアホがそこにいたのだった……!



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